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 2月28日 潮騒の島トレッキング(三重県・神島)

子鬼の居ぬ間に...#4
 


監的哨跡から望む伊良湖水道

目が覚めてベッドの真上にある天窓からの青空を見た瞬間、何故だか神島に行こうっ!と思い付いた。三重県のどの山からでも見える“おむすび島”こと神島は伊勢湾口に浮かぶ周囲約4kmの小島で、三島由紀夫の小説『潮騒』*1の舞台として有名である。
僕にとって旅というものは予め行き先を決めるものではなく、ましてや早くから予約をしたりするものではない。これは食べる物も同じで、一週間も前から献立を決めなくちゃいけない食材宅配システムが好きになれないのと同じ理由で、その日その時の体調や気分、天候などで行き先を決めるのが理想である。

*1 伊勢の海に浮かぶ美しい「歌島」を舞台にした三島由紀夫作の叙情的な純愛物語。18歳の漁師・新治は、島の実力者である照吉の末娘・初江を見初める。ふたりは強く惹(ひ)かれ合うものの、因習の根強い島で「親の壁」が立ちはだかる。5度映画化され、吉永小百合や山口百恵らが主演した。


鳥羽・佐田浜の定期船乗り場にて

9:50鳥羽を出航

時計を見るとすでに8:00を回っていたけど、ものは試しとともちゃんを誘ってみたところもっと早く言ってよ!なんて叱られつつもまんざら嫌でもなさそう。そこで寝起きにトーストをかじりながら検索してみると神島への定期船の出航は9:50。何とか間に合いそうなので、急遽ザックにトレッキングの装備を詰め込んで、9:00前に出発し鳥羽駅前の佐田浜駐車場に9:30に滑り込む。
佐田浜港の待合所の自販機で切符を買い、市営定期船第28鳥羽丸に乗り込む。

定期船が賑わってるのは経由地の菅島までで、そこから神島へ向かう乗客はたった5人(!)。若狭湾から関ヶ原を抜けて伊勢湾へと吹き抜ける季節風の影響で海は大荒れ。波頭は白く輝き、まるで無数の白兎が海を渡っているように見える。(*この白波のことを“波兎”と呼ぶのらしい。言い得て妙だな...。)


船窓から神島の特徴的な島影が見えた!

きらめく海に浮かぶ神島

そんな¥710で50分も楽しめる市営ジェットコースターで島の北側に位置する港に降り立つと、いきなり山のように積み上げられた蛸壷がお出迎え。観光客向けの看板があるのは桟橋付近だけで、目の前には生活感の濃い島唯一の集落があるのみ。北側の急斜面に張り付くように立ち並ぶ集落に入り、人ひとり通るのがやっとという道幅で立体的に作られた路地に歩をすすめると、そこは“アナザーワールド”。洗濯機を避け、生乾きの手拭いが顔を撫で...最初は何だかヨソんちの庭に勝手に入り込むような感じを覚えて戸惑うけど、しばらく歩くうち開けっぴろげで大らかな素のままの島の生活感にどっぷり浸ることが出来る。それは何だか以前に味わった感覚...これがスペイン・アンダルシア地方の旧市街だったり、モロッコのマラケシュで味わった感覚であるのを思い出すのにさほど時間はかからなかった。


船着場から路地を進む

かつては島唯一の存在だった時計台

この階段だらけの路地が縦横無尽にはりめぐらされた集落での生活は結構大変そうだけど『ここの年寄りは毎日坂を登ったり下りたりしとるで、足腰が丈夫なんや。』なのだそうで、流行のバリアフリーな街づくりとは対極にあるけれど目指すものは同じってのが非常に興味深い。

地図も見ずに適当に迷路のような集落を歩いていると、かつて島唯一の時計だったらしいコンクリート製の時計台、水道がない時代に女性達の集合場所だった島の共同洗濯場跡などに出くわす。さらに急な階段を上って(登って?)集落の上端に出ると、集落全体と港、そして波兎だらけの伊勢湾を眺めることができる。


青い伊勢湾に映えるカラフルな集落(海には波兎と伊勢湾フェリー)

