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10月19-21日 “お父さんだけの”熊野川(北山川〜熊野川44.25km)

 


虹色の陽光を浴びて北山川をゆく

 

1日目 妻の瀬(5級)と仕事の瀬(6級)を越えて

今、僕はOUTBACKのカーゴルームに設えたベッドで横になっている。ダッちゃんに比べると狭い室内だけど、後部座席を倒して生まれるスペースは意外に広くて積み荷を片側に寄せて半分のスペースにTHERM-A-RESTを広げてマミーシュラフに入って横になってみると、174cmの僕がちゃんと足が伸ばせる!僕がVOLVOに乗っていた頃は、カーゴルームで足を伸ばして寝られる国産ステーションワゴンは存在しなかっただけに、このOUTBACKの広さにはちょっとした驚きである。ただ室内高がほんの少し足りなくて(僕の座高が高くて?)カーゴルームで座って本を読んだりコーヒーを飲んだりして寛ぐことができないけれど、横になって眠るには充分すぎるほどのスペースが確保出来ることに感動した。

さて、今僕がいる場所は道の駅・熊野川。マジコさん&アキヒロさんと実に6年ぶりの“お父さんだけの熊野川”キャンプツーリングの待ち合わせ場所である。いつもそうだけど、今回も待ち合わせ場所を未定のまま出発(笑)。中間点の三和大橋なのか?スタートの田戸なのか?すら決めずにバラバラに出発。もちろん前泊なので待ち合わせ時刻の約束もなし(笑)。それなのにR42でマジコさんともアキヒロさんとも偶然に会えたし、途中で会っても特に一緒に走るわけでもなく、何とな〜く集合。

現在、大雨洪水警報が発令され一日中降り続いたかなり強い雨もようやく上がって、窓越しに見上げる空には星が瞬いている。熊野川の岸辺にいるにもかかわらず外は闇に包まれて水質や透明度までは確認できないけど、シュラフの中で携帯で確認したところによれば、水位は50cmアップ。ダム放水中の電光掲示板も光ってないので、明日は最高のダウンリバー日和になりそうだ。

秋晴れ&無風(または追い風)のグッドコンディションになりますように!...僕は川の神様にお願いをして眠りについた。


 

2日目 下瀞・田戸〜田長ダウンリバー(25km)

そんなわけで、今日は『お父さんだけの熊野川』当日。2001年以来だから6年ぶりとなるキャンプツーリングである。

道の駅・熊野川のパーキングで快適な一夜を過ごし、5:15起床。ぐっすりオヤスミ中のマジコさんとアキヒロさんを起こし、まずは3台で中間点の三和大橋へと向かう。ここでアキヒロさんのMad River Explorerをマジコさんのサリーちゃんに積み替えて、ランカスターをそこに残して、深い霧の中をスタート地点の瀞峡・田戸へと走る。


三和大橋でカヌーを積み替えて...

霧に包まれた山道を走り...

スタート予定時刻は特に未定のままそれぞれが準備を進める。『ま、準備が整ったら出ましょう。』ってなアバウトさが嬉しい(笑)。
例によってとんでもなくキツい田戸の地獄の階段でカヌーや一泊二日分の積み荷を川に下ろす。三和大橋で一旦ダウンリバーを中断してクルマの回送を行う予定にしているのでキャンプ道具は中間点の三和大橋に到着してから積み込んでも問題はないんだけど、やっぱり全てのキャンプ道具を満載して川を下るのが、キャンプツーリングの雰囲気を高める“男のこだわり”(笑)。3人ともクルマに荷物を残すことはない。
7:00過ぎに3人がほぼ同時に準備完了。手際が良すぎて待つ人も、遅れて焦る人もなしで、全てをカヌーに載せ、誰もいない静かなジェット船乗り場で記念写真を撮って7:30、いよいよダウンリバーのスタートだ。


クルマを停めたバス停から
見下ろす瀞ホテルと瀞峡

田戸に到着
河原に並んだ3艇のカヌー


ジェット船乗り場で記念撮影

雨上がりの瀞峡は川霧が立ちこめる、まさに幽玄の世界。薄暮の中、暗く墨絵のように無彩色の水面からは白い霧が音もなく湧き上がる。世間と隔絶されたこの山深い川面には僕ら以外誰もいなくて、モノクロ写真のような時間が止まった光景の中、3艇のカヌーは静かに進み、カヌーが起てる波紋が微動だにしない“写真”に動きを与える。すでに日の出の時刻を過ぎているけど、深い霧と僕らの両側にそびえる絶壁に遮られて太陽の光は川面には全く届かない。スバラシイ!そして、誰に何と言われようと、僕たちは今、第一級の環境を漕いでいる。そしてたった3人の登場人物である僕らはとてもカッコイイ!(はず...笑)


暗い川面と深い森から湧き上がる雲、
そして青空のコントラストが美しい

上:カヌーと瀞ホテル
下:霧深い瀞峡に漕ぎ出す

 


