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11月29日 修験業山登山(三重県津市・1094m)

  


朴葉でふざけるともちゃん

子鬼の居ぬ間に...#16

ここのところ週末に仕事を頑張ってるおかげで水曜日がコンスタントに休めてて、夫婦で“子鬼の居ぬ間に...”なお出かけが続いてる。ただ水曜のお出かけは子供達を学校に送り出す8:30から彼らが帰宅する17:30までの最大9時間しかなく、しかも月火は結構夫婦揃って忙しいこともあって、行き先を考え始めるのが当日朝になってからとなってしまう(涙)。そうなると、どうしても行き先は安近短...要するに県内しかダメってこと。でも、そのおかげで最近は以前なら見向きもしなかった近場に素敵な遊び場を見つけることが出来るようになったのも事実。何も遠征しなくても近くにこんなに良い場所があるじゃん!目からウロコな今日この頃である。
そんなわけで、今朝も夫婦でどこで何するかを相談。デッキでちーちょが伸びて寝転んでいるってことは15℃以上の小春日和って証拠(丸まってると15℃未満...笑)だし、Masaの誕生記念の白樫の枝もさほど揺れてないから風もなさそうだ。今シーズン何度目かの“ラストカヌーイング”か?とカヌー倉庫の扉をオープンしようと思ったその時、ともちゃんが叫ぶ。『あっ、そうだった!川上さんに行きたかったんだった!』


川上若宮八幡社の参道をゆく

はらいの滝のそばを通って山へ

一応、我が家はレディファーストなので(ホンマか?)、早速OUTBACKにトレッキングシューズと軽登山の装備を積み込んで三重県津市美杉町の川上若宮八幡社に向けて出発。ん?何で神社に参拝するのに登山の準備が必要かって?もちろん川上若宮八幡社って言っても、フツーにお参りするのではなく、神社の裏にそびえる修験業山(1094m)の山頂近くにある高宮(奥宮)にお参りするのが我が家流(笑)。要するに今日も登山というわけなのだ(笑)。
先週よりもさらに彩りが美しくなった青山高原山麓の紅葉を楽しみながら我が家から1時間のドライブで川上若宮八幡社に到着。鳥居前の駐車場にOUTBACKを停め、靴を履き替えて神社の参道を進む。社務所の脇でおしゃべり好きな宮司さんと少し立ち話をして11:30登山スタート。神社からは渓流に沿って遊歩道のような登山道が伸びる。
両脇に楓の紅葉を楽しみながら進むと、間もなく美しい滝が見えてくる...祓いの滝である。滝壷の下流に架けられた橋を渡って斜面をトラバースするように進むと“修験業山こちら”の看板。標識と目印のテープに従って左を流れる渓流を徒渉するとここが取り付き点、いよいよ本格的な登山となる。


落ち葉に覆われた滑りやすい道が意外に怖い

沢ではいきなりのボルダリング

登山道に入るなりいきなりの急登に見舞われ、しばらくは左側に渓流を見ながらの急斜面のトラバース道。要所には山側にトラロープが張ってあるものの元々道が細くて足場が悪い上に濡れた岩の表面を幾重にも落ち葉が覆い、非常に滑りやすい。『何これ?めっちゃ怖いやん。』ともちゃんがいきなり弱音を吐く。足を滑らせても死ぬことはないけど骨折ぐらいはしそうな微妙な高さがイヤな感じだ。ただ、ほとんどの葉が落葉樹なので空が良く見えて森の雰囲気は明るいし、一面が落ち葉に覆われ空気までが暖色系に染まった森はとても美しい。
先ほどの渓流を最後に標識は絶えているけど、木々にテープのマーキングがなされていて、ルートを見失う危険はほとんどなさそうだ。いきなりの険しい道に少しメゲつつ、マーキングを追うように進むと、再び渓流を渡るようだ。ところが、渓流に下りるためには、まるで滑り台のように斜めに切り落としたような岩を登攀する必要がある。幸い今日は乾いているけど、もし濡れてたらシャレにならないアブなさだろうなぁ。


沢を渡った後は険しい岩の
隙間を抜けて沢沿いに進む

上:沢を渡るルートが続く
下:堰堤を右に巻いた後はこのガレ場

何とか渓流を渡り数十tはありそうな巨大な岩を巻いて杉林を進むと、再びルートが沢を渡る。沢は増水時のパワーを物語るように背丈を越すような大岩がゴロゴロと転がり、登山というよりもボルダリングに近い歩きを余儀無くされる。またしばらく進むと渓流がふたつに分かれ、またまた沢を渡ることになる。右股の沢・白山谷を渡って山を進みさらに左股の沢・修験業谷を渡ると眼前にトンデモナイ一直線に滑り台状のガレ場が現れる。何がトンデモナイかって、高低差100m以上、距離で数百mにわたってまるで山上から巨大なダンプで砕石をぶちまけたようになっているのだ。(後日Yahoo!やGoogleで確認したら航空写真にもくっきりと写ってた)もちろん、このガレ場上を歩くのは危険なので、左側をつづら折れで登ることになる。


