7月2日 帆立シーカヤッキング(三重県・熊野灘)
フーフで野遊び...#12
泥縄...「泥棒を捕らえてから縄を綯う」の意味である。じゃぁ、「カヤック行く日にキャリアが届く」は、さしずめ「カヤ・キャリ」だろうか?(笑) ひだださんから、今日水曜日に鯖さんがFeathercraft Klondikeでセーリングテストを敢行するという情報を聞きつけ連絡してみると、鯖さんも『僕もK-Light試乗したいし、是非ご一緒しましょう!』ってことに。ところが、ナチュラムに注文していたTHULE Hull-A-Portが前日になっても届かず、非常にヤキモキ。ま、何とか昨日の深夜に到着し、今朝ぶっつけ本番で朝からセッティングする。おおっ!完璧だぁ〜!OUTBACKの短い標準バーに余裕で2艇のカヤックを積載することが出来る(しかも、素晴らしく積みやすく、ベルト2本でガチガチに固定出来る)。
そんなわけで、8:20、子供たちを学校に送り出してから出発。伊勢道とR42をひたすら南下して熊野灘のポイントを目指す。ここのところ野遊びランチの定番・コンビニおにぎりに食傷気味なので、今日は松阪駅の定番駅弁「あら竹」の“牛肉うま〜いどん丼”を2個買って、10:00過ぎに待ち合わせ場所のビーチに到着する。
すでに鯖さんは一時間前にここに着いて2艇のFeathercraftを組立て済みとのこと。そりゃ、何から何まですみませんですなぁ...ん?2艇??
ビーチに行ってみると、KahunaとKlondikeの2艇が並んでいる。鯖さんが気を利かせてくれて3艇乗り比べが出来るようにしてくれたのだ。まずはともちゃんと僕がKlondikeでタンデム。鯖さんがkahunaで“輸送船”K-Lightを牽引するというスタイルでスタート。凪いだ海を半島に沿って静かに進む。
右手の半島は断崖絶壁。その崖から幾筋もの迫力ある滝が海へと流れ落ちる...はずだったんだけど、残念ながら“迫力ある”状態なのは雨上がりだけで、今日はチョロチョロ〜♪ってな滝(爆笑)。でも、海へ流れ落ちる無数の滝をこうして間近で見られるのはシーカヤックならではの愉しみだ。
半島に沿って滝見を楽しみながら1.5kmほど進むと岬に到達。火力発電所の煙突と尾鷲の街並を遥か彼方に眺めつつ八鬼山を正面に見ながら取り舵を取る。漁船を行き交う湾口を横断し、岬と小島に建つ赤灯台の間の細い水路を抜け、再び湾口を横断。アイランドホッピングならぬ岬ホッピングで僕らは進む。風向は東南東、ほぼ向かい風だけど、ビギナー夫婦が怖々乗っているにも関わらず巨艦Klondikeはびくともしない。その安定感はKahunaの比ではなく、カナディアンをも凌駕するほど(...に思える)。
『これを沈させるのは、なかなかコトだぜ。』 『そうねぇ〜。でも沈したら起こすのも大変ってコトよね。』 ハハハハ....。
間もなく、バウガール...じゃなくバウおばはんの腹ヘッタコールが海原に響き渡ったので、正面に見えるビーチに上陸することにする。GPSを見ると...たった5.5kmしか漕いでないやん!彼女はスーパーカブ並みのタンク容量でダッちゃん並みの大食い...トホホ(涙)
小舟でしか近づけないこじんまりとした弓状の砂利浜は背後に豊かなすり鉢状の森。中央には美しい沢があり、その周辺には木苺が群生しているという素晴らしい浜。早速ニュウモから“牛肉うま〜いどん丼”を取り出して、底の黄色いヒモを引っぱって弁当を温める(加熱出来る仕組みなのだ)。 おお〜っ、美味いぞ〜!ま、ここでなら何を食べても美味しいんだけど、今日は特に美味しい。
食事の後、すぐにフィンを着けて沖へとシュノーケリングに出発する鯖さんを見送りながら昼寝でもしようと、“ちんぼうし”を顔に載せて気持の良い玉砂利にゴロンと横になるけど...暑い!暑すぎる・・・ってことで、すでにマスクを着けて磯でシュノーケリング中のともちゃんを追って海へ入り身体をクールダウンすることに。
う〜む、ちょっと透明度が低すぎ。でも目が慣れてくると、カゴカキダイやソラスズメダイ、ニシキベラなど青や黄色の原色系の魚がウヨウヨ。 ニョロニョロ系のヘンテコな魚を見つけて大騒ぎのともちゃん、心の底から楽しそう。僕もひと抱えあるような石を抱いて海底に留まり、色とりどりのお魚たちとの海中ランデブーを楽しんだ。
一時間ほど海に入って遊んだ僕らは、ビーチを出航。セーリング用のマストとセールをセットしたKlondikeに鯖さん、K-Lightにともちゃん、Kahunaに僕と3艇に分乗して少し波が高くなった往路を辿る。天に向かってそびえるマスト、バウシートでしわくちゃになったセイル...マストをメトロノームのように規則的にローリングさせながら進む“帆立フェザー”はクルーザーヨットのような端正な感じとは違う、アドベンチャーな雰囲気が妙にカッコいい。
