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7月5日 海山で川海シュノーケリング(三重県紀北町)

 
子鬼の居ぬ間に...#13

魚飛渓 テナガエビ漁 


大雨でもこの青さ!(魚飛渓)

少しだけ開けた寝室の窓からガレージの屋根を叩く心地よい雨音が響いている。今日は天気予報通りの梅雨空。野遊びは3度の食事より好きだけど、時には弱気になってのんびりダラダラ過ごしたい気持ちになる日もある。たとえ夕方になって必ず後悔するとしても(笑)...こんな感覚は僕だけなのだろうか?
そんなわけで今日は仕事も休みだし、久々に朝寝坊しよう...そう決めた僕は子供たちが登校していく『行ってきま〜す!』の声に『気をつけてなぁ〜!』と応じ、再び布団に潜り込む。と、そこへともちゃんがやってきて、布団をひっ剥がし、僕の身体をパシパシ叩きながら叫ぶ。

『ほら、早く起きて!雨なのよ、雨!テナガエビちゃんが川底でお散歩してるわよ!』
えっ、もしかしてこの雨の中、泳ぐつもりじゃないでしょうねぇ?
『何言ってるの!雨だから行くのよ!それに今年はまだ泳いでないのよ。もう7月なのに!』

へっ?マジ?確かに今年の我が家は少し“異常気象”で、例年なら川は3月から、海もGWには泳ぎ初めするのが普通なのに、僕ら夫婦は今年まだまともに泳いでいない。我が家の観測史上最も遅い泳ぎ初めだけどさ、何も梅雨前線に向かって泳ぎに行くことないじゃん。

こんな大雨の中泳ぐのはイヤで布団にしがみついてる僕だけど、すでに着替えを済ませて準備万端のともちゃんの決意は相当強く、無理矢理起こされた僕は着替えを済ませるのに5分、寝ぼけ眼でサンルームに行ってシュノーケリングに必要な道具を防水バッグに詰めるのに10分...15分で準備完了し、あれよあれよという間にOUTBACKの運転席に座らされ眠い目をこすりながら9:00に出発。ところがやはり寝起きは注意力散漫。伊勢道のETCゲートに入ったら、何とバーが開かずOUTBACKのAピラーに“バスンッ!”という音とともに激突。あ、ETCカードが期限切れだっ!すぐ後ろに大型トラックが迫っていたので、そのまま通過し次のICで一旦下りて料金を精算し再び伊勢道へ。その後は伊勢道〜紀勢道〜R42を順調に南下する。荷坂峠を越えた紀伊長島辺りから雨が本降りに変わり、目的地の魚飛渓に到着した10:15にはワイパーをHighにしなければ前も見えないほどの豪雨。この雨の中泳ぐとは言わないだろうなぁ...


この雨の中泳ぐの?ノリが悪い夫と...

川に入る前からズブ濡れで満面の笑みな妻

『やった〜!着いたぁ〜!見て見て、貸切よ、誰もいないわっ!待ってろテナガエビちゃん!』
そ、そりゃ、この雨の中泳いでる変態はいないでしょうよ。
『まさか、ホンマに泳ぐんじゃないでしょうね...』
『何?アナタ泳がないの?じゃ、ワタシだけエビちゃんとウナちゃんに挨拶してくるからクルマで待っててね。待ってろウナちゃん!』
ともちゃんの目には激しく水面を打つ大粒の雨は見えていないようだ。ま、ナンボなんでも5mしか泳げないカナヅチ奥様を一人で川に入らせるわけにもいかないので、渋々ながら僕も泳ぐことに決める。あまりの豪雨にお着替えテントが使えないので、OUTBACKの車内でアクロバティックな姿勢でウェットスーツに着替え、川へ。


ザブン!と飛び込んで漁を開始する

漁の合間にピース!

