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  10月25日 1400年目の秘仏巡りサイクリング(滋賀県・湖東三山)

  


百済寺の山門前に停めた自転車

子鬼の居ぬ間に...#13

昨日、帰宅したらともちゃんがヤケに愛想良く僕にすり寄ってきた。な、なんじゃ、気色悪い!
『あの〜、明日の予定なんかはもうお決めになっちゃったりしてるんでしょうか?』
え、明日?お天気良さそうだし大体決めてるけど...。
『そ、そうなの?じゃぁ、無理かなぁ...。』
かなりがっかりした感じで書斎を出て行こうとするので、呼び止めて訊ねてみる。


道の駅にOUTBACKを停めてスタート

『で、どこか行きたいところでも?』
『あ、いいのいいの、アナタのお休みだから...。』
ここのところ連日のように“有閑マダム”なお出かけに忙しかった彼女はそれなりに罪悪感を感じているのかシオらしい(笑)
『あ、そう、いいんならオレの行きたい所に行くけどいい?』
『あ、でも、やっぱり行きたいんですけど...。』
え〜い、まどろっこしい!どこに行きたいわけっ?
『湖東三山』
へっ?コトーサンザン?にっしゃんのBBS見てみ。
『へ?アナタの行きたい場所ってのも湖東三山だったの?』

...ってなわけで、前置きが長くなっちゃったけど(笑)、夫婦の考えてることは同じってことで今日は湖東三山(百済寺、金剛輪寺、西明寺)へ。
天台宗開宗千二百慶讃大法会記念ということで門外不出の秘仏が三山そろって一斉にご開帳!何しろ千数百年の歴史上、初めての三体揃ってのご開帳(それぞれの秘仏も50年ぶりとかだし)でしかもこれは開帳の期間があさってまでってことで行くしかないのである。

但し、僕の計画はただクルマで回るんじゃ面白くないってことで、近隣の道の駅にOUTBACKを停め、そこから湖東三山自然歩道に沿ってきままにサイクリングという“野遊び”寄りのプラン。対して、ともちゃんの計画は、先日のお買い物で手に入れたお気に入りのファッションに身を包み、ブラウンのオシャレなブーツとか履いて(もちろん僕にも“ちょいワル”オヤジ風のツイードのジャケットなんかを着せて)、いつもとはひと味もふた味も違うお洒落でアダルトなデート...行き先が同じでも全く正反対のプランに笑っちゃうふたりだ。
『あ、いいのいいの、アナタのお休みだから...。』などと言っちゃった手前、結局はいつもと同じようにオムツみたいなパッドの入ったサイクリングパンツとファイントラックで出発(笑)。


コスモス畑の前をゆく

我が家から1時間ちょうどで道の駅「あいとうマ−ガレットステ−ション」に到着。すぐにカーゴルームから2台のPEUGEOT Pacifc18を下ろし、慣れた手つきで組立ててサイクリングのスタートだ。(10:07)
実際のところ、レンタサイクルがあるぐらいだから奈良の山辺の道みたいな場所だろうって勝手に決め付けて全く予備知識がないままやってきたわけだけど、奈良のように自転車専用道路、しかも舗装の色まで変えてあって迷いようがないほどに整備されてるわけもなく、絵地図とGPSのシティマップだけが頼りの心許ない状態。それでも道路標識を逐一確認しながら、まずは百済寺へと向かう。道の駅を出てしばらくはフラットだった道が、百済寺が近づくにつれてひたすら上り坂が続く。いきなりヒィヒィハァハァ...早くもメゲそうになる。スタートから約30分、4.0kmほど走ると百済寺・赤門に到着(10:37)。


こうやって立ち木に2台を固定

駐車場までにこんな素晴らしい参道が!

