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 6月13日 鮎解禁直前宮川ダウンリバー(中川大橋〜宮リバーパーク)

  


鏡のように凪いだ淵をゆく

 

子鬼の居ぬ間に...#11

今年もいよいよ宮川の鮎釣りシーズンが間近に迫って来た。(粟生頭首工を境に上流側は宮川上流漁協、下流側が宮川漁協のエリアで、今年の解禁は上流漁協が6/1、宮川漁協は6/15である。以前は両漁協とも6/1だったけど鮎の生育が芳しくない最近はこんな風に時差がある。)
宮川はプロの川漁師はすでに絶滅していて、鮎釣り師も今ではほとんどがサラリーマンだったりする(笑)ので、釣り師がどっと川に出る週末を避けて平日られば解禁後も問題なくダウンリバー可能なんだろうけど、大手を振って下れるのはやはり解禁前なのだ。
ま、解禁までに一度ぐらいは大雨で水位が上がるだろうって期待しつつタイミングをはかってた僕。ところが、結局水位を上げるような雨は降らず(涙)。しびれを切らした僕は、今日水位が低いのを覚悟の上で宮川へと向かおうかな、という次第だ。


今日はCAMPERだけを載せて出発

いよいよ明後日から鮎解禁

ただ、今回はともちゃんが早くから不参加を表明していてソロってことで、密かに早起きして日帰りで解禁が7/1の大井川の千頭〜駿河徳山にでも行こうかとも思ったりもしたけど、目が覚めたらすでに8時過ぎ。しかも朝になって急に奥様が『ワタシも川なら行きたいのぉ〜』宣言...じゃ、宮川にしよっか!ってことでいつもように“社長出勤”で9:30に家を出て中川大橋に10:00に到着。1艇だとこんなにラクなんだ!と感涙に咽びながら出艇準備を進め、バウに4□kgの大荷物を積み込んで10:30ぴったりにDRスタート。


道具を運ぶともちゃん

なぜか股関節のストレッチ(笑)

天気予報に反して時折青空ものぞく絶好のダウンリバー日和。ただし、期待...じゃなく予想通りきわめて低い水位。でもそのぶんダムではなく数多くの支流や涌き水を集めた本流の透明度はまずまず。風速2〜3mの弱い向い風が吹いてるけどタンデムの僕らには全く影響なしで平均時速6〜7km/hで下流を目指す。
今日はお天気の心配もあっていつものようにPEUGEOT Pacific18は積んでいないけど、バスを利用するつもりだし、いざとなれば“大人のカヌー”らしくタクシーの電話番号も携帯に登録して来てるのでもゴールを特に定めない気ままな川旅を楽しめそうだ。


低水位だけどまずまずの透明度の宮川

スタートして間もなく、「膳」の前の瀬でボトムがドガッ!と鳴って座礁...いきなりのライニングダウンだ。でもダムの水が入ってない宮川本来の水温は真夏のように温か。浅瀬を夫婦でカヌーを牽いてバシャバシャ水しぶきを飛ばして歩くのは実はとっても楽しい。
浅瀬をクリアして淵に入ると、両岸の緑を写し込む鏡のような水面が現れ、そんな中を僕らのカヌーが直線の航跡とパドルの起こす小さな渦を後方に置き去りにして静かに進む。まるで絹の布をハサミでツーっと切り裂いているような感覚を覚える気持ち良さ。耳に入るのはパドルの起てる水音だけで、おしゃべりな僕らも会話をPAUSEしてその静けさを楽しんでしまうほどだ。


「膳」の前でいきなりのライニングダウン

カワセミに目を奪われるともちゃん

緩やかなカーブを曲がると再び向い風が強まり、風の起こす周期の短い波が鏡のような水面をゼブラに変える。チャプチャプチャプ...バウがリズミカルな波音で鳴り始めるのを合図に僕らの会話が再開する。何度も書くけど、たとえ22年目の僕らでもテーブルを挟んで相対すると気詰まりになるけど、こうしてカヌーのバウシートとスターンシートに別れて座ると驚くほど会話が弾むものである。
夫婦水入らず...というか夫婦水の上で語り合うのは、赤面してしまうような愛の語らい...なんてことは断じてなくて、やはり子供達のことだ。僕しか知らないMasaの本音、ともちゃんしか知らないAzuの内緒話e.t.cを情報交換するのには絶好の環境だ。何たって聞いてるのはアオサギとカワウとカメさんだけなんだから(笑)。