一枚岩の上流側の浅い淵にザブン!と飛び込んで、すぐに漁を開始するともちゃんを尻目に、僕は岩の下に広がる水深2mほどの淵に入る。水面に浮かぶと大粒の雨が水面を叩くゴーッ!という音が一際大きく響く。ところが一旦水面下に入ると、そんな轟音は消え、プチピチパチペチポチ...雨粒が水面を叩く水琴窟の調べにも似た心地良い音が響く。


雨音が水琴窟のような美しい調べを奏でる中、狩猟本能むき出しのともちゃん

僕は淵の一番上流にある流れ込みの下まで泳いで、川底へダイブ。底にある適当な石を片手で抱いて川底の魚達を観察する。いきなり僕の目の前十数cmを横切る尺サイズの鮎。一瞬あり得ないモノを見ちゃったような驚きのリアクション(表情ではなく身体の動きだけど)を見せるけれど、僕が川底でじっと動かないことに安心したのか僕の前で身体を横向きにしてじっと留まっている。『こんな雨の日にアホちゃうのん!』鮎の目はそんな感じ(笑)。『しゃぁないねん、ヨメはんが泳ぐって聞かんのやもん。』内容はともかく、僕と鮎はこんな雰囲気。僕の鼻先にはヨシノボリが川底を這うように近付いてきて、モノ珍しそうにカメラを覗き込む。雨の日は魚たちも鳥に襲われる心配がないからかとてもリラックスしていて、仲良くなるのも早い気がする。


ブホッ!(やった!)でも、これは小さすぎ

間もなくデカいテナガエビをゲット!

息つぎをするために岩を捨てて浮上すると雨の轟音に混じってともちゃんの叫び声が聞こえてくる。
『やったぁ〜!1尾目ゲットォ〜!パパァ〜!早く来てぇ〜!』
僕は淵の川底に張り付いてのんびりと魚たちを眺めるというきわめて哲学的な時間を楽しんでいたかったけど、どうしても写真に収めて欲しいみたいだったので、彼女の元に駆けつけてみると想像以上に大きなテナガエビ。彼女の足下には他にもテナガエビが何尾も雨の川底パレードを楽しんでいるけど、『今日は大物狙いなの!』な彼女は10cm程度のエビには全く見向きもしない。


両手を広げると優に30cmを超えるテナガエビ

今回は今シーズン初のシュノーケリングってことで、いくつかのニューアイテムがデビューなのだ。一つは先日届いたNRSのFelt Sole Kicker Wetshoeというフェルトソールシューズ。以前に比べると水遊びの回数は減ったけれど、それでもカヌーでもシュノーケリングでも僕らの足元は必ずフェルトソールなわけで、これまでのモノがかなり滑りやすくなってきたこともあって今年買い替えたのだ。
非常にシンプルな造りのNRS製だけど、これまでのアングラーハウス製のものよりもフィット感に優れ、軽くて泳ぎやすく、Masa&Azuのmont-bell製よりも脱着が容易で、しかもグリップ性能は抜群!川に入った瞬間からその良さを実感できるスグレモノだ。


Xactiで30m先の変なオバサンを撮影(笑)

一時間半このドザエモン状態が続く

そしてもうひとつのNewアイテムは↑この防水ビデオカメラ・SANYO「Xacti」DMX-CA65。非常に見やすい液晶と大きなボタンで水中での操作性も簡単だし、水深2m川底にくり返し潜って使っても浸水なしの防水性能は抜群だけれど、これを手にしたまま泳ぐのは至難の業。今回は使わない時はウェットパンツの大切な部分に入れるしかなかったんだけど(そのままテナガエビを捕まえたともちゃんのもとに駆け付けたら、何やら勘違いした彼女に『まぁ、ご立派!あ、ヤダ、ヘンタイ!』なんて言われてしまった...涙)今後はアームホルダーみたいなのを工夫しなければ...。(しかも沈むので、“潜水夫”Masaがいない時は何か対策が必要かも)


「帰るぞ!」振り返ると名残惜しそうにまだ淵を覗いてるし...

