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 6月2-3日 北陸古寺巡礼ウォーク(石川県)

  


苔むした那谷寺の森を散策

 

那 殿 観 音 山(那谷寺奥の院)

ここのところ両親がふたりっきりで山登りに行って、そのことを楽しそうに語るものだからMasaは相当にご機嫌ななめ。クラブの練習や中間テストなど、彼も彼なりに忙しくて僕らと休みが合わないんだからしょうがないんだけど、今週末はそんな彼のご機嫌修復だけのための旅。
大井川から戻った先週日曜から、彼が悩み続けて出した結論は...那谷寺。
な、なに?寺??それって登山ちゃうやん!(笑)ま、Masaらしい選択ではあるけれども、中学三年生男子はあまり行きたがらないよな、たぶん。

でも、彼の希望を100%叶えると約束したからには、お父様は約束を守りましょう!ってことでいつものように行きつけの中華料理屋さんで夕食を食べて(*お店のおねえちゃんは明日が結婚式だそうで、おめでと〜!)8:30に高速に乗り、北陸自動車道を石川県へ。ともちゃんとAzuが爆睡してたのでナビシートに座ったMasaと深〜いオトコの話で盛り上がっているうちにあっという間に加賀IC手前の女形谷PAに到着(ホンマにあっという間でした)。ベッドを展開し窓に網戸を取り付け、我が家のミニマムリビングルームでるるぶを開いて明日の行動計画を練る。もしかしたらこの時間が一番楽しいのかもね。


女形谷PAで明日の野遊び計画を話し合う

女形谷PAの朝

P泊の朝は早い。PAの洗面所で身支度を整え、加賀ICで高速を下りコンビニで買った朝食のパンをかじりながら、まずは荒俣峡にある観音那谷寺奥ノ院(那殿観音山)へ向かう。

朱塗りの那殿橋を渡り林道のような、でもちゃんと舗装された1.5車線の道を進む。道の両側には苔むした石仏が立ち並び、ちょっと荘厳な雰囲気が漂う。500mほど進むと泰澄大師像の右に奥ノ院の石段が見えたのでダッちゃんを道路左側の駐車場に停め、石段を登って人影のない参道を進む。奥ノ院へと至る参道は紀伊半島とは全く違う苔と岩が続く森で、お寺参りというよりどちらかというとトレッキングに近い雰囲気が素晴しい。


那殿観音山(那谷寺奥の院)

「胎内くぐり」に入る

胎内くぐりは生れ変わりを意味する

行場っぽい険しい岩場をゆくMasa

石段を上がり切ると、真言宗・山岳信仰の霊場らしく目の前に “胎内くぐり”の岩のトンネルが現れる。大峯・山上ヶ岳の裏行場と同じく抜ける瞬間に心の中で「おぎゃぁ」と産声を上げ(笑)、右を見るとさらに続く石段の上、岩庇の下にへばりつくように建つ懸け造り形式の本堂が姿を現す。廊下に上がってみると扉が開いているので本堂の中に入ってお参りを済ませ、本堂脇の細い参道を辿ってさらに奥へと進む。


岩窟に飲み込まれるように建てられた本殿

 

今日は朝が早いこともあって人影はないけど、参拝者がかなりあるのか参道はかなり明瞭。ただ参道には行場の跡だと思われる獣道のような枝道が無数に延びていて、興味をそそられる。今日は足元がジャングルモックで岩場を登る装備がないので、ちょっとだけ岩に張り付いて気分だけ味わうだけにとどめ、メインの参道をさらに進む。ほどなく正面にひときわ大きく張り出した岩庇が現れ、その根元に奥ノ院が見える。


大きくオーバーハングした岩の
根元の洞窟に作られた奥の院

上:本殿の廻り廊下に立つ我が家
下:くもろ巌から覗くガールズとツツジ

想像していたよりずっと小さな祠の扉はしっかりと閉じられていて中を覗うことは出来ない(開扉法要は5/26-27のみ)けれど、手を合わせてさらに奥へ。ところがほんの20mで参道は途切れてしまう。どうやら目の前の岩穴の向こうに道がないか確認するため偵察に向かったMasaが戻ってきてこの先は断崖絶壁になっていて危険らしい。どうやらこれが参道のつきあたりのくもろ巖のようだ。岩穴の向こう側に人一人が座れる平らな部分があるので、たぶん “篭もり岩”が訛ったんだろうなぁなどと話しながら参道を折り返し、ダッちゃんにゴール。奥ノ院を後にする。


