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 5月16日 矢頭山登山(三重県津市)

  


歴史ある登山道であることを示す古い道標

子鬼の居ぬ間に...#8

子鬼の居ぬ間に...2007第8弾は矢頭山(やずさん)731m登山。先週の鎌ガ岳が“鈴鹿のマッターホルン”で錫杖ヶ岳が“安濃津の槍ヶ岳”(笑)ならば、さしずめ矢頭山は“一志の戸隠山”(爆笑)。“矢”の“頭”の名の通り(由来は違うらしいけど...)、三重県中部のどこからでもその特徴的な鋸の歯のようにギザギザした山頂付近の稜線が望める山で、低山ながら非常に登山意欲をそそられる山なのである。岩稜の山ってことで、当然ながら役ノ小角によって開かれたという伝承を持つ修験道の行場でもあるわけで、出発前には当然ながら“戸隠のような岩稜”“修験道”“役行者”などのキーワードに鋭く反応を示し『オレも学校休んで行きたい!』というMasaとひと悶着(笑)。何とか彼をなだめて学校に送りだしてからOUTBACKに登山靴やザックを積み込んでスタートなのである。

登山口は樹齢1400年、全高42mの矢頭の大杉がそびえる中宮公園。立派なログハウスが建ち、素晴しく整備の行き届いたキャンプ場施設がある。ただし今日は平日だし、多くの人にとってキャンプは夏休みに楽しむものなので、キャンプ場に人影は全くなく、大杉の真ん前の駐車場も僕らのOUTBACKだけ...どうやら今日の矢頭山は僕ら夫婦の貸切りのようである。


樹齢1400年の矢頭の大杉がそびえる
中宮公園が登山道のスタート

上:登山口のクマ出没注意の看板にビビる
下:10分ほどで流麗な不動滝に至る

駐車場にOUTBACKを停め、中宮公園から数十m歩くと左手から沢が流れ込んでいる。沢の手前が御峯登山道入口で沢の対岸が鏡滝と不動滝を巡る遊歩道となる。僕らは山頂を目指すので手前の登山道へと進む。登山道入口には「矢頭山登山口」と書かれた木製の小さな道標が立ち、その隣には去年9月のクマ騒動の時に建てられたのだろうか?「注意!」と大書きされたクマへの注意を呼び掛ける看板がある。今日はクマに関しては正直ノーマークでマスタードスプレーはおろかクマ避け鈴も持参していない。半泣きの表情でその看板と記念撮影した後、10:30登山開始。
ある〜日、森の〜なっか、クマさ〜んに、でああ〜った♪...ふたりで得意のクマ避けソングを合唱しながら、いきなりの急登を進む。ほんの10分ほどで不動滝の看板があり右手の渓谷への下り道が延びている。“滝マニア”な僕らは当然のように登山道を外れ不動滝を見に行く。


ここのところの少雨で水量は少ないものの
糸を引くように3段に流れ落ちる不動滝

上:不動滝左側の岩壁には2体の仏像彫刻が
下:随所に木橋が架けられ整備が行き届いている

ほんの数分で渓谷に到着。水量が少なくてまるで白い糸を張ったようにも見える不動滝。左側の岩壁には立像と座像2体の仏像がくっきりと彫刻されていて、ここがかつて祈りの場であったことを偲ばせてくれる。

滝を見た後は、急斜面を掘り込んだ道を川沿いに進むと間もなく真新しくて立派な不動休憩小屋を通過。登山道は所々で崩落があるけど、道幅が狭い箇所は丸太を組んだ橋が渡されていて全く危険はない。一旦渓流を渡り、大岩がゴロゴロ転がった、まるで若い白谷雲水峡(屋久島)のような雰囲気の森を進むと、左手に椿小屋という名の東屋が建つ林道に合流する。


空気までもがグリーンに染まって、まるでmont-bellグリーンのテントの中にいるよう

林道を50mほど進むと再び登山道入口の看板があり、この辺から次第に急峻な登りとなる。一旦下って丸太橋を渡るとここからはただひたすらつづら折れの急登。炭焼小屋だろうか?トタン葺きの小さな小屋の方向への分岐の脇に「右 御峯・・」(枯葉に埋もれて下部は読み取れない)の古びた石標が建ち、この道が古くから登られていた山であることを再確認する。