ここから見る集落は美しい!
何が美しいって、初春の陽光を浴びてさらにそのコントラストを増した色彩が美しいのである。色とりどりの屋根瓦もだけど、それぞれの家の外壁が赤、青、ピンク、オレンジ、エーゲグリーンなど持ち主の好みで好き勝手にペイントされていて、そのカラフルさが決して毒々しくなく、アッケラカンとした印象を受ける。青い海やテカテカ光る常緑照葉樹の森を背景に、まるでひとつのモザイク作品のように密集したカラフルな家並みが訪れる者の気持ちを明るくさせてくれる気がする。


赤い屋根とスカイブルーとミスティグリーンの外壁

八代神社の石段を登る

カラフルな家々の眺めを楽しみながら進むと、小ぶりな鳥居と古びた石段にぶつかる。海の神・綿津見命を祀る八代神社である。

歌島に眺めのもつとも美しい場所が二つある。一つは島の頂きちかく、北西にむかつて建てられた八代神社である。八代神社は綿津見命を祀つてゐた。この海神の信仰は、漁夫たちの生活から自然に生れ、かれらはいつも海上の平穏を祈り、もし海難に遭つて救はれれば、何よりも先に、ここの社に奉納金を捧げるのであつた。

(三島由紀夫「潮騒」)

200段余りの石段を上りお参りを済ませた後、鳥羽港でもらった“鳥羽ウォーキングマップ”を手に島をぐるりと一周出来るシングルトラックの遊歩道を辿って小説『潮騒』の舞台、そして4回も映画化された『潮騒』(堀ちえみ&鶴見慎吾のは数に入れたくない...笑)で吉永小百合や山口百恵のロケ地となった場所を辿りながら約4.5km2時間のトレッキングのスタートだ。


島を一周する遊歩道をゆく

遊歩道からの眺めCLICK

船着場にあった資料によれば、ここ神島は“恋人の聖地プロジェクト”なるワケの解らないセレクションで全国30ケ所のひとつに選定されてるらしい。たぶんこれは三島の恋愛小説『潮騒』の島というキーワードから誰もが抱くイメージなんだろうけど...こうして実際に島を歩いてみると、恋人の聖地というよりもどっちかと言うとトレッキングシューズがお似合いの自然と民俗を楽しむ場所って感じがする。
左手は断崖絶壁、でも良く整備された遊歩道を左手に伊良湖水道の絶景を楽しみながら5〜600m、15分ほどで美しく輝く白いタイルの外壁が青空と青い海に映える神島灯台に到着。

眺めのもつとも美しいもう一つの場所は、島の東山の頂きに近い燈台である。燈台の立つてゐる断崖の下には、伊良湖水道の海流の響きが絶えなかつた。伊勢海と太平洋をつなぐこの狭窄な海門は、風のある日には、いくつもの渦を巻いた。水道を隔てて、渥美半島の端が迫つてをり、その石の多い荒涼とした波打際に、伊良湖崎の小さな無人の燈台が立つてゐた。歌島燈台からは東南に太平洋の一部が望まれ、東北の渥美湾をへだてた山々のかなたには、西風の強い払暁など、富士を見ることがあつた。

(三島由紀夫「潮騒」)


青い空に映えるし白い神島灯台

灯台からの眺めを楽しんだ僕らは灯台の裏手へと伸びる遊歩道に沿って、常緑照葉樹の木々が美しい森へと進む。椿の赤やピンクの花が所々に落ちた遊歩道を100mほど進むと、灯台が出来る前は暗礁が多いこの付近の海の安全を確保するために松明を焚いたと言われる神島最高峰・灯明山への分岐がある。看板によれば80mとのことなので灯明山方面へと進むとほどなくしてレーダーの鉄塔がありその前にちょっとした広場があるものの、地形図に記載されている三角点が見当たらない。そこでヤブ漕ぎして30mほど進むと、ありました二等三角点。神島最高峰・灯明山170.9m登頂成功!