参道には地図にない謎の小径が多数。
*ただし本格的な行場でトラバースの必要あり

 くもろ巌を外側から抜けるMasa
下:石段を下りてダッちゃんに戻る


荒 俣 渓 谷


駐車場に停めたダッちゃん

荒俣渓谷を撮影するAzuカメラマン

那谷寺奥ノ院を後にして僕らが向かったのはここに来る途中に看板を見つけた荒俣渓谷の遊歩道。新しく付けられた道がショートカットしてしまった旧道が400mほどの遊歩道として整備されているんだけど、奇岩が連なる中、苔むした岩の間を迸るように流れる渓流が印象的。「加能八景」の一つに数えられるとかで紅葉の名所として有名らしいけど、僕らの慣れ親しんだ紀州の緑とはどこか違う新緑もなかなかのもの。ただしダム直下だけに、それなりの水質ってことだけが残念!


荒俣渓谷の遊歩道を少しだけお散歩

 


那 谷 寺


いよいよ那谷寺が開門!

奇岩遊仙境に登ってみる

奥ノ院、荒俣渓谷をのんびり散策した後は那谷寺へ。8:30の開門を待って山門をくぐり一直線に延びる雰囲気の良い石畳の参道を進み、まずは有名な“遊仙境”の岩登りを楽しむ。
遊仙境は自然の岩山に池や樹木を配した庭園で、前田利家の四男・前田利常が彼なりの価値観で極楽浄土を具現化したもの。“酒は美味いしネエチャンはキレイだ♪”的な(?)金ピカの建物があって美しい女性がウヨウヨってなバブリーなイメージの極楽じゃなく、実は理想の浄土ってのは素朴な美しい自然に囲まれた世界にあるんじゃないか?という認識のもとで造園された那谷寺の庭園の一部で、太古の海底噴火の跡が隆起し侵食されて今の形になったそうだ。


岩窟の中に設けられた休憩デッキにて涼む

この「自然智(じねんち)」の宗教観は利常が秀吉の子だという俗説を否定するに足る証拠なんじゃないかとは思うし、僕も出来れば様々な寺院の拝殿に見られるようなバブリー浄土より、こういう浄土で過ごしたいなぁって思うけど、よく考えたら僕らの過ごす紀伊半島の休日って浄土そのものだよなぁってMasaと話したりして(笑)。


奇岩遊仙境全景

朝イチってことで参拝する人も少なく、遊仙境を登ってるのは僕らだけ。ただ写真を見て想像してたような険しさは全くなく、ジャングルモックで必要にして充分。ちょっと拍子抜けだった遊仙境だけど、塔のようにそそり立つ岩あり、深く切れ込んだ岩窟ありで、まるで10年ほど前に行った「養老天命反転地」のような楽しさがある場所だった。


この特徴的な岩山は海底火山の
噴火跡が侵食されて出来たらしい

上:少しだけ岩山が好きなAzu
下:国重文・本殿へ

遊仙境を楽しんだ後は、奥ノ院本堂と瓜二つの本殿へと進み、本殿内の胎内くぐりを体験した後、境内を散策する。様々な見所はあるけれど、何といってもここ那谷寺で一番素晴しいのは苔の森。人の手によって保護されるとこんなに美しく育つのか!というイイ見本の苔と岩の森を散歩して気付くのは、多少植生は違うけどやはりここは紀伊半島、中でも大峯の自然を再現した場所であるということ。


地面は完全に苔に覆われているので空気までがモスグリーン!