弱い向い風が美しい波紋を作る

岩壁にお花畑を発見し近づく

時折、雲の切れ間から初夏の太陽が顔を覘かせると、濃いグリーンの水面がエメラルドグリーンに似たミヤガワグリーンへと劇的な変化を遂げる。クリアウォーターを透過した陽光が川底まで届き、川底の褐色の岩が見え見え。
川面に目を奪われて視線を下に移した僕らをどこかで見張っていたかのようなタイミングで視界の隅を青い光の筋が走る。カワセミだ!『ワタシたち、絶対に悪さしないんだから、もう少しゆっくり飛んでくれたらいいのに。』チィ〜!美しい声を響かせながらまるで最高速アタックでもしてるように猛スピードで飛び去るカワセミに語りかけるともちゃん。そんな彼女の思いに呼応するように今度はパドルを伸ばせば届くような至近距離を再びカワセミが横切る。『アハハハ...今のは♀だね。』赤みを帯びたくちばしを視認出来るほどの距離でカワセミを見ることが出来たことに満足していると、バウのともちゃんがカヌーから身を乗り出して川面にパドルをまっ縦に突刺して大きく右岸側へカヌーの向きを変える。
『ほら見て!ツツジがまだ咲いてる。』


イワツツジと名も知らぬ白い花が咲き誇る

彼女がパドルで指し示す方向を見ると、岩壁上部に朱色の花が点在し水際を縁取るように白い花が咲き誇っているのが見える。『キレイねぇ〜。』カヌーイストと川舟漁師にしか見ることが出来ない花...花屋さんや花壇で見る花は見られてナンボ。最初から人の目を意識して咲かされている、いわば芸能人やモデルさんのような花だけど、ここに咲く花は見られることを意識せず、でも初々しく美しいシャイな女学生のような花(古臭い言い回しだな。あ、花期を大幅に過ぎたのにまだ美しく咲き誇っているツツジは女学生というよりも小奇麗な奥様か?...笑)。まるで僕らに見られるために頑張って咲いてくれているようで、ヤケに愛おしい。
『明後日鮎が解禁になったら、ここをカヌーで通る人もいなくなるし、もしかしたらオレたちがこの花を美しいと感じる最後のふたりなのかもね。』
そんな話をしながら僕らは岩壁の小さなお花畑に咲き誇るツツジを飽くことなく眺めるのだった。


CLICK

久々のタンデムは超ラクチン

強まる向い風をモノともせず、ガシガシ豪快に漕ぐともちゃんの後ろ姿に軽い驚きを感じつつ、赤い橋梁が目に眩しい鮠川大橋を通過。
4.5mを超えるボリュームのカヌーをソロで扱える女性はたぶん日本に数少なくて、その中でも最もパワーのないひとりである彼女のパドリングフォームは体格や体力を補うためだろうか、実にダイナミックだ。そのせいでカヌーに体重を預け過ぎて時々沈の華を咲かせて笑わせてくれるわけなんだけど(笑)、後ろで漕いでる僕の姿が見えないのに僕の動きをフネの動きから察知して右へ左へパドルを突き刺して、水面下にある隠れ岩を避けてカヌーを導く。22年が過ぎても日常生活ではいまだに諍いが絶えない僕らだけど、カヌーに乗っている時だけは実に仲良し...カヌーを始めた頃のあのパドルを振り上げてドツき合う寸前の激しい“パドルでバトル”がウソのようである(笑)。


岸辺の生き物を観察しながらちーちょの河原へと接近する

ちーちょの河原を通過すると一羽のトビが僕らのカヌーを追うように上空を旋回し始める。巣が近いのだろうか?旋回の中心が僕らの真上のポイントであることからも判るように、明らかに僕らを意識し僕らの動きを偵察しているような気配だ。それなのに、アッケラカンと『トンビさ〜ん、こっちおいで〜!』と指を突き立てるともちゃん。基本的に彼女の心はほぼ100%の性善説が支配していて、ヒトも動物も“話せば解る”的な呑気というかおバカさんというか...とにかくマジで鳥や魚や動物に言葉が通じると信じているようである。
ヲイヲイ、ホンマに留まったらどうすんだよ!トン“ボ”じゃなくトン“ビ”なんだぜ...(笑)

大きく右に曲がって風が止むと、元々透明度が良好なので水面下のお魚も見え見え(笑)。しかもここ田間上流は川底が白っぽい砂に覆われていることもあって、魚たちはトビやカワセミに発見されやすいちょっと過酷な環境。そんなわけでここはあまり小さな魚の姿はなく、泳いでいるのは真鯉、ニゴイのような大きな魚ばかりだ。僕らの前を白とオレンジの錦鯉や体長50cmを超える真鯉などが悠々と泳ぎまわり、何だかお金持ちのお宅のお庭にカヌーを浮かべてるような気分すらある。


