4月11日 2007初漕ぎ(三重県・宮川)
Miyagawa Beigeの河原、Miyagawa Greenの川面
子供たちを中学校に送り出してからダウンリバーの準備を開始し、OUTBACKのカーゴルームにPEUGEOT
Pacific18を二台、ルーフにMagic-o-carrierVer.3をセットしてCAMPERとPATHFINDERの2艇を積んで宮川へ向かう。コンビニのおにぎりコーナーが売り切れだったので、ランチを中川大橋下流・鰻の「膳」で食べることにして、急遽スタート地点を中川大橋から田口大橋に変更。たった一杯の鰻丼のためにスタート地点まで変えてしまう、まさにこれが“大人のカヌー”なのである(笑)。 田口大橋でカヌーと積荷をOUTBACKから下ろし、バウシートのすぐ後ろにスプラッシュガードに包んだPacificを固定、センターヨークにGPSをセットして10:30スタート。赤いPATHのともちゃんが先に、僕がそんな彼女を後ろから見守りながら宮川の凪いだ水面をゆったりと流れていく。今日の宮川はたぶん僕のカヌーライフで最低水位。ダムからの放水がないだけに周辺の湧き水と美しい支流を集めた澄んだ水のおかげで透明度はまずまずだ。 緩やかな向かい風を受けて両岸の山桜の枝がサワサワと揺れ、散り残った花びらがはらはらと舞い落ちる。まるで蛍光色が混じったようなグリーンに輝く水面に落ちた花びら、僕らのカヌーがそんな花びらよりも少しだけ速い速度で追い越して進む。水面に挿したパドルに力を込めるたび、花びらがパドルの起こした小さな渦に巻き込まれてクルクルと回る...春、まさに春爛漫のカヌーイング。僕らは声の届く距離を保ちつつ、時折短い会話を交わしながら、花びらとともに時速4km、歩くのとほぼ同じスピードで宮川を下る。リバーウォーカー...時速8km程度で進むタンデムのカヌーイングがリバーランナーならば、ソロの僕らはリバーウォーカーだな...そんな風に思う。 間もなく正面に瀬が見えてくる。 カヌーのスターンに取り付けた赤いフローティングのペインターロープを手繰りながら、水深のある場所を選んでフネを流す。『アハハハ...これじゃ川下りじゃなく川歩きね。』ともちゃんも呆れた様子でカヌーをライニングダウンさせている。その時、浅瀬の下流から僕らに驚いたコイの一群が背ビレを水面に出して猛スピードで泳ぎ上がってくる。10尾、20尾、30尾、たくさん(笑)...数え切れないほどたくさんの鯉。「鯉のぼりにはちょっと早いぜ。」眼を三角にして必死で泳ぐコイたちに声を掛ける僕だ。 浅瀬を越えると目に見えるほど水質がアップする。浅瀬の後の深く凪いだ淵に差し掛かると春の優しい陽光を浴びて川底に落ちるカヌーの影が見事に美しい。 間もなく鯨岩を通過。いつも向かい風が強まる宮川最大の屈曲部分だけど、ともちゃんは涼しい顔で漕いでいる。カヌーイングは腕力じゃないんだな...華奢な彼女が向かい風の中、積荷満載の4m50cmにも及ぶ長いカヌーをシレっと、しかも何時間も休まずに漕いでいるのを見ているとつくづくそう思う。 中川大橋の上流300m、ここは宮川中流部で一番の難所。旧中川大橋の橋脚の残骸がそのまま水中に残されていて、水中に転がったテトラポットの間、ほんの2mをジグザグに進む必要がある。 最低水位と弱い向い風のせいでさほどペースは上がらず、一度も休憩しなかったにもかかわらず、約2時間掛かって「膳」の河原に到着。フネを河原に上げ、ウェーディングシューズとウエットソックスを脱いでデッキにはさんだTEVAサンダルに履き替える。 平日で空いている「膳」のお座敷に上がった僕らは迷わずに『“月”をふたつ下さい。』...“月”つまり上丼を注文するのだ。家族4人だとこんな贅沢は出来ないけど、今日はなんたって“子鬼の居ぬ間に...”。少々高くても×2なら許せちゃうのです。 広い窓から宮川グリーンの川面を眺めつつ相変わらず美味しい鰻丼を楽しんだ後は、アフターの薫り高いコーヒーまで楽しむ。居心地の良さもあいまって僕らは夢中で語り合う。ふたりの愛についてラブラブモードな会話...だといいんだけど、“子鬼の居ぬ間に...”だというのに話の中心はやはり子供たちのこと。子供たちは不思議なことにパパにしか話さない内容、ママに聞いて欲しい内容とそれぞれ区別しているようで、そんなそれぞれが知り得た情報を報告し合い、親として対応がチグハグにならないようにする貴重な時間だ。 僕らの後から入ってきたお客さんが次々と食事を終えて店を出て行く中、気が付けばすでに午後2時。ここでゴールにする?なんて冗談を言いながら、濡れた冷たいシューズに履き替えて午後の部スタート。いきなりのライニングダウンに面食らうけど、自転車を積んでいることもあって、ゴール地点を特に定めているわけではないので、急ぐこともなくのんびりと淡々と進む僕らだ。
波間に揺れる桜の花びら、上空を旋回するトビ、赤いカヌー 凪いで鏡のように両岸の景色を映す水面をともちゃんの赤いカヌーの航跡が揺らす様子は、まるで絹の布をハサミで断ち切っているようでとても美しくカッコいい。いいなぁ、素敵だなぁ...中川大橋から宮リバーパークまでは、ともちゃんでも50回以上、僕は100回は下っているお馴染みの区間なのに惚れ惚れと見入ってしまう僕だ。もちろん素晴らしいのは何も景色だけではなく、宮川の濃厚で優しい自然も大きな魅力のひとつ。
宮リバーパークで桜吹雪を鑑賞し、カヌーイストは父と母に戻る
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