こんなことを書いたら不真面目だって叱られちゃうかもしれないけども、修験道とか真言宗の本質...自然の摂理に従って同化して生きることで本来ヒトが動物として持っていたはずの能力を呼び覚ますとかいった宗教的な意味合いはもちろんだけど、現代においても登山だったりクライミングだったり(カヌーだったり...笑)と一見ムダなような、ストイックに自分を虐めるような苦行を楽しむ人が多くいるのと同じく、昔の人々にとってこうした自然の作り出す造形を見たり、岩場を登ったりすることが単純に楽しいことだったんじゃないのか?
要するに、ここは昔の人たちにとって修行の場であると同時に東京ディズニーランドだったりしたのかもしれないなと思うのだ。


随所に岩をくり抜いた美しいトンネル

山上鎮守堂からの眺め

加えて、江戸時代になるとこうした修行の場の麓に付き物のように必ず花街があって、恐怖、渇き、空腹など苦しみの後に食べる料理や飲む酒、そして楽しむ××は普段の何倍もスバラシイものに感じられるわけで...お伊勢参りの終着点・伊勢に世界一の規模を誇る遊廓があったことや、今では鄙びた温泉街になってる大峯の玄関口・洞川温泉がかつて紀伊半島の青少年にとって憧れの聖(性)地だったことなど、今も昔もヒトは楽しいことが好きなのに変わりはないだろうしね(笑)。
ま、そんな昔の人たちやヒッピー文化...端的に言えばドラッグ&SEXに悟りへの道を求めた新大陸のアウトドアズマンたちに比べると、現代の修験者たる僕らニッポンの野遊び人は何万倍も真面目でストイック。あ、こんなところで自画自賛してどないすんねん!なんだけどさ。


とても大切に保護されている美しい苔の森は一見の価値あり

大岩と種のプロペラ


 


白山信仰の雰囲気を味わいつつひと気のない静かな参道を進む

 

平 泉 寺(白山神社)

那谷寺のあとは金沢の現代美術館や能登に向かおうかというアイデアもあったけど、何せ一泊一日なのであまり欲張っちゃイケナイってことで、福井へ移動。数年前にAzuのミズボウソウ発病で行けなかった勝山の白山神社に立ち寄る。九頭竜川を遡って勝山城や越前大仏などの醜い構造物が立ち並ぶエリアを目を背けつつ通過し、白山神社(...ホントは平泉寺)へ。
スバラシイ場所なのに、観光客の姿は疎らなしっとりとした雰囲気の参道を2kmほど歩いて参拝を済ませ、六呂師高原牧場のソフトクリームを食べた後、Masaお待ちかねの温泉タイム(笑)。


苔に覆われた広場には多くの社が点在する

拝殿前にて

まさに秘境の宿・杉山鉱泉

伸びやかな絶景を眺めながら貸切りの湯を楽しむ

資料がほとんどないのに直に電話して日帰り入浴可能なことを確かめ、ダッちゃんがギリギリの山道を杉山鉱泉へと向かう。杉山鉱泉は、予想通りここを秘湯と呼ばずしてどこが秘湯か!ってな山奥の一軒宿。もちろん他に客はなく貸切りのお風呂から絶景を楽しんだのだった。

あとは往路をそのまま帰っても面白くないので、九頭龍ダム湖から中部縦貫道〜東海北陸道へと山越え。スキーシーズンは殺人的に混雑する東海北陸道も驚くほどスムーズで、名古屋市内の渋滞を避けて土岐から伊勢湾岸道に抜けたおかげで夕方明るいうちに帰宅。久々にダッちゃんを洗車する余裕もあるほどだった(笑)。

 

 

古寺巡礼で見た花々
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Photo by aki with RICOH GR DIGITAL & Caplio 500G wide

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 6月6日 雷ゴロゴロ鬼ヶ牙(三重県亀山市)


シダの生い茂る登山道をゆく

子鬼の居ぬ間に...#10

朝早くにMasaを修学旅行の集合場所に配達(笑)してAzuを送りだした後、串本or和具&魚飛を主張するともちゃんを説得してOUTBACKにザックとトレッキングシューズを積んで石水渓へ。Masaの居ない間に...鬼ヶ牙登山なのである。空は晴天だし涼やかな風が心地よく良い感じでスタート。今日は標高210mの登山口から鬼ヶ牙458m〜長坂ノ頭610m〜舟石790m〜臼杵岳697mと石水渓をぐるりと囲むようにそびえる4つのピークを尾根道伝いに周遊する6.2km約4時間の“小学校の遠足”レベルのコースだ。


