FLAME LAYOUT

 

 

 

 

 
 

 

 

 

 

 4月11日 2007初漕ぎ(三重県・宮川)

 


Miyagawa Beigeの河原、Miyagawa Greenの川面

子鬼の居ぬ間に...#6

カヌーの醍醐味はソロにあると思う。そしてカヌーがソロならキャンピングもソロ...家族という4人パーティは組むけれど、それぞれが自分のフネにソロ用の装備を積み込んで、自分のことは自分でするキャンプスタイル...これこそが長年、僕が目指しているカヌーイングの最終進化型なのである。なぜこんなことを考えるようになったかというと、我が家も子供たちの成長にともなって、みんながそれなりの実力を備えてきた代わりに、家族4人がそれぞれの世界を持ち始めたこともあって、揃ってお出かけを楽しむことがいよいよ難しくなってきたから。


晴天の朝、準備完了!

実際、僕のカヌーの先輩の多くは子供さんの成長、特に中学入学を境に家族で出掛ける機会が無くなって、お父さん自身までがカヌーから離れてしまった例も多い。
残念なことだけど、お子さんが中学生になった途端にホームページの更新が止まる例は実に多いのだ。家族の成長という発展的な変化がそんな結果をもたらすのは、ある意味素晴しいことなのかもしれないけど、カヌーという遊びが「一生もの」なだけに、残念な気持ちを覚えるもの確かだ。誰かに依存したカヌーライフを送っているお宅は論外だし、そもそもカヌーという“手間の掛かる”言葉を変えれば“面倒な”遊びにそんなタイプは似合わない。そのようなタイプの人のカヌーライフが短く終わってしまうのは当然のことだけれど、家族それぞれがソロの実力を備えていれば、父親と息子とか夫婦でとかといった最小単位の“家族”で楽しめるんじゃないか?

カヌーを楽しいと思える間は川に出る回数が減ることはあっても皆無になっちゃうことはないんじゃないか?そんな風に思うのである。もちろんツーリングでは行動を共にするし、食事はみんなで楽しむ。でも焚き火を囲んでの語り合いが終われば、家族といえどもそれぞれが自分のソロテントに戻って眠る...依存ではなく共有の関係。

社会生活という複雑な世界で子供たちが独り立ちするのはまだまだ先の話だけれど、野遊びの世界ではもう充分にソロを楽しめる実力を備えている我が家の子供たちなので、Azuが中学生になったのを機に今年からそろそろこのスタイルに移行していこうと考えた。

その初回...予定では今年の初漕ぎは4/3-5、去秋にMasaとふたりで行った大井川・鵜山七曲にともちゃんとAzuを連れて行って、家財道具一切合切をカヌーに積み込んで、ソロ志向の強いキャンプツーリング...のつもりだったんだけど、家族全員がインフルエンザでダウンし、大井川でのキャンプツーリングはキャンセルになってしまった。その後、週末は全く休めず、結局今日が2007カヌー初漕ぎ。“子鬼の居ぬ間に...”なので、当然ながら宮川...結局、思いっきり例年通りの初漕ぎになってしまったというわけだ(涙)。


田口大橋下で出艇準備


子供たちを中学校に送り出してからダウンリバーの準備を開始し、OUTBACKのカーゴルームにPEUGEOT Pacific18を二台、ルーフにMagic-o-carrierVer.3をセットしてCAMPERとPATHFINDERの2艇を積んで宮川へ向かう。コンビニのおにぎりコーナーが売り切れだったので、ランチを中川大橋下流・鰻の「膳」で食べることにして、急遽スタート地点を中川大橋から田口大橋に変更。たった一杯の鰻丼のためにスタート地点まで変えてしまう、まさにこれが“大人のカヌー”なのである(笑)。


凪いだ川面に漕ぎ出す2艇のOld Town Canoe

太陽の周りに虹色の光輪が

田口大橋でカヌーと積荷をOUTBACKから下ろし、バウシートのすぐ後ろにスプラッシュガードに包んだPacificを固定、センターヨークにGPSをセットして10:30スタート。赤いPATHのともちゃんが先に、僕がそんな彼女を後ろから見守りながら宮川の凪いだ水面をゆったりと流れていく。今日の宮川はたぶん僕のカヌーライフで最低水位。ダムからの放水がないだけに周辺の湧き水と美しい支流を集めた澄んだ水のおかげで透明度はまずまずだ。


グロス感あふれる宮川の水面

緩やかな向かい風を受けて両岸の山桜の枝がサワサワと揺れ、散り残った花びらがはらはらと舞い落ちる。まるで蛍光色が混じったようなグリーンに輝く水面に落ちた花びら、僕らのカヌーがそんな花びらよりも少しだけ速い速度で追い越して進む。水面に挿したパドルに力を込めるたび、花びらがパドルの起こした小さな渦に巻き込まれてクルクルと回る...春、まさに春爛漫のカヌーイング。僕らは声の届く距離を保ちつつ、時折短い会話を交わしながら、花びらとともに時速4km、歩くのとほぼ同じスピードで宮川を下る。リバーウォーカー...時速8km程度で進むタンデムのカヌーイングがリバーランナーならば、ソロの僕らはリバーウォーカーだな...そんな風に思う。