湖東三山随一の古刹・百済寺の創建は606年。その名の通り、聖徳太子が渡来人たちのために建てたと伝えられている。現在は幾つかのお堂が残るだけだけど、平安末期から鎌倉時代の最盛期には1000もの坊が立ち並ぶ大寺院だったそうで、実際、赤門から本堂までは直線距離で600mオーバー(!)の参道の両脇にある段々畑のように坊跡遺構が、その名残りを留めている。赤門前の立木にワイヤーロックで自転車を停め、僕らは参道を歩く。間もなく朱塗りの「極楽橋」を渡ると本堂まで参道の両側には延々と「石垣参道」とルイス・フロイスが「地上の天国 一千坊」と絶賛した「僧坊」の遺構が左右に見える。


木漏れ日の中、石垣参道を山門へ

大わらじの掛かった山門

参道を歩くのは僕とともちゃんだけ...というのも、クルマでここを訪れる人は表門直下の駐車場まで一気に上がってしまうので、この長くて素晴らしい参道の存在すら気付かないのだ。何だか得した気分で僕らは木漏れ日が美しい表参道を表門へと進む。
駐車場やトイレ、売店のある表門で拝観料を払い、石段を上って一対の大草鞋が吊り下げられている仁王門へ。ここから本堂へは間もなくだ。


秘仏「十一面観世音菩薩」開帳中の百済寺本堂

素晴らしい庭園を楽しむともちゃん

本堂に鎮座する本尊「十一面観世音菩薩」(全高3.2m)は聖徳太子が立木のままで刻んだと伝えられることから別名「植木観音」とも呼ばれ、1951年以来55年ぶりのご開帳ということで、おそらく拝むことが出来るのは僕の一生で一回のこと。秘仏をここで語ることは避けるけど、感じるとことの多い魅力ある仏像だった。
庭園本坊で美しい庭を楽しんだ僕らは、再び涼やかな秋の風が心地よい表参道を散策しながら赤門に戻り、自転車に跨がって次なる目的地・金剛輪寺へと向かう。


坊跡遺構が続くこの参道を独り占め(ふたり占め)は実に素晴らしい

海抜350mの百済寺から一直線に伸びる舗装路はクルマの往来もほとんどなく、気持ちの良い真直ぐなダウンヒルが楽しめ、GPSメーター読みで56km/hを記録!それでも先行するともちゃんに引き離されるほどなので、彼女はどれだけ飛ばしてたのだろう?(笑)


百済寺から時速50km overで一気にダウンヒル!

ダウンヒルを楽しんで名神高速の下をくぐったところで右折。ここからはとても長閑な田園風景の中を進む。一直線で平坦な農道は行き交うクルマも少なくて、とてもリラックスできる良い道。そんな雰囲気とは少し場違いな感じがするホテル・クレフィール湖東の前を通り、祇園神社へと右折。時折現れる段差は自転車を担いで上がって里山の中を縫うように湖東三山自然歩道で金剛輪寺へ。


ホテルクレフィ−ル前の農道をひたすら北へ
クルマのほとんど走らない一本道

上:祇園神社から湖東三山自然歩道に入る
下:金剛輪寺前に自転車を停めて...

少し急な坂道を上ると、正面に観光バスがずらりと並ぶ大きな駐車場、そして道の左側に赤い提灯が架かった金剛輪寺の山門・黒門が見える。黒門前にある湖東三山自然歩道の看板に自転車を縛りつけ、黒門をくぐって山内へ。観光バスが動き始める時間帯なのだろうか?百済寺よりもずっと参拝客が多い参道。黒門前には地蔵茶屋なる土産物店、精進料理を食べさせる華楽坊や軽食が味わえる豆の木茶屋などもあって、静かな古刹というよりはどこか観光地っぽい感じがする。