沢筋から離れるに従って登山道は徐々に斜度が高まり、足取りも重くなっていく。尾根へと取り付く斜面のトラバース道はかなりの斜度で足を踏み外せば滑落ぅ〜!だけど谷側にトラロープがあって不安な感じはない。さらに斜度は急になり、つづら折れの登山道が直登に変わる。
『このキツさは、もしかしたら鋸の歯のひとつ目に差し掛かったのかも?』
ザックに取り付けたGPSで確認すると、その予感は正しくいよいよキタァ〜!である。

 

コースの1/3にフィックスロープが
あるような急登と急降下の連続

上:木の根道をひたすら登ってゆく
下:各ピークには丸太のベンチが設えてある

ここからの斜面の角度はかなりのものだけど、鎌ガ岳のように地面がザレていなくて木の根が張り巡らされているので非常に登りやすかったりする。その上、登山道両側の立ち木にはトラロープを巻き付けた「手摺り」が設けてあり、時々そのお世話になりながらぐんぐん登ってゆく。
特徴的な大きな岩を巻くように急斜を登りつめるとあっけなく稜線に出る。狭い稜線にはベンチが設えられているので、ここでザックを下ろしての初めての休憩をとる。若葉の季節だけに木立に阻まれて眺望は今一つだけど、心地よい風が吹き抜けて気持ち良い。ここでひと休みしながらGPSのTOPO-10m地形図で確認するとここから山頂まではあと3回のアップダウンがあるとのことで気合いを入れてリスタート。


大日拝展望所を過ぎると行場らしい岩場が現れる

ベンチからが稜線上を少し下り、再び急な登り...鋸歯のような稜線に沿ってアップダウンのくり返しである。フィックスロープを頼りに目もくらむような崖を上ったり下りたり...こうやって書くといかにも苦行のように思えるけど、実際はとても気持ちの良い森、しかも爽やかな風が吹き抜ける稜線上だけにとても楽しい山行である。


矢頭山=御峯ピークに至る最後の険しい岩場を
太いフィックスロープを頼りによじ登る。

上:上っては下りるをくり返す
下:終始やせ尾根を通るルート

スタートから1時間半で牛ケ嶺の「大日拝展望台」に到着。展望台って名前の割に眺望は良くないので、秋葉大権現の石標を横目に見ながら通過。ま、とにかくここがギザギザの鋸歯のひとつめのピークである。牛ケ嶺からしばらく下ると正面に尖ったピークが印象的な高見山が見え、そこから険しいけど美しい広葉樹の森を急登。不動ケ嶽、風尾ヶ嶽というふたつのピークを踏んで途中の鞍部には50cmほどしか幅がない痩せ尾根もあって少々気を遣うけれど、総じて登山道の整備が行き届いていて、最後の急な岩場をクリアして大岩を回り込むと御峯山頂に到着する。


明るい広場が見えたと思ったら、呆気なく御峯山頂(731m)に到着

山頂は眺望が良い小さな広場になっていて片隅には蔵王権現の祠がある。稜線上の針葉樹に代わって、山頂付近はミツバツツジなどの落葉低木に覆われてライトグリーンの世界!そよそよと吹く風が最高に気持ちが良い。ザックを下ろした僕らは山頂標識と記念撮影(当然ながら写真を撮ってもらう人は誰もいないので、セルフタイマーを使って)を済ませ、広場にあるベンチに座ってのんびり語り合う。


山頂標識前でセルフタイマー記念撮影(笑)

ランチは賞味期限切れの非常食フリーズドライ鶏雑炊

少しお腹も減ってきたのでPRIMUSに鍋を架けてフリーズドライの鳥雑炊のランチ。寒くも暑くもない山頂で雑炊はイマイチで、おにぎりでヨカッタねぇなどと話しながらランチを済ませ、レギュラーコーヒーを煎れてチョコ菓子を食べてTheButonを四つ折りにした枕でゴロンと横になったら...ZZZZZ(本当に眠ってしまった!..笑)。
久々に気持ちの良いお昼寝タイムである。


お菓子を食べて雑談しながら2時間も寛ぐ

仁王峠に向けて下山開始!(14:00)

まるでリビングで過ごしているかのように昼寝をしたりともちゃんとお喋りに夢中になっているうちにで山頂で2時間(笑)。さすがに下山しないとマズいので14:00祠の右に伸びる仁王峠(矢頭峠)経由の下山路を「仁王峠まで1158m」という妙に数字が細かい標識(笑)に従ってスタート。


緑の氾濫!素晴しい森!