日帰りなのに何故か積み荷満載

淵の色に同化するオリーブCAMPER

間もなく正面に瀬が見えてくる。
いつもなら痛快無比な早瀬だけど、水位の低い今日は浅瀬になっている。数m後ろのともちゃんにパドルでサインを送り、ボトムにパドルを置いて艇を降りる。膝下の水深の川に入るとネオプレンの生地にじんわりと水の冷たさが伝わってくる。川の水温は気温の2ヶ月遅れ。まだまだ水温は低いけど泳げなくはない冷たさ。雪解け水が流入することがない紀伊半島の川らしい優しい冷たさである。


でもやはり宮川グリーンに映えるのはレッドPATH

桜の花びらとともに流れるともちゃん

カヌーのスターンに取り付けた赤いフローティングのペインターロープを手繰りながら、水深のある場所を選んでフネを流す。『アハハハ...これじゃ川下りじゃなく川歩きね。』ともちゃんも呆れた様子でカヌーをライニングダウンさせている。その時、浅瀬の下流から僕らに驚いたコイの一群が背ビレを水面に出して猛スピードで泳ぎ上がってくる。10尾、20尾、30尾、たくさん(笑)...数え切れないほどたくさんの鯉。「鯉のぼりにはちょっと早いぜ。」眼を三角にして必死で泳ぐコイたちに声を掛ける僕だ。

浅瀬を越えると目に見えるほど水質がアップする。浅瀬の後の深く凪いだ淵に差し掛かると春の優しい陽光を浴びて川底に落ちるカヌーの影が見事に美しい。


鏡のような川面を揺らすPATHの航跡

間もなく鯨岩を通過。いつも向かい風が強まる宮川最大の屈曲部分だけど、ともちゃんは涼しい顔で漕いでいる。カヌーイングは腕力じゃないんだな...華奢な彼女が向かい風の中、積荷満載の4m50cmにも及ぶ長いカヌーをシレっと、しかも何時間も休まずに漕いでいるのを見ているとつくづくそう思う。

中川大橋の上流300m、ここは宮川中流部で一番の難所。旧中川大橋の橋脚の残骸がそのまま水中に残されていて、水中に転がったテトラポットの間、ほんの2mをジグザグに進む必要がある。
ところが今日は稀に見る最低水位なので、それらの残骸が全て水面上に顔を覗かせていてしかも流れのパワーがないので、とても安全に抜けることが出来る。中川大橋をくぐると「膳」の建つ長原の河原まではほんの10分ほどだ。


向かい風の中、鯨岩を通過

旧中川大橋の残骸をすり抜ける

最低水位と弱い向い風のせいでさほどペースは上がらず、一度も休憩しなかったにもかかわらず、約2時間掛かって「膳」の河原に到着。フネを河原に上げ、ウェーディングシューズとウエットソックスを脱いでデッキにはさんだTEVAサンダルに履き替える。
今日は2人ともウェットスーツの上にお揃いのファイントラックのストームゴージュパンツを重ね着している(ペアルックだよん...恥)ので、浅瀬の中をバシャバシャ歩いたのに全く濡れていない。実に重宝するウェアだ。


長原の河原で初めての上陸

お楽しみの「膳」に到着

平日で空いている「膳」のお座敷に上がった僕らは迷わずに『“月”をふたつ下さい。』...“月”つまり上丼を注文するのだ。家族4人だとこんな贅沢は出来ないけど、今日はなんたって“子鬼の居ぬ間に...”。少々高くても×2なら許せちゃうのです。

広い窓から宮川グリーンの川面を眺めつつ相変わらず美味しい鰻丼を楽しんだ後は、アフターの薫り高いコーヒーまで楽しむ。居心地の良さもあいまって僕らは夢中で語り合う。ふたりの愛についてラブラブモードな会話...だといいんだけど、“子鬼の居ぬ間に...”だというのに話の中心はやはり子供たちのこと。子供たちは不思議なことにパパにしか話さない内容、ママに聞いて欲しい内容とそれぞれ区別しているようで、そんなそれぞれが知り得た情報を報告し合い、親として対応がチグハグにならないようにする貴重な時間だ。


宮川を眺めつつ鰻丼「月」をいただく

昼食の後はいきなり長いライニングダウン

僕らの後から入ってきたお客さんが次々と食事を終えて店を出て行く中、気が付けばすでに午後2時。ここでゴールにする?なんて冗談を言いながら、濡れた冷たいシューズに履き替えて午後の部スタート。いきなりのライニングダウンに面食らうけど、自転車を積んでいることもあって、ゴール地点を特に定めているわけではないので、急ぐこともなくのんびりと淡々と進む僕らだ。