先頭をゆくのは、K-Lightで海を漕ぐのが初めてのともちゃん(ヲイヲイ)。“なんちゃって”うねりの中をとても楽しそうに漕ぎ進む。へぇ、結構上手なんだ!少し見直す。時折波の陰に入って姿が見えなくなる程度のうねりが入ってるけど、黄色い声を上げて楽しんでいる感じ。
アナタ、カナヅチだけど怖くないの? 『だってぇ、2mだって2000mだって、足が届かないのは同じでしょ?それにフネと離れ離れにならなければ、すぐに乗り込めるんだし。』 ナルホド、そういう考え方もあるのか(笑)。宮川での“ちん実験”の効果は絶大だな。
赤灯台を廻ったところで、鯖さんの提案で海上でKlondikeとKahunaを乗り換えて、いよいよセーリングを試してみる。恐る恐るマストのラインを引っぱると、セイル(スピンネーカー)がマストのてっぺんまで上がり、追い風を受けバスン!という音を発して大きくはらむ。セイルの下両端から伸びる左右のラインを、凧上げの要領で絞るとセイルが美しい弧を描いてパツパツに張る...と、同時にKlondikeはスルスルと海面を滑り始める。
風向きが変わるたび、左右のラインの絞り具合を変えて、同時にラダーを操作して最も風を受ける方向へとバウを向ける。セーリングと言っても追い風専門のスピンネーカーなので、ラダーとセイルの向きを調整しても風下の左右45°づつ程度(感覚的には)にしか進めないんだけど、パドリングと同等のスピードでスルスルと進む感覚を一度味わってしまうと...これはハマる!
時折急激に風向きが変わると、フネが大きく傾いてヒヤリとさせられるけど、少し慣れるとすかさずラダーで“いなす”ことでパワーを逃がす...何となくドリフトの逆ハンに似た“アテる”という感覚。肘で押さえたパドルもアウトリガーのように使うことが出来て、今日ぐらいの風に限れば、とても簡単に操作出来る。16年前のヨットスクールで味わった感覚がフェードインするように僕の身体の奥底から染み出してくる感じ。本を読むより実際にやってみる方が何倍も解りやすいセーリングというスキル...案ずるより乗るが易し、である。
今朝Klondikeにそびえる高いマストとデカいセールを見た瞬間、セーリングはヤッパ止めとこ!なんてちょっとビビッてしまった僕だけど、こうして風に乗って進んでいると、Feathercraftでセーリング計画がどんどん楽しみになってくる。スピンネーカーでのセーリングですらこんなに楽しいんだから、タッキングを繰り返して風上にも向かえるSabaniセイルでの操船はもっともっと楽しいんだろうな!と思うのだ。
気がつけば、ゴールのビーチまであと少しってポイントまで風に乗ってやってきたことに気付き、慌ててセイルを下ろす。セイルをパドルで突いてバウのコックピットに収め、あとはKlondikeをパドリングでゴールに導く。
『ああっ!』ともちゃんの絶叫で視線を移すと、ともちゃんのほんの数m先を左から右へとトビウオが滑空していく。ちょうど竹トンボのような浮遊感とスピードで海面スレスレをかなりの長時間飛んでいる。おおっ!最高のプレゼントじゃん!
16:00ゴール。 鯖さんがK-Lightに、そしてともちゃんがKahunaに試乗したりしながら片付けを進め、16:40に鯖さんに別れを告げて家路に着く。 『あ〜楽しかったぁ〜!シーカヤックって最高ねっ♪』 『オレもセーリング、楽しかったぁ〜!いつかはKahunaにSabaniセイル付けてみたくなったよ!』 ふぅ、とため息をついた瞬間、『イテテテ...』急に数日前から始まった奥歯の痛みが始まる。 『都合の良い歯ねぇ〜。楽しい間は全然痛くなくて、終わった途端に痛くなるなんて!』
ともちゃんに呆れられながら、僕はOUTBACKを自宅ではなくかかりつけの歯医者に向け走らせるのだった。イテテ...シャレにならん痛さだわ。
*2艇のFeathercraftをセッティングしていただき、最後まで超ビギナーというかズブのシロウト夫婦の騒がしいシーカヤッキングにお付き合いいただいた鯖さん、どうも有難うございました!今日はホントに目からウロコ落ちまくりの一日でした。ただ、今も鯖さんが僕やともちゃんより年下なこと、そしてスマートで長身に見える“のっぽさん”似の鯖さんが、実は身長体重が僕とぴったり同じだってことが信じられないです(笑)。
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