針葉樹林の地面には目の覚めるような黄色の紅葉。
まるで菜の花の群生のように目に鮮やかだ。

上:ガレ場というより土石流が流れ下った痕のよう
下:登山者が積み上げたと思われる標識

ガレ場は一直線の溝を刻む幅20mほどのモノだけど、実はその両脇の植林された森の中も同じ地質でこの斜面全体がガレガレの状態。かなり歩きづらい中を進むと暗い森の中に黄色い菜の花の群生が見られる...ん?菜の花??近づいてみると、それは当然ながら菜の花ではなく(笑)高さ3〜40cmの黄色く紅葉した葉っぱ。それが暗い森の中でまるで咲き誇るかのように華やかに散らばって生えているのだ!長年、山に入ってるけど、これほど見事な光景は初めてで、思わず立ち止まってその美しい“花”を堪能した僕らだった。


無彩色の中だけにとても映える黄色

辺り一面に咲き(?)誇る
CLICK


尾根に到着するとそこからは見事な木の根道が続く

ガレ場を苦労して登り切ると、唐突に尾根に出る。幅は広い場所で2m、狭い部分では“馬の背”どころか“ゴジラの背”と呼んでも差し支えない5〜60cmしかない。両側は切り立った崖だけど、アセビやシャクナゲ、ヒメシャラのガードレールに守られて危険な感じは全くない。でも快適な尾根道は長くは続かず、すぐに難関が現れる。45°以上にも思える階段状の木の根道!その潔いほど真直ぐにひたすら伸びる階段を見上げながら、笑っちゃうしかない僕らである。


延々と続く木の根階段に
ため息をつくともちゃん

上:木漏れ日の中尾根を進む
下:時折現れる大岩が行く手を遮る

これを登り切ったら本尾根に辿り着けるに違いない...そう信じてハァハァヒィヒィ息を乱して登った僕らを待っていたのは、またしてもヤセ尾根。そんでもって、またまた木の根階段。今度はさらに斜度がキツくて申し訳程度に細いトラロープが垂れ下がってるし...この辺りはまさに山の名前の通り修験道の行場!大峰の弥山をそのままスケールダウンしたようなお山なのである。『石鎚山よりもキツ〜い!』by ともちゃん
そんなのを2〜3度繰り返すと、いきなりフカフカの落ち葉の絨毯の森に入る。ようやく本尾根に到着である。まずは栗ノ木分岐に立つ印象的なブナの老木に夫婦で交代に抱きついて耳を当てて命の音を聴いてご挨拶を済ませ、ルートを右にとって尾根を進む。


栗ノ木分岐に立つブナの老木に
耳を当てて命の音を聴くともちゃん

上:何となくピークっぽい光!
下:栗ノ木分岐に入ると雰囲気が豹変!

この尾根は局ヶ岳から三峰山を経て高見山、そして遠くは四国石鎚山へと続く、まさに中央構造線の辺縁部に連なる“ニッポンの背骨”にあたる山脈の竜骨たる尾根。松阪市飯高町側は“崖”と呼べるほど切り立っていて、地質学的な詳細は知らないけど、もしこれが断層だとしたら高さ500mを超える段差が生じていることになる。


局ヶ岳から三峰山へと続く本尾根は素晴らしい原生林

ただ、稜線上はヒメシャラ、ブナ、コナラなどの落葉樹が混生した原生林となっていて、地面を色とりどりの落ち葉が深く覆っている。その感触は実に心地よく、落ち葉の絨毯から覘く苔むした淡い緑の岩とのコントラストが目に優しい。
美しい森を堪能しながら、緩やかなアップダウンを繰り返しつつさらに高度を上げ、大きな岩戸を巻くと、御影石の立派な鳥居が見えてくる。高宮である。まるで影絵の座禅を組む僧侶の姿のように見える岩が祀られている高宮に参拝した後、坂を下った鞍部には特徴的なブナの木。その根元には落ち葉に埋め尽くされたフラットな場所があるので、ここでザックを下ろしてランチタイムとする。
フカフカの地面は実に気持ち良く、当然ながらThe Butonなど敷かずに直接座る。


高宮に到着

高宮と修験業山のコル(鞍部)でランチタイム


落ち葉に覆われたフカフカで気持ち良い地面は最高の座り心地

ザックを下ろして座るとすぐに寒さを覚える気温なので、今日のランチは十勝製麺所のカップ寄せ鍋。もちろんおにぎり2個を放り込んで雑炊風にしていただくと抜群の味である。食後は緑茶を煎れてチョコクッキーを食べながら周囲の景色を楽しんで“最終ベースキャンプ”で3〜40分を過ごし、いよいよ正面の樹林の隙間から覘いている修験業山のピークを目指してアタック開始!


正面に目指すピークが見えてきた!

この丸っこい小ピークが修験業山の頂上

小学校の校庭にある築山のようになだらかな上りを10分ほどで、穏やかな円錐型のピークが見え、これまでの険しい登山道がウソのように何てことない小ピーク・修験業山に登頂成功。(13:50)
ガイドブックによれば眺望は望めないとのことだけど、葉の落ちた木々の間からはこの尾根の先にある三峰山(10月に上った)の穏やかな山並みが見えるのが晩秋ならではだ。
小さな木製看板がいくつかあるだけの三角点で記念撮影を済ませた僕らは、すぐに下山を開始する。


修験業山に登頂成功!