『トンビさ〜ん、こっちよ〜!』指に留まったら
どうするんだよっ!トンボじゃないんだから・・・

上:泳ぐコイも見え見えな透明度CLICK
下:懐かしい河原でランチタイム

漕ぎ始めて1時間ほどで久倶都比売橋上流・田間の河原に到着。カヌーからフロストバッグやSEAL Lineの防水バッグを下ろして今日初めての休憩だ。
ここはちょうど10年ほど前、3歳のMasa(当時はMaakun)と生まれたばかりでまだ首が座って間もないAzuと共に足繁く通った河原で、平らで小粒の玉砂利が敷き詰められた河原にEureka!を張って毎週のようにキャンプを楽しんだ思い出の場所だ。まだダウンリバーに耐えられないAzuだったけど、生後4ヶ月ぐらいからP.F.Dをマットにして(何と僕のP.F.Dに全身が載るほど小さかった!)寝かし付け、昼間はカヌーに乗ったり泳いだりして過ごし(あ、そう言えばMasaは3歳で対岸まで泳ぎ渡ってたから、あの頃から泳ぎは達者だったんだなぁ。)、夜は岩場に打ち上げられた流木で焚き火をして過ごした。
特に何をするわけでもなかったけど、ただ家族でカヌーに乗ったり星空を眺めたりするだけで楽しかったあの頃...そんな思い出話に花を咲かせながらPRIMUSでスープを作り、ランチを楽しむ僕ら。十数年前は4人だったのが今は2人になったというだけで、同じEL ECLIPSE LUNAR号が浮かぶ川べりの同じ場所でおにぎりをかじってる僕ら。変わらない、というかほとんど成長してない自分たちを笑いながらも、変わらずにいられたことに誇りと感謝の気持ちを覚えるのも確かである。
そんな幸せな気分でのんびりしていると、何だか眠くなってくる。ともちゃんが携帯を取り出してブログの更新を始めて会話が止んだので、僕は十数年前と同じようにP.F.Dを枕にゴロンと横になる。爽やかな草の匂いがする風に吹かれつつ目を閉じて岸辺に打ち寄せるチャピチャピチャピという波の音を聴いているうちにすっかり眠ってしまい、ともちゃんに起こされるまでずっと深い眠りに落ちていたようだ。


さりげなく美しい宮川

田間の河原で一時間以上を過ごした僕らは、再びカヌーに乗ってダウンリバーを続ける。10年前に1.5級の瀬があった早瀬を過ぎ、久倶都比売橋の手前の淵に差し掛かった時、僕らのカヌーに驚いて直前を飛び去る10羽ほどの鳩。
『ねぇ、あの鳩って変よ。トサカがあるのよ。』
ん?トサカ?
『あ、いや、くちばしが尖ってるからシギじゃないのか?』
『シギってあんな風に樹に留まるかしら?』
さらに近づいてみると...うわっ、全部ヤマセミじゃん!
なんと、宮川中流域で10羽以上ものヤマセミの群れ(!)に遭遇!!
『そうよ、どうして今日ワタシがどうしても宮川に来たくなったかが判ったわ。』


おおっヤマセミ!CLICK

水面に向かってダイブ!CLICK

夫婦だろうか?CLICK

(↑22mmワイコン付きの500Gwideでこれだけ撮れるんだから極めて至近距離!)僕は2度ほど見たことがあったけど、渓流に行くたび“どうか今日はヤマセミに会わせて下さい。”と願ってたともちゃんは初ヤマセミ。パドルが届くほどの距離で♂のカワセミにも会うことができたし、今日のダウンリバーはきっと一生忘れられないだろう。
(日本野鳥の会会員のH氏によれば、ヤマセミの“群れ”自体が非常に珍しいとのこと。巣立ち直後の幼鳥を抱えた複数のつがいがたまたま集まっていたと考えられるみたいで、宝くじに当たるのと同じぐらいラッキーな出来事なのだとか)


立ち上がって22mmワイド
レンズで撮影したCAMPER

上:今回のコース唯一の瀬(笑)
下:宮リバーにゴール

ランチで1時間(昼寝付)、ヤマセミ観察会で30分ほど淵を行ったり来たりして時間をロスしたけど、それでも14:30に宮リバーパーク到着。あと10km先の度会橋まで下る時間も体力もあったけど、ま、余韻を残すのが大人のカヌー(笑)ってことで、ここでゴール。
いつもはこの区間はGPS読みで9.7〜10.2kmなのに、今日は何と11.2km!ヤマセミを追って淵を3往復ぐらいしたし、岸辺の生き物を観察しながら岸辺スレスレをジグザグ漕いだりしたら、こんなに距離が伸びるのだ。



路線バスに乗ってスタート地点へ

帰りはもちろんケーキセットで打ち上げ(笑)

DR後のクルマの回送は貸切りバスで(笑)。時刻表なんて調べずにバス停に行ったら、何と14時台は2時間に一本なのに10分待ちで15:02のバスに乗れた(ラッキー!)。自転車で川べりを走るのも楽しいけれど、バス停まで歩く時間、バス停で待ってる時間、バスに揺られてる時間...普段はこんな風に時間がゆったり流れることはないので逆に新鮮だったりするのです。(ところでいつ乗っても乗客は自分達だけなのでそれはそれで嬉しいんだけど、三重交通は大丈夫か??)
ダウンリバーがたった11kmだったし、子供たちが帰宅する時刻までかなり時間があったので、伊勢外宮そばのバッドパームスで野遊びウェアのショッピング。patagoniaのハットが欲しかったけど、ともちゃんに『わ、ルンペン!』と酷評されて意気消沈(涙)。何も買わずにそのかわりカンパーニュでメチャうまのケーキセットを楽しんで17:00ちょい前に帰宅したという次第。

 

 

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