一時間半もの間休憩もせずに川に浮かび放しだったせいで、ともちゃんのカラータイマーである唇がムラサキクチビル(笑)。魚飛での漁は30cm級テナガエビを5尾捕まえたところで終了。この雨では揚げ物は無理なので(笑)、全てリリースである。
『あ〜死ぬかと思った!』冷や汗をかきながら一目散に岩陰に逃げるテナガエビたちを『また会いましょうねぇ〜!』笑顔で見送るともちゃん。『さぁ、和具に移動するぞ!』そう言って振り返ると、一枚岩の縁に変なポーズで座り込み顔を水中に浸けて生き物観察中(笑)。


もうちょっとだけ、ね、お願い!

水から上がる姿はまさに落武者

『ね、ね、もうちょっとだけ、お願い!ああっ、あんなところにズガニがぁ〜!』
落ち武者のようにヘロヘロになった“完全にオンナを捨ててる”彼女を無理矢理川から引っぱりだし、ウェットスーツ姿のままOUTBACKに乗って和具ノ浜に移動する。『今ここで検問とかに遭ったら、ヤバいかもねぇ。』ベージュの本革シートに水を滴らせながら黒装束&ムラサキクチビルで足首にナイフの中年男女...間違いなく「署までご同行を...」だろうな(笑)


確かに安産型ではあるけれど、さすがにこれほどではない(笑)

 


 
和具ノ浜シュノーケリング


気ままに泳ぐソラスズメダイと戯れるともちゃん

 

魚飛渓から和具ノ浜へはクルマで20分ほど。相変わらずフロントスクリーンを叩き付けるように降る雨は止みそうもない。和具ノ浜は雨の平日ってこともあってパーフェクトに誰もいなくて、駐車料金を払おうと向かったバースハウス(管理棟)のシャッターも下ろされたままだ。奥から出て来られた管理人さんもお昼で店じまいして帰られるそう(笑)で、しきりにハウス内の温水シャワーが使えないことを詫びて下さった。でもこんな大雨の中海に入ろうなんて僕らには温水シャワーなんて不要!(どうせ帰り道に温泉に行くんだし)
そんなことよりも貸切状態なことが嬉しいのだ!


駐車場はOUTBACKが1台っきり

海を眺めながら車中でランチ

一刻も早く海に入りたいともちゃんを窘めてクルマの中でランチ。ずぶ濡れのままフロントシートに並んでiPodで懐かしいサザンオールスターズを聴きながらコンビニおにぎりをパクついていると、何故か笑いが込み上げてくる。
『何やってんだろうねぇ、オレたち。イイ歳してさぁ、大雨の中泳いで大喜びして...。』
『そうよねぇ、夫婦揃ってムラサキクチビルでおにぎりなんて絶対に変よね。』
『考えてもみろよ。オレたちが中3の時、自分達が学校に行ってる間に親父とお袋が夫婦でエビ捕りに行く姿なんて想像出来なかったよな。』
『お父さんやお母さんじゃなくて、中学の時のワタシだってそんなバカな真似はしなかったもん。』
どうやら僕らは中学生の時よりもさらに子供っぽくなってしまったようだ(笑)


誰もいない海に現れた怪しい黒装束の夫婦

ビーチへの階段でセルフタイマーで黒装束の記念写真を済ませて海に入る。
目の前に広がる海はすっかり潮が引いて、潜堤の両端が海面から顔を出している。ともちゃんによれば、今まさに干潮なのだそうだ。いつもなら先に海に行って、そのまま川に移動してウェットの塩(潮)抜きのパターンなのに、昨日は先に川だったので変だなぁと思ったら...干潮の時刻をしっかり下調べしてるし!(彼女はいわゆる“カナヅチ”なので潮位が低くないと楽しめない)


ソラスズメダイの群れに近づくともちゃん。
逃げないどころか近づいてくる

上:大雨の中、海へ!
下:海中は意外に明るい(泳ぐカナヅチ)

ところが今日のともちゃんはP.F.Dなしで足の届かない深い海へどんどん泳いで行く。プールだと5mしか泳げない彼女が何故か深い海を自由自在に泳いでる“ありえない”姿に苦笑しながら潜堤を目指す。潜堤手前の遊泳エリアは主に動きの鈍い魚や小さな魚、例えば色鮮やかな青い宝石・ルリスズメダイや愛嬌のある姿をした飛行船のようなハコフグ、小振りなキュウセンなどが群れている。そんな中を時折怖いぐらいに巨大なボラの群れ(水中ではサメのように大きく見える)が横切り、賑やかな雰囲気だ。


海の中はまさに竜宮城!