黒門前にて

千体地蔵尊の立ち並ぶ参道を進む

ただ、参道の両脇に立ち並ぶ千躰地蔵尊は独特の雰囲気で、国宝の本堂にはご本尊である秘仏「聖観音」がご開帳中。(こちらは2000年にもご開帳があったらしいので6年ぶり)奈良時代の高僧である行基菩薩が彫刻した際、木肌から一筋の血が流れ落ちたという逸話のある観音像で、その時点で入魂、開眼と判断、粗彫りで未完成のまま安置されたのだそうである。


始まりかけた紅葉と三重塔(待龍塔)

そんな逸話から「生身の観音」と呼ばれる観音像どちらかというと仏教的というよりヨーロッパの教会で見た聖母マリア像との共通点を感じるのが少し奇妙な気がした。(あとでともちゃんのブログを読んで知ったんだけど、これは彼女も同じ印象だったみたい。“血”を流したという逸話がヨーロッパのキリスト教系のドロドロした怖い感じのマリア像を連想させたのかもしれないな...)


本堂では秘仏「聖観世音菩薩」開帳中
(写真は国重文・待龍塔)

上:二天門(国重文)から本堂へ
下:豆の木茶屋で昼食

本堂の後は山の中腹にある三重塔(待龍塔)を見学し、国指定名勝でもある庭園を散策。ちょうど昼時になったので山内にある豆の木茶屋で「僧兵うどん」のランチ。これが、山菜のてんぷらやら卵やらが入ってなかなか豪華で美味しい!こんにゃく田楽も注文し...そよ風が吹く快適なオープンエアなキャフェェ〜な雰囲気(笑)がなかなかのものであった。


金剛輪寺からはダートの湖東三山自然歩道をゆく

金剛輪寺を後にした僕らは再び自転車に跨がって、次なる目的地・西明寺を目指す。素直にR307に戻ればいいのに、車道を嫌ったともちゃんの提案で湖東三山自然歩道のダートへ進む(笑)。舗装路用のPEUGEOT Pacificでダートってのは実に乗りづらく、こんなことならMTBで来れば良かった!なんて後悔するけど後の祭り。ガタゴトギシギシ里山の田んぼ道を漕ぐ。こんな場所を自転車で走るアベック(笑)が珍しいのか、農作業中のおばあちゃんが仕事の手を止めて僕らをマジマジと見つめる視線がちょっと恥ずかしい。


動物避けのフェンスを通って進むと...

いきなりの階段で自転車断念

しばらく進むと自然歩道は里山の中へ。いきなり真新しいフェンスが僕らの行く手を遮っててびっくりするけど、野生動物避けのモノで自由に通行して良いって書いてあるので扉を開けて先へ進む。ところが、100mも進まないうちに道はいきなり階段に!(涙)
このルートを勧めたともちゃん。責任を感じたのか?自転車を置いて階段がどこまで続くのか偵察に走る。しばらくして戻って来た彼女によれば階段が延々と続き、その先は先週の三峰山の登山道みたいな感じなのだそうなので、ここでサイクリングを断念し、立木に自転車を縛り付けてここからはトレッキングとなる。


暗く険しい山道

これじゃ先週の登山と同じじゃん!

丸太を並べた階段を上がって山に入ると、これがもう実に暗〜い雰囲気の山。ほとんど歩く人がいないのか、地面の土にはうっすらと緑色の苔が生え、雨が降ったわけでもないのにジットリと湿った感じだ。この地面と夫婦おソロのジャングルモック by Merrellの相性が最悪で、普段何気なく履いているトレッキングシューズの有り難みを感じる。
間もなく「西明寺700m」の看板。えっ、こんな道を700m...つまり往復1400mも歩くの!?と少し憂鬱になる僕らだ。


ようやく西明寺に到着(二天門)

秘仏「薬師瑠璃光如来」に繋がる紐を掴んで祈る

でもしばらく歩いていると、平日の夕方にこんな場所を汗を流しながら歩いている中年夫婦の自分たちが可笑しくて...『オレたち何やってんだろ?』『イイ歳してねぇ〜』『中学生の息子がいるんだぜ!』『ウフフフ...』『ワハハハハ...』とシ〜ンと静まり返った森の中に夫婦の笑い声が響く(笑)。