常緑照葉樹の森を貫いて伸びる
遊歩道はとても気持ちが良い

上:神島最高峰・灯明山171mに登頂!
下:潮騒のクライマックスの舞台・監的哨跡

往路を辿り、先ほどの分岐からなだらかに続く木製の階段を下っていくと、ちょっとした広場に出る。左手にコンクリート製の構造物...これが『潮騒』のクライマックスの場所としても有名な監的哨跡だ。「潮騒」にあるここでのシーンの描写は、今でこそ当たり前になっちゃったけど小学生の僕にはちょっと刺激が強すぎて、将来大人になったら、焚き火を挟んで...うひひひ、と激しく興奮したことを思い出す(笑)。

このとき急に嵐が、窓の外で立ちはだかつた。それまでにも風雨はおなじ強さで廃墟をめぐつて荒れ狂つてゐたのであるが、この瞬間に嵐はたしかに現前し、高い窓のすぐ下には太平洋がゆつたりとこの持続的な狂躁をゆすぶつてゐるのがわかつた。
少女は二三歩退いた。出口はなかつた。コンクリートの煤けた壁が少女の背中にさはつた。
「初江!」と若者が叫んだ。
「その火を飛び越して来い。その火を飛び越してきたら」少女は息せいてはゐるが、清らかな弾んだ声で言つた。
裸の若者は躊躇しなかつた。爪先に弾みをつけて、彼の炎に映えた体は、火のなかへまつしぐらに飛び込んだ。次の刹那にその体は少女のすぐ前にあつた。彼の胸は乳房に軽く触れた。『この弾力だ。前に赤いセエタアの下に俺が想像したのはこの弾力だ』と若者は感動して思つた。二人は抱き合つた。少女が先に柔らかく倒れた。

(三島由紀夫「潮騒」)


「その火を飛び越して来い」炉の前で初江になるオバサン

狭い階段を上って2階へ

どうです?三島由紀夫はマッチョ志向の強い人ってイメージがあるけど、このシーンを読むと実はおっ●い星人だったように感じるのは僕だけだろうか?(爆笑)
僕は小説を読む前に山口百恵の映画を観てしまっているので、僕の頭にある初江は百恵ちゃんなんだけど、残念ながら燃えている(つもり)の炉の向こうに立っているのは焚き火に輝く初々しい裸体の百恵ちゃんでも吉永小百合オネエサマでもなく、60/40パーカのともちゃん(笑)。しかもコンクリートの煤けた壁を背にしてるのは僕の方だし(笑)。


窓からはまるで一枚の絵のような風景

さらに屋上に上がると絶景が!!

ここでともちゃんが変なポーズで呟くのである。「その火を飛び越して来い。その火を飛び越してきたら」...ま、「潮騒」の台詞をスラスラ諳んじることができる嫁さんだってのは楽しいことだけど、やっぱり初江がオバサンじゃダメです、はい(笑)。

ま、そういう他愛ないおフザケはともかく、三階建て+屋上の監的哨跡を見学して回る。屋上からの360°のパノラマが素晴しいのはもちろんだけど、2階の窓からのまるで一枚の絵のような伊良湖の景色が最高!小百合サンがいなくても百恵ちゃんがいなくても、来る価値がある場所であるのは間違いないところだ(笑)


伊良湖水道を行き交う船と渥美半島CLICK

そんなわけで監的哨跡で友和&百恵ごっこや屋上からの素晴らしい眺めを楽しんだ後、僕らは神島小中学校のグラウンドに向けてよく整備された木製階段を下りて行く。左手に海女の乳比べのシーン(なんじゃそりゃ?...だけど、初江の無実が証明された重要なシーン)が撮影されたニワの浜。ニワの浜の左手には真っ白な石灰岩が林立するカルスト地形が見られる。
小中学校のグラウンド沿いに進むと目の前に特徴的な岩塊・八畳岩が現れる。八畳岩の手前が祝ヶ浜、向こう側が古里ノ浜(ごりのはま)で、浜に下りて貝殻や美しい小石拾いなどビーチコーミングを楽しむ。