陽光を浴びて川霧が湧く水面を進むマジコさん

瀞峡を抜けると、眩しいばかりの日の光が僕らに届く。その瞬間、僕らの周りの全てのものが色彩を取り戻し、中でも昨夜の雨に洗われて輝く森は、まるで新緑のように瑞々しい。平水時よりも50cmほどアップした北山川は水量こそたっぷりで、ほど良いパワーを感じさせてくれるけど、ダムの放水がないおかげで、限りなく澄んで川底の石ころがクッキリと見えるほどだ。



絵のように静かな水面をカヌーの
尖った舳先が切り裂いてゆく

上:まるで墨絵の世界
下:瀞峡を抜けるとあっけらかんと明るい南紀の森



川霧を抜けて斜めから射す陽光がカヌーをスポットライトのように照らす

瀞の郷を過ぎると一気に川幅が広がり、掛け軸に描かれた墨絵のような幽玄の世界は南紀のあっけらかんとした底抜けに明るい雰囲気に変わる。太陽によって暖められた両岸の森からは盛大な湯気がモクモクと湧き上がり、太陽から川へと延びる光の線をクッキリと際立たせる。


鏡のように周囲の森を映す瀞場から
美しいダウンストリームVを見せる瀬へと進入する

上:時速8kmで滔々と流れる北山川
下:河原ごとにある梁を越える


朝の太陽とアキヒロさん

僕らはいつもより速い北山川の流れに乗って飛ぶようなペースで川下りを続ける。お父さんだけの...の場合はダウンリバーに予定表のような計画とかはなしで、休憩ポイントはもちろん、ランチの予定地も未定。『だって、どうなるかわかんないもんねぇ。』
時計の針が8:30を指す。いつもの日曜なら20km下流の志古を始発のジェット船が出航する時刻だ。『始発のジェット船が上ってきたら一回目の休憩にしましょう。』フネの上でそんな取り決めをしてジェット船を待つ僕らだけど、予定の時刻になって瀞大橋を過ぎてもジェット船はやってこない。どうやら朝イチの便はお客がいなかったのか?欠航になって平日ダイヤの9:30発が始発になる模様で、僕らは素晴らしい状態の北山川を独占して堂々と快適な本流を下る。


キラキラと輝く波をゆったりと漕ぎ進む
マジコさんとアキヒロさんのシルエット

上:スタートから2時間半、ジェット船の第一便に遭遇
下:バウを浮かせ笑顔で0.5級の瀬を抜けるマジコさん

アキヒロさんも三角波の頂点を狙って通過

美しい河原で初めての休憩をとる

休憩中に第一便が戻ってくる

銀色のカーペットのような川面に同化する銀銀グラマン


カヌーを波に垂直にしてジェット船を待つ


北山川(右)と十津川(左)が合流するCLICK

始発のジェット船がやってきたのは9:50、それ以降は臨時増便は全くなく一時間に一本づつの運行だ。竹筒で上陸して1時間ほどのんびりお喋りしたりしつつ、『いいですねぇ〜!』『快適ですねぇ〜!』賞賛し続けた北山川は、宮井で十津川と合流して熊野川と名前が変わる。

志古のジェット船発着場を横目に見てしばらくすると、ほとんど漕ぐことなく中間点の三和大橋に到着(13:00)。『さて、何食べよう?』3人ともが積荷をゴソゴソ探してその場でメニューを決めてるし(笑)


志古ジェット船発着場を通過

中間点の三和大橋に到着しランチにする

河原で少し遅めのランチを楽しんだ後、アキヒロさんのランカスターで田戸へサリーちゃんとOUTBACKを取りに戻り、そのまま明日のゴールである新宮・速玉大社前の河原へクルマを回送。サリーちゃんとランカスターをデポしてOUTBACKで三和大橋へ。途中、R42沿いのスーパーで買出しをしているとタイミング良く途中参加のTAKEさんから電話。実はTAKEさんとの待ち合わせ場所、時刻も未定で『ま、熊野川に近づいたら電話くださいね。』といういい加減さ(笑)。が合流。OUTBACKとDEFENDERを列ねて三和大橋へと戻る。


川底にクッキリと映る影とどこまでも続く航跡

 



カヌーに拾った流木を満載してサンセットダウンリバー(笑)

三和大橋→田戸→速玉大社→スーパー→三和大橋...とクルマでの移動距離は100km近くにもなるので、三和大橋を再スタートすることが出来たのは、何と日没後の17:15(苦笑)。家族連れなら迷わず妥協して三和大橋をキャンプ地に変更するところだけど、もともと今日のキャンプサイトは『ま、適当にね。薪のありそうなトコロってことで。』メチャいい加減に決めてただけなんだけど、無計画だからといってどこでもいいってわけではなく、“お父さんだけの...”の場合は、快適なキャンプサイトと焚き火は譲れない(笑)。僕らは人の気配の多い三和大橋を避け月明かりを頼りにダウンリバーを開始する。


クルマの回送を終え三和大橋に戻った頃、西に沈みゆく夕陽が子ノ泊山の岩峰を真っ赤に染める

今日のメンバーは何度もこの区間を下っている熊野川のベテラン揃いなので、目を瞑っていても下れるほど慣れ親しんでいるけれど、念のために白波だけは避けて、生まれて初めて東の空に昇り始めたハーフムーンに向かっての“サンセット”ダウンリバーだ。


