気が付けば1時間半が経過している。空が今にも泣き出しそうになっていることに気付き、OUTBACKを停めた岸辺に向かう。水位は低い、水質もイマイチ...でも、全く風がなく鏡のように凪いだ湖面にパドルを挿し入れてカヌーを操るのは実に楽しい。左手の親指を数度ひねるだけで、また右手の小指にちょんと力を込めるだけで、5m近いカヌーを音もなく自在にコントロールすることが出来る気持ち良さ。この感覚を味わったばかりに20年近くもカヌーが止められずにいるのだ。
カーブを曲がり、鈍感なオシドリの夫妻がカヌーに驚いて盛大な水音を起てて飛び去ると、間もなくOUTBACKが見えてくる。先ほどの鴨たちがお出迎え。グワッ!とひと鳴きして水面に浮かんだままで羽根を数回羽ばたかせるけど、もう敵ではないことが解っているのか、パドルが届きそうな距離まで近づいても逃げる素振りはない。
カヌーをOUTBACKに積み込む。防水バッグを先に積むのを忘れていたことに気付いて苦笑しながらアクロバティックな体勢でリアゲートをくぐるようにパドルを積み、青蓮寺湖を後にする。
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