波間に揺れる桜の花びら、上空を旋回するトビ、赤いカヌー

凪いで鏡のように両岸の景色を映す水面をともちゃんの赤いカヌーの航跡が揺らす様子は、まるで絹の布をハサミで断ち切っているようでとても美しくカッコいい。いいなぁ、素敵だなぁ...中川大橋から宮リバーパークまでは、ともちゃんでも50回以上、僕は100回は下っているお馴染みの区間なのに惚れ惚れと見入ってしまう僕だ。もちろん素晴らしいのは何も景色だけではなく、宮川の濃厚で優しい自然も大きな魅力のひとつ。


大きく身を乗り出して唯一の瀬をクリアする

両岸の岩場は花盛りCLICK

“4月ならこの辺にこんな花が咲いている”とか、“そろそろカワセミが目の前を横切るぞ”といった詳しい様子も経験上全てが頭に入っているわけで、実際、赤い橋梁が青い空に映える鮠川大橋手前に来た時、ともちゃんは右岸に近づいて岩陰に咲く野花を見つけてたし、左岸の茂みで息を殺して浮かんでたらカワセミが2羽(夫婦か?)僕らの前を青い線を描くように飛び去ったりもした。


川を通る者にしか見られない可憐な姿CLICK

青い空に映える鮠川大橋の赤、そしてOld Town Red

見慣れた宮川を見慣れた古女房と下る。言葉を交わさなくても何となくともちゃんの考えてることが解るのと同じように、たぶん目を閉じていても瀬音や風向きや匂いでどこに居るか判るほど慣れ親しんだ宮川。これだけ何度も下っていると飽きない?って良く訊かれるけれど、もちろん初めて下った時の文句なしに美しくフレッシュな姿は大水害を経た今はもうないし、そこかしこに見たくない部分も出てきているのは事実だけど、宮川のこの広い空と穏やかな風景は僕の心をいつも陽性にしてくれるし、訪れるたび毎回違った表情を見せてくれて全然飽きないというのが本音。


スタートから10km。鮠川大橋でタイムアップ

川の魅力は息を飲むような透明度や、うっとりするような絶景ばかりじゃなくて、川面に浮かんだ時のまったりとした幸福感が大切。女性も若い頃のダイナマイトボディ(笑)よりも少し年齢を重ねて柔らかなシルエットになった方が落ち着くのと同じ...このへんは21年一緒に暮してきて、今も夫婦であり親友でありながら、女性としての魅力が今も色褪せないどころかさらに増しているように思えるともちゃんの存在とも似てるのかな?(爆笑)


田口から11.5km地点、立花の河原でゴール

PEUGEOT で田口大橋を目指す(鮠川大橋)

スタートから11.5km。イエローハウスを過ぎ、立花(ちーちょの河原)まで下ったところで、子供達の帰宅する時刻が近づきタイムアップ。それぞれのカヌーに積んだPEUGEOT Pacific18のおかげで、いつでもどこでもゴールに出来るのが嬉しい。

立花の河原にカヌーを引き上げ、河原でPacificを組み立てた僕らはスタート地点へのサイクリング開始!


宮川右岸の林道を疾走するともちゃん

田口大橋の進入路へ。OUTBACKが見えて来た!

カヌーも楽しいけど、川沿いの道路をのんびり走りながら宮川を眺めるのも結構楽しいものだ。立花からは左岸を、鮠川大橋を渡ってそこからは自然の濃い林道の続く右岸を走る。木立の間から時折覗く宮川のグリーンの川面が実に美しい道。中川大橋の麻加江集落からは宮川の流れが大きく蛇行する部分をショートカットするかわりに心臓破りの峠が待ち構えている。ちょっと苦しそうなともちゃんだけど、僕の『ダイエット、ダイエット!』ってな変なエールに苦笑いしながら峠を越え、無事スタート地点で僕らを待つOUTBACKの元に戻ることができたのだった。


今のところ余裕の笑顔だけど、いつまでこうして
カヌーを担ぐことができるのだろう...

上:ゴールに回したOUTBACKにカヌーを積み込む
下:川岸の咲く美しい花

OUTBACKを立花の河原に回してカヌー&その他諸々を積み込んだ時には時計の針は16:30を少し回ったところ。ここから自宅までは約30分ってことで子供たちの帰宅まで少しの猶予があったので、ちょっと寄り道して宮リバー度会パークでお花見。(ケーキ屋でお茶するか、宮リバーでお花見か迷って花見を選択...団子より花?)少し風の冷たい夕暮れの宮リバーパークで川面に散りゆく見事な桜吹雪を声もなく見守る。

僕らは高速道路のトンネルを抜けるたび、少しづつカヌーイストから父と母に変身する自分を意識しながら無事子供たちより先に自宅へと戻ることが出来たのだった。


宮リバーパークで桜吹雪を鑑賞し、カヌーイストは父と母に戻る

 

April.2007 MENU

アンケートにお答えください!

 

_  _  _