東から昇ったハーフムーンと群れを成して旋回するトビ

理想のキャンプサイトを求め再スタートしたのは日没後

かなりの暗さだけど、数分で目が慣れてきて川の状況はもちろん、両岸の河原に点在する流木も見えるほどで、僕らはこんな暗がりの中、フェリーグライドで川を横断してあちこちの河原に立ち寄って薪となる流木を拾い、カヌーに積み込みながら進む。
『ま、きっとどこかにカリカリに乾いた流木が落ちてるでしょ?』そんな風に呑気に構えてたけど、みんなの薪...焚き火へのこだわりは相当なもの。だからといって誰も予め薪を準備してるわけじゃなくて、満天の星空の下での「流木を集めた」焚き火じゃないとダメなのだ(笑)
デッキに山盛りになった薪を川に落とさないよう気を遣いながら、慎重に川を下る。こんなことが出来るのも、たっぷりと水深があり、障害物な少なく緩やかなカーブを描きながら流れる熊野川ならではだ。


夜空に浮かぶ月、鳶、そして川面に浮かぶ3艇のカヌー


河原に立ち寄って拾い集めた流木を
落とさぬよう慎重に暗い川面を漕ぐ

上:R169の水銀灯が灯っている
下:一秒ごとに暗くなる秋の夕暮れ

18:00、空に天の川が見え始めるほどに暗くなって“サンセット”ダウンリバーが“ムーンライト”ダウンリバー、そして“スターライト”ダウンリバー(笑)になってきて多少の危険をともなってきたので“三途リバー”を渡ることになる前にダウンリバーは日没サスペンデッド(笑)。奇岩が点在する人工の光が一切見えない左岸に上陸しキャンプサイトとする。カヌーを岸に寄せ、改めてみんなのカヌーを見ると、日没後のリスタートから拾い始めたのに、キャンプサイトに到着する頃には、どのカヌーにも操船に支障が出るほど山盛りの薪が!アンタたちも好きねぇ〜(笑)


夕景に浮かび上がるカヌーの美しいシルエット

まずは平らで細かな玉砂利が敷き詰められた部分を探し、手探りでそれぞれのテントを設営して寝床を確保する。白一色の河原はハーフムーンの明かりだけでかなり明るく、灯火は必要ないほどなのだ。寝床の準備が終わった後は、徐々に強まる上流からの風を避けて岩陰で鍋を突つく。楽しい話と美味しいビールを楽しみながら鍋を突いているうち、ちょっと多過ぎるんじゃないの?なんて言ってた大量の具材もあっという間に平らげてしまう。


澄んだ星空と引き換えに深々と冷える河原。
アキヒロさんが堪らずレインウェアを着込む

上:テント設営の後、みんなで鍋を突つく
下:焚き火を見つめて静かに佇むマジコさん&アキヒロさん

ジッパーに取り付けた簡易温度計の目盛りはすでに10℃を切り、吹き付けるやや強い風のせいで体感気温は5℃以下と、かなり冷え込んできたので窪地にお酒と肴を持ち寄って焚き火を開始。

日没後に集め始めたにしては結構な量が集まった薪を少しづつ足しつつ、僕ら4人にちょうど良い小さな焚き火を囲んで暖をとりながら、あれこれと“お父さんだけの”会話が弾む。焚き火を見つめながら時々夜空に目を遣ると、雨上がりの澄み切った空に満天の星!熊野川の流れとほぼ同じ方向でくっきりとした天の川、下流側左岸の山からオリオン座が顔を覗かせ、ウルトラマンの故郷・M78星雲がほんとに銀河の姿をして見える。しかもオリオン座流星群極大日の前夜ということで、空を見上げるたびに、オリオン座の左上から“パチンコ玉が転がるような”大きな流れ星がコロコロと流れる。心の中で願い事を3回唱える。『金金金!』でも『女女女!』でもなく...何て唱えたかはナイショ(笑)。


青い月と赤い焚き火

“焚き火を囲んでチビチビ呑みながら静かに話す宴会”がお開きになったのは結局日付けが変わった午前1時。mont-bellのバロウバッグ#3では寒くて眠れないので、ゴアのシュラフカバーを追加し、夕方沸かしたお湯を空のペットボトルに注いでタオルで巻いて作った湯たんぽをシュラフの足下に忍ばせる。

時折、フライシートがジャミングするバタバタという音以外は全くもって静かな夜。流れのある北山川〜熊野川を25km...さほど漕いだわけではないので特に疲れてはいないけど、シュラフの中は家より快適なヌクヌクだからだろうか?テントウォール越しに誰かのイビキが二重奏で聞こえ始め(笑)、僕もそれにつられるようにものの5分で深い眠りに落ちた。


ほど良い大きさの火を囲んで

ソロテントにもぐり込んで...

3日目 田長〜速玉大社(20km)へ
 

 

October.2007 MENU

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