白砂青松の庭園のような尾根

上:尾根道の取り付き 下:ザレた尾根を進む

お気楽な気持ちでスタートしたものの、しばらくはとんでもない急登に喘ぐ。でもすぐに尾根道に辿り着いて鈴鹿山脈独特の白い御影石のザレ場を通過。眺望もまずまずだしイイよなぁって思った瞬間、西の空に真っ黒な雲が湧き上がり天気予報にはなかった雨が当たり始める。うわっ、ヤバいかも...そんな予感が適中し、いきなり雷鳴が轟く。ゴロゴロじゃなくバリバリ(涙)。周囲の空気がビリビリと震え、何となく髪の毛がよだつような感覚を覚える雷危険レベル10っぽい空気。


第3ピークから第1ピークを望む

不明瞭な登山道

身を隠す場所が全くない見通しの良い尾根道で、気が付けば僕らは2本の“人間避雷針”状態なのだ。

もうこうなると遠慮のない夫婦の欠点...ワタシは海に行きたかったのにアンタがこんなとこに連れてくるからだ!とか、何をヌカしとんねん、オマエが雨女やからアカンねん!とか雷鳴より大声で罵詈雑言が森に響き渡ることになる(涙)。

ま、とにかく夫婦喧嘩をしてる状況にないので、とにかく尾根の登山道を外れて樹林帯に入ってレインウェアを身に付け、大木を避けながらシダの中を逃げまどう僕ら。こんな時人間ってのは先に進むのではなく、もと来た道を引き返す習性があるようで、雨で滑りやすくなった登山道を何度もズッコケながら這う這うの体(ほうほうのてい)で逃げ戻った僕らだった。

GPSや地形図&コンパスはもちろん持参してたので道迷いの可能性は低いけど、低山にもかかわらず何故か今朝ヘッドランプ、ツェルト、非常食2日分までザックに入れたいという気持ちになった僕。


雷がバリバリビシビシで写真撮ってる場合じゃないです

しかも鬼ヶ牙ピストンの入口が不明瞭でGPSではポイントがつかめず、久々にコンパスと地形図で臼杵岳を同定しながら確認が必要だったほどの山...今日このまま周遊してたらもしかしたら何か重大な危険があったのかも?山の神なのか何なのかは判らないけど、とにかく僕らがさらに奥へ進むのを止めてくれたんじゃ...登山口に戻った途端に鳴り止んだ雷鳴や切れた雲があまりにもタイミングが良すぎたので、ついついそんな発想をしてしまう僕らだった。


雷鳴で逃げ帰った登山口にて

ところが不思議なことに登山口に辿り着いた瞬間、雷鳴が鳴り止み、みるみるうちに雲が切れ初夏の陽光が燦々と射し始め、髪が黒い空に吸われるようないや〜な雰囲気はどこへ??しばらくは雨が降っていたのでOUTBACKのテールゲートで雨宿りをしながらアレコレおしゃべりしてるうちに雨も上がったので、OUTBACKのそばで“地べたリアン”で少し遅めのランチタイム。


ふたりきりのテールゲートパーティ

ヒゲ親父ワッフルにご満悦

何だかとっても居心地が良かったので、そのままコーヒーを煎れてワッフルなんかを食べながらアメリカ式の“テールゲートパーティ”に突入した僕らだった。結局、周遊はおろか鬼ヶ牙にも辿り着くことすら叶わなかったけど、一応名もなき488mのピークハントは果たしたし、何より“人間避雷針”にならなくてヨカッタのかな、と。



ともちゃんの希望で海へ(ご近所だけど)

山の神様、ごめんなさい!そんでもって海に行きたかったのに無理に山に連れ出しちゃった、うちのカミサンにもゴメンなさい!(笑)ってことで、そのまま自宅近くの海へ。和具や串本みたくキレイな海じゃないけど、どこまでも続く砂浜ではスキムボードを楽しむギャル(ひと昔前、要するにともちゃんと同年代の...笑)、沖には白い大型ヨットが浮かび、のんびりお話しするには結構良い場所だった。


堤防に座ってお話したり人間観察したり

夕方は広永陶苑のお庭を散策

ま、登山ってのは人生と同じで“What will be, will be.”その時は目標に届かなくても、またその次に挑戦すれば簡単に叶ったりするわけでして。人生万事 Que sera sera(笑)

あ、もしかしたらコレ、最近山登りに連れてってないMasaの祟りかも...

 

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