海女が乳比べをした(笑)ニワの浜のカルスト地形

祝が浜に下りてみる

大きな巻貝の貝殻と艶々と光るグリーンの小石をAzu へのお土産に拾った後、一旦浜を離れて、海女が油を塗って鏡にしたと伝えられる鏡岩の脇を通って再び太陽の光を浴びて葉がピカピカ輝く照葉樹林へと入る。古里ノ浜に面した斜面は島の畑が集まっている区域で、そこへ畑仕事に向かうおばあちゃんと立ち話を楽しみ(島を一周する間、集落を出てからここまでで初めて会った人がこのおばあちゃん!)、峠道を下ると、集落はもう目の前。神島一周のトレッキングはいよいよ終わりである。


八畳岩周辺は独特の真っ赤な岩が転がっている

ザックに吊るしたGPSによれば、港から時計廻りに島を一周するルートはここまでで約4.5km、2時間。とにかく変化に富んで飽きないなかなか素晴しいコースで、我が家からたったの50kmしか離れていないのに森の植生が全く違うし、野鳥がその辺でチーチーピヨピヨ鳴いてるし、何といっても全コースがオーシャンビューなのも素晴しい。しかも平日ってこともあって、スタートからゴールまで畑仕事のおばあちゃん以外誰にも会わない貸切り状態が何よりも嬉しいのだ。


島の一周を終えて再び集落の路地に進む。
とにかく狭くて入り組んでいる

上:古里(ゴリ)の浜へ
下:岩の割れ目に咲く逞しい花
CLICK

そして、そんな素晴しい島の自然に加えて僕が一番気に入ったのは、神島北側の急斜面に密集した集落のエキゾチックでしかもどこか懐かしい美しさ。前にも書いたけど、マラケシュの街を思わせる入り組んだ路地と極彩色の家並み。絶海の孤島と呼ぶには本土から少し近すぎるけれど、それでも海によって他と隔てられたこの島に都会のように過度なプライバシーを重んじる気風は全く存在せず他人と自分の垣根が低いということも、このスモールアイランド・神島ならではの良さではなのだろうか?


オレンジの壁にグリーンの雨戸、青い妻壁に黄色い2階...僕は好きです。

トレッキングを終えて集落に戻った僕らは、少し遅いランチを食べようと、ウォーキングマップにリストアップされた3軒のお食事処を求めて路地を探す。ところが、“岬”も“さざ波”も“スエヒロ”も平日はお店を開けていないようで、当然ながらコンビニも何もないので途方に暮れる。出航1時間前に家を出るという忙しい朝だったのでランチを準備せずに渡ったことを後悔しつつ、でもここまで見事に観光客向けのお店がない潔さ(土産物店もない!)に苦笑いする僕らだ。


山海荘でランチ

そんな非常事態の中、唯一営業してそうな旅館“山海荘”に飛び込みで入り、頼み込んで特別に昼食の準備をしてもらうことにする。当然メニューは選べず¥1000程度でお願いしますってな注文方法なんだけど、料理が出てきてびっくり!新鮮なタコと鯛のお刺身と牡蠣フライ、そして何と泊り客の朝食に出した伊勢海老のお味噌汁に、具のタコや鯛がご飯よりも多いパエリア風の炊き込みご飯がおひつでド〜ン!...コンビニでおにぎりなんか用意しなくて良かったね!なランチを楽しむことができた。

そんなわけで、昼食を終えた僕らは、しばらく集落の中をぶらぶら歩き回って、港の待合所へ。港に着くと防波堤を遥かに越える波高にびっくり!地元のおじさんが『船、止まるかも知れへんど。』と脅かしてくるほどだ。

『船が欠航になったらどうする?』
『そりゃ、さっきの山海荘に泊めてもらって海の幸三昧にキマリ!でしょ?』
『う〜ん、いいねぇ、それ。』
『でも今日から期末試験のMasa放ってお泊まりだなんて、何て両親なんでしょ?(笑)』
『ワハハハ』