1094mと書かれた控え目な木製の山頂標識


こんなに素晴らしい森を独占できるシアワセ!

往路でも感じたけど、この尾根道の快適さはスゴイ!後方から射す暖かな陽光を背中に浴びて、ゼブラ模様の影が斜めに落ちて赤く染まった尾根道。微妙な色合いの混生林、枝の間から見える青空...フカフカの落ち葉をシャラシャラ鳴らしながら踏み締めて歩いていると、オレが何を感じようとどう行動しようと、この素晴らしい光景は何も変わらないんだよなぁ...普段の生活で感じる悩みやストレスが実にバカバカしく思えてくる。


45°近い崖を下るには頼りない
トラロープに頼らざるを得ない

上:栗ノ木山(手前)と局ヶ岳(奥)の美しいピーク
下:滑り台のように一直線伸びる下山路

もしも僕が都会暮しで、リラックスすることを目的に絵を飾るとしたら、今僕の前に広がっているこの光景を描いたものがいいな...宮川中流域の水面からの眺めと並んで“リラクゼーション・ビュー”の双璧!そこにいるだけで癒される素晴らしい場所である。
まっすぐに伸びる尾根の先には栗ノ木山と局ヶ岳の流麗なピークが覘き、いつかこの大峯奥駈道のように一直線に続く素敵なスカイラインを縦走したいなぁって思った。


すっかり落葉した原生林の向こうに局ヶ岳の流麗な山容を望む

快適な尾根道を進み、目印のブナの老木から左に折れて枝尾根へと入る。木の根の階段は上り以上に斜度が急に見え、ちょっとビビってしまう僕ら。先をゆくともちゃんの写真を撮ろうとすると自分の足が写ってしまうほどの斜度なのである(涙)。
『スキー履いてたらこの角度は絶対に無理よねぇ〜!』
45°近い絶壁はもう前向きで下りることが出来なくて、2人してトラロープに掴まりながら後ずさりして降下する。ただ、まるで前衛芸術のように木の根がからみ合っているので、岩場やザレ場の45°とは違って確実にスタンスやホールドの余地があるので危険はないけど、とにかく下りなのに息が上がる困難さではある。


登りでは気付かなかったけど、すっげぇ角度

行場っぽい岩のヤセ尾根が続く

木の根階段の崖とメチャ細いキレットを何ケ所か通過すると、ルートは尾根道を外れ、往路で息を飲む美しさだった“フラワー”な黄色い紅葉の斜面へと入る。往路よりもさらに暗くなった森の中で一際彩度をましたように見える黄色い葉っぱたち。
『素晴らしいよな、これ。』
『そうねぇ、何だか魔法の森に迷い込んだみたいな気がするわね。』
またもや立ち止まって、飽くことなく眺めてしまう僕らだ。


往路よりも暗くなった森にひときわ映えるイエローリ−ヴス


これはもうフラワーと呼んでもいいんじゃないか?

最大の難所をトラバースするともちゃん

美しい光景をしばし眺めた後はガレ場のつづら折れを慎重に下り、修験業谷を徒渉して最大の難所である大岩を越える。そこからは雪渓のように滑りやすい落ち葉の “スキーゲレンデ”をトラバース。登山道の取り付き点では斜面に散らばるグレーの朴の葉っぱで“仮面舞踏会”ごっこを楽しみ(おっさんとおばさんが何やってんだか!...笑)、祓い滝を巻いて川上若宮八幡社へと帰着した。


楓の落ち葉の絨毯をゆく

境内に戻った僕らは、登山の無事のお礼詣でのため背筋がゾッとする“気”を感じる本殿へと向かい、本殿の脇から伸びる参道を辿って禊の滝へと進む。高さはさほどでもないけど、原生林から流れ下る美しい姿の滝を眺め、駐車場に戻って今日の登山を終える。


登山を終えて川上若宮八幡社に参詣

境内を散策し禊ぎの滝を目指す

初めて登った修験業山は、山の名前の通り“休ましよらんんぁ〜”な、まさに修験道の行場そのもの!喩えるならば大峰の弥山をそのままスケールダウンしたようなお山で『石鎚山よりもキツ〜い!』by ともちゃんに首を縦にフリフリ同感である。ただし、ひたすらキツいだけではなく、ガレ場に咲く“フラワー”な紅葉や本尾根の美しい原生林など見所満載で、とにかく飽きることのない素敵な山だったのは確かである。しかも帰り道に八幡社の宮司さんに聞いたら、今日、修験業山に入山したのは僕ら2人だけだそうで、静かな夫婦だけの時間を過ごすことができたことも好印象。この広大な山全体を夫婦で貸切り!やっぱり平日の“日本無名山”はイイなぁ...この点が“子鬼の居ぬ間に...”な平日野遊びをやめられない理由なのである。

 

 

 

 

November.2006 MENU

 

 

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