潜堤を越えると一気に水深は数十mにもなる。おおっ!潜堤の向こう側斜面は無数の魚が群れ泳ぐまさに竜宮城状態だ!黒装束に身を包んでピースサインでおどける年増の“乙姫”さま(笑)の元に目にも鮮やかな真っ青なソラスズメダイが集まり、乙姫さまもまるで自分の子供をあやすように手を伸ばしてソラちゃんたちと戯れている。


波打ち際を歩いてポイントを移動。
浜辺に残るのは僕ら2人の足跡だけだ。

上:ちゃんと泳げてるやん!
下:ともちゃんの腕に集まるソラスズメダイ

雨のおかげでキューセン、ハコフグ、キタマクラ、ベラなどなど、いつもの顔ぶれが岩陰に隠れることなく堂々と泳いでて、まだ本格的な海水浴シーズン前だからだろうか?ウブなのか僕らの身体を啄みに近づいてくる。ウェット着てなかったらさぞやくすぐったいだろうなぁって感じ。警戒心が強い川の魚に対して、この海の魚たちの人懐っこさといったら...“狩猟本能の権化”なともちゃんですら『こんなにフレンドリーな子たちに銛を向けるなんて、ワタシにも出来ない』と言わしめるこの海...手を伸ばせば簡単に身体に触れさせてくれる魚たちに戦意喪失な僕らである。


岩を抱いて海底に沈み、見上げた空&ソラスズメダイ


今日は狩猟本能を封印して、魚と戯れる

存分に色とりどりの魚と一緒に泳いだ僕らは、次にサザエやアワビがいそうな場所に移動する。もちろん採取して食べるなんてことはせず、そんな貴重な貝を手にして重量感を味わいたいだけなんだけど、今回発見出来たのは残念ながら稚貝ばかりで無理矢理岩から取り外すと壊れてしまいそうなので、見てるだけぇ〜♪を楽しむ。狩猟採取本能は確かにあるけど、別に捕らなくてもいいじゃん!って思わせる穏やかさが雨の海にはある...そんな気がする。


身体が冷えるとこうしてひと休み

道路は覚えないけど魚のいる場所は決して忘れない

再び、ソラスズメダイの群れの場所に戻った僕らは、海底に潜って潜堤の窪みに手を掛けて息の続く限り海中観察を楽しむ。魚は自分の上にいる者にはとても敏感だけど、自分より深い場所には比較的注意を配っていないので、無警戒に僕らの真上を通り過ぎる魚たちは本当に無邪気な顔をしているものだ。
しかも海底から見上げる海面は、落ちては消える雨粒の水玉模様が実に美しく、浦島太郎が爺さんになるまで海底の竜宮城に留まった気持ちが何となく解るような気がしたりもする。


なんと、こんなモノまで!!

命知らずな魚とにらめっこ。思わず手が出そう(笑)

そんなわけで和具ノ浜では思わず3時間も過ごしてしまい、しかも↑こんなレアなものにも出会えてビックリな雨の水曜日だ。川に比べると水温は高いけれど、休憩もせずに夢中で3時間連続で泳ぎ回ってたら、さすがに夫婦揃ってムラサキクチビルなので、今日の水遊びはおしまい。バースハウスの外にある冷水シャワーを浴び、誰も居ない駐車場で大胆にスッポンポン着替えをした僕らは和具ノ浜を後にする。
途中、改装が終わったばかりの古里温泉に入って体温を回復させ、大内山ミルクファームで幻のパンを買い占めて、17:00に帰宅。素晴らしくハードだけど素晴らしく楽しかった一日だった。

*ちなみに魚飛渓&和具ノ浜の獲物は全て観察した後、リリースしました。断じて喰ってないですので...念のため。

 

 

和具ノ浜で見かけた魚たちCLICK

Photo by aki with RICOH Caplio 500G wide

July.2007 MENU

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