そんな心配...じゃなく期待を裏切るように15:30きっかりに定期船は神島を出航し鳥羽へ。定期船の揺れはそれはもう往路の比ではない尋常じゃないもので、 波兎は波羊ぐらいの大きさになって右舷を激しく叩き、船体を飛び越えた波飛沫が左舷に降り注ぐ...マジで船が転覆するんじゃないかと思うほどの凄まじいモノ。ただ船酔いには無縁な僕ら夫婦はグースカ寝てたけど(笑)。
佐田浜港に16:18に到着した僕らは港の駐車場でOUTBACKに乗り、自宅へ。予定通り17:00きっかりに帰宅することが出来たわけなんだけど、船が欠航になったら面白かったのになぁ、なんて小声で話し合うイケナイ両親...それはあたかも嵐の中、集落の反対側に位置する絶壁の上に建つ監的哨跡で若いふたりが感じたであろうスリルを伴った非日常感にも似ているのではないのか?...そんな風にも思えるのである。


蛸壷の前でタコの真似(バカ)

非日常...実はこれこそが旅の重要な要素である。
誤解を恐れず正直に書くと、大学生の時の僕は国内を旅することは海外よりもワンランク低いものだとすら思っていた。端的に言えば、国内なんて興味がなかったのである。

 

710円50分間の市営ジェットコースター

うひゃひゃひゃひゃ...オモシレェ〜!

前にも書いたかもしれないけど、僕は他と隔絶された山の中に生まれ、田舎者であるが故に自分の知らない世界に対する興味が人一倍旺盛な子供であた。赤ん坊の頃から地図帳を開いて空想の中で旅をするのが大好きってな子供だったけれど、精神的に自立するようになった中学の頃から家業その他のアルバイトである程度まとまったお金がたまると、青春18きっぷを手に入れて列車に乗って全国を旅することを始めた。結局高校を卒業するまでの4〜5年で沖縄以外全ての都道府県に足を踏み入れたものの、どこに行っても“ミニ東京化”してしまっていることに落胆し、エキゾティズムを感じない国内の旅に飽き飽きしていた。そこで大学に入ると国内の旅を旅だと思えなくなってしまっていたのだった。

 

ところが、カヌーを始めるとそんな考えは一変する。
例えそれがいつも見慣れた宮川であっても、川面から見上げる風景はそれまでに見たことがない新鮮なもので、飛行機に乗って何千マイルも移動するよりもカヌーに乗って10km漕ぐ方が刺激的で充実した旅を味わえることに気づく。結局のところ、旅の楽しみは非日常に身を置くことであって、遠くへ行くことではないことを悟った僕は遠くよりも近くの非日常を探し始めることになる。
車でなら1時間もあれば充分な距離もカヌーや徒歩なら一日楽しめるし、それでいて車からでは感じることが出来ない非日常を存分に味わうことが出来る。そんな風に考えると自分の住む三重県が実に魅力ある場所であること、たった数時間のショートトリップですら、つかの間の非日常を味わえる場所はいくらでもあることに気づかされるのだ。

そんな意味で今回訪れた神島も、ほんの数時間で気軽に非日常を存分に味わえる素晴しい場所のひとつ。
聞くところによれば、三島由紀夫は『潮騒』を執筆するにあたって、彼が前年に旅したギリシャ・エーゲ海に浮かぶ島に近いイメージの孤島を探すうちこの神島を見つけたのだそうだ。小説『潮騒』が古代ギリシャの恋愛小説『ダフニスとクロエ』(エーゲ海に浮かぶレスボス島を舞台に、少年と少女に芽生えた純真な恋とその成就が描かれている)をモチーフにしていることからも、三島がこの島にエーゲ海の雰囲気を感じたのは確かなのだけど、果たして彼はこの島のどこにエーゲ海を感じたのか?気候?坂道と階段だらけの家並み?人懐っこい人々?灯台に向けて伸びる山道からの風景?太陽の神を祀る島の祭「ゲーター祭」が太陽神アポロンに通じるから?...そんな様々なことを推理していると、島の監的哨の廃虚がアテネの神殿と重なって見えてくるから不思議だ。
ま、とにかく、三島がエーゲ海を感じた島に日帰り出来てしまう幸せ...僕は改めて日本に、そして三重県に生まれ住むことが出来ている自分に感謝し、さらなるDiscover JAPAN、Discover MIEを誓うのである。

 

February.2007 MENU

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