山頂からしばらくは人の手が殆ど入っていないと思われる明るい自然林。足元は修験道の行場らしく岩場が続き、足を挫かないよう多少気を遣うけれど、蛍光グリーンの天幕の下を歩いているような雰囲気で、空気までもがグリーン!な感じが気持ち良い。
下山開始からしばらくは数mから数十mのアップダウンが続き、時には馬の背を思わせる天然の太鼓橋があったり、両側がスパッと切れ落ちたような狭いコルがあったりと僕らを飽きさせない道が続くけど、周囲が針葉樹林に変わるあたりからは延々とフィックスロープが続く険しい下りとなる。


馬の背のような狭く険しい稜線上のルート

終始尾根を縫うように進む

ガイドマップに“アップダウンが激しい”って書いてあったけど、激しいというよりも過酷(涙)。さすがの僕らもロープに頼ってしまうほどだ。地蔵嶽からはひたすらの下りで、土留め目的の丸太の階段があって足を滑らせることはないけれど、かなり膝に負担を掛ける感じだ。仁王峠まではほんの40分程度だけど、坂と言うよりも崖を下りるような斜度にはマイッタ!。『こっちから登らなくて良かったわねぇ〜!』呆れ顔で呟くともちゃんに深く大きく頷く僕なのだった。


一直線に続く急だけど整備の行き届いた
木製階段はとても歩きやすい

上:切り立った鞍部が吊り橋のよう
下:これで幾つ目のピークだろうか?

下山し始めて30分ほどで、木立の隙間から覗く舗装路。仁王峠の県道である。
ここはかつてこの一帯を治めていた北畠氏の関所があったらしいけど、今はその面影は全くなく、ただのつまらない舗装路だ。でも、今日は“野生の目を持つ女”ともちゃんと一緒なので、そんなつまらないはずの舗装路歩きでも道路脇に可憐な野花を次々と発見出来て、楽しいお散歩。時々立ち止まっては写真を撮影しつつ、コースタイム10分のところを40分も掛けて中宮公園に戻ったのだった。


延々と続くので膝の悪い人は止めておいた方がよさそう(笑)

中宮公園に戻った僕らはOUTBACKにザックを下ろして、大杉のそばの鳥居をくぐって奥ノ宮へ参拝。かつては国司・北畠氏や紀州徳川氏からも手厚い保護を受けた格式ある神社だったらしいけど、今は小さな社がひっそりと建つのみ。参道にそびえる巨木だけが、その名残りをとどめているという感じである。


素直に伸びた大杉よりも逞しい母の姿をした
こちらの方が存在感というか“何か”を感じられる

上:仁王峠からは舗装路を10分ほどで中宮公園へ
下: 巨木が立ち並ぶ中宮奥社に参拝する

奥社ヘの参拝を済ませた僕らは公園の渓流に入って少しだけ水に触れた後、OUTBACKで自宅を目指す。

途中、波瀬川に架かる小さな橋の上でともちゃんが色鮮やかなオオルリを見たこと、そして牛ケ嶺手前の南斜面で登山道から十数mの場所を枯れ枝を踏み締めるピシパシポキパキという音をたてて“蹄ではない大きな足の裏があるかなり身体の大きな動物”が歩いていたことを最後に付け加えておきたい。
えっ?その時僕らはどうしたかって?僕は完全に凍り付き、ともちゃんは...パンパンパパパン♪といきなりフラメンコの手拍子を始めた(笑)。
『そりゃワタシだって恐かったわよ。地面の枯れ枝が折れるぐらいだから人間より大きい生き物だなぁって直感したもの。でももしかして山菜採りのオジサンだったりしたら、悲鳴を上げたり森のクマさん♪を歌ったら恥ずかしいし...もうパンパンパパパンしかないわけよ、ね!』
ワハハハ...今度はクマ除け鈴を絶対に持って行こ。

 


矢頭山(731m)

 

 
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矢頭山で見かけた花
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Photo by aki with

 

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