三重塔、本堂ともに国宝

感じ方ひとつで森の印象がガラリと変わるもので、鬱蒼とした森も急な木製階段もなかなか良い感じに見えてくる。しばらくお喋りを楽しみながら歩くと鐘の音がゴ〜ン!おおっ、西明寺だぁ!唐突に森の小径が途切れ、西明寺の駐車場に出る。
西明寺は平安時代初期の創建と湖東三山では最も新しい寺ながら、源頼朝が戦勝祈願をした寺としても有名で、信長の一連の焼き討ちにもかかわらず、我が国で最初の国宝として指定された本堂、三重塔が現存。ほとんどの仏像や建物が重文という湖東三山随一の見どころが多い寺である。しかも山門の真下を名神高速が通っている(トンネル)という珍しいロケーション(笑)。
ここは住職一代に一度(今回は50年ぶり)、秘仏「薬師如来像」をご開帳するということで、本堂へ。

バスツアーの観光客が少し減ったからか、とても静かな雰囲気の中でじっくりと拝むことができてヨカッタ。

西明寺参拝を以って今回の湖東三山秘仏巡りは終了...でもまだここから自転車を置いた森の入口まで参道を加えると1.2km、そしてそこからOUTBACKを停めた道の駅・あいとうマーガレットステーションまでのサイクリングが待っているわけで、ここでグズグズはしてられないっ!
早足で山を駆け抜け、自転車に跨がり、どこまでも続くまっすぐな横道をGPSが導く最短距離ルートに従ってひたすらペダルを漕ぐ。
夕方になって吹き始めた追い風にのって順調に進む僕ら。3画面表示に切り替えたGPSに表示される速度計は常に30km/hオーバー!前をゆくともちゃんのキャップが飛んでストラップで繋がった背中ではためいている状態のまま走り続けること30分で道の駅に到着(早い!)。


畑の真ん中に立つ柿ノ木の前で


どこまでも平らな湖東平野

16:00前ってことで子供たちが帰宅するまではあまり時間はないんだけど、それでもレストランでケーキセットを楽しみ、この道の駅一番のウリである「ラプティ」のジェラ−トを食べ、その上この地域の特産品のドライフラワーを山のように買い込んで、ようやく湖東の地を後にする。

『なんだかワカンナイうちに野遊びになっちゃったわね。』
『ワハハ...ホンマホンマ。結構疲れたよ。』
『でも何だか楽しかったわね。とんでもない山に入っちゃったりして。』
『何もきれいな恰好でお上品に過ごすばかりが大人のデートとはいえないんじゃないかな?』
『そ。若い子しかやらないようなバカバカしいことを大マジメに楽しめるって、素敵な中年かも。』
『しかも、夫婦でね。』


コスモス畑が美しい

最後はケーキセットってのが最近の定番

PEUGEOTの悪名高い堅い皮革サドルのせいで夫婦揃って“デリケートな部分”に痛みを感じつつ、水平対向6発3リッタ−エンジンの音が微かに響くクルマを東に向かって走らせながら、楽しかった一日...そしてこれまでのふたりの日々ををあれこれ語り合う僕ら。
出会った頃のふたりは若くて貧しくて、ふたりのバイト代を持ち寄って“一日の食費¥500生活”を2年間も続けたものだ。あれから20年が経ってさすがに¥500じゃなくても暮らせる身分にはなったけれど、それでもあの頃と同じように自転車をキコキコ漕いでウヒャウヒャ笑いながら一日を楽しく過ごせる幸せ...ジジイとババァになってヘロヘロになってもこんな時間を持てるといいよね...そんな話をしつつ“子鬼の居ぬ間に...”第13弾は、こんな風に終わりを告げた。

さて次はどこ行こう?

 

October.2006 MENU

 

 

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