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  10月18日 三峰山登山(三重・奈良県境)

  


山頂から室生火山群を望む

子鬼の居ぬ間に...#12

ソロも楽しんでるカヌー以外、我が家の野遊びは家族全員で行動することが多いのはご存知の通り(笑)。特に登山とかトレッキングとかは“子鬼の居ぬ間に...”の場合を除いて、家族の予定が合う時はほとんどが家族4人で楽しむことにしている。その理由は、大人の目、子供の目、男の目、女の目...ひとつの景色を4人の違う目で見ることで4倍楽しめることを知ってしまったから。僕だけだったらただ単に“あぁキレイだなぁ〜!”って感じるだけの山で、Masaは山の名前を列挙してくれるし、Mamaは美しい花を見つけてレクチャーしてくれるし、Azuはカワイイ木の実をどこからともなく探して来る...興味の対象が違うことで4倍楽しめるのがファミリー野遊びの素晴らしさだと思う。
さて、そんな我が家の野遊びだけど2002年はほとんどともちゃんの姿がない。それは彼女が2001秋のいも掘りを最後にそれから一年間ずっと入院してて、外泊許可が出た時だけ家に連れ帰って無理のない程度の野遊びを楽しんでいたからだ(もちろん安静&自宅から出ないようにと釘を刺してたお医者様には当然ながらナイショでね...笑)。ただ、それ以外の場合、つまり彼女が病院にいる間に子連れ狼...要するに僕と子供達だけで行ったフィールドも幾つかあって、家族の会話の中で話題に上った時、『ワタシはそこ行ってないわ。』という寂しげな表情をすることがあった。
そんな辛い1年間から4年が過ぎ、じゃ、そんな場所を今度は夫婦で訪ね、ともちゃんにも体験を共有してもらおうと始めた“リベンジ野遊び”もはや4年目。残るはついに最後の一ケ所!そんなわけで、今日は“子鬼の居ぬ間に...”シリーズ第12弾として、三重・奈良県境にそびえる三峰山への登山を決行することになった。


登尾コースはその名の通り尾根道が続く
(杉木立から漏れる陽光)

上:林道終点の小屋をスタート
下:杉の美林をゆく

いつものように子供達を学校へ送り出してから、さっさとお揃いのファイントラックに着替え、OUTBACKにザックとトレッキングシューズを積み込んで8:30出発。故郷の山里近くを通って奈良県・御杖村へと向かう。御杖村のみつえ青少年旅行村に着いたのは一時間後。林道の終点にある立派な山小屋の駐車場にOUTBACKを停め、そこから登尾コースと呼ばれる尾根伝いの登山道を登る。


若干の靄が掛かる森の中に射す光線が美しい

スタート直後の木製階段を上がると、そこからしばらくは鬱蒼と繁る杉の美林が続く。森の中はうっすらと靄がかかっているからか、杉木立から漏れる光がいく筋もの線となって暗い森を照らしている光景が美しい。光と影が縞模様になっている静かな森をトラバースして進み、尾根に達するところで立派なクリの木があり、その下にベンチが設えてあるので、ここで初めての休憩を取る。木立の間からは、三峰山の北側に続く室生古火山群の特徴的な稜線がくっきりと見え、とても良い眺めである。


尾根をはさんで人工林とブナの原生林が広がる

樹林の間から覘く倶留尊山

落ち葉を踏むカサカサという音が心地よい

空気までが淡いブラウンに染まる

尾根道に入ると右側が人工林、左側の崖が自然林という特異な環境となる。凛としたどちらかと言うと硬質(?)でモノクロな空気の人工林、ブラウンに染まってフワッとした温かい空気に満ちる自然林...やっぱり自然林の方が居心地が良いなぁって実感する。土や岩がむき出しだった杉木立を抜け、ブナやクヌギの森に入ると地面は落ち葉に覆われ、歩みを進めるたびにカサカサと心地良く乾いた音が響く。


雰囲気の良い避難小屋と枝ぶりが素晴らしいブナのマザーツリー(樹齢約300年)

間もなく右手にログハウス風の避難小屋、そしてその前に素晴らしい枝ぶりの巨木が現われる。樹齢300年...この森のマザーツリーと言っても差し支えがない存在感のある巨木である。(4年前はMasaがサルのようにこの木に登ってた)登山道を逸れて、避難小屋前の広場にあるベンチでザックを下ろして休憩。避難小屋は中央に石を並べて作ったファイヤープレイス、その右側に十数人が同時に寝られるほど広いスノコ状の台があって、冬季の霧氷の時期の賑わいを彷彿とさせる。


ログ風の小屋はファイヤプレイスと宿泊用の台がある

小屋の前のベンチに腰掛けて休憩


シロヤシオとヒメシャラの明るい森をゆく

しばらくここでチョコレートなど甘いものを食べながらのんびり過ごした後、さらに登り続けること15分ほどで三畝峠、ここからは稜線上の明るい森へと進む。青空を背景に生い茂るシロヤシオとヒメシャラの低木に覆われたアップダウンの少ない稜線上は、この山のハイライトのひとつ。落ち葉を踏みしめて歩いているだけで、心の底から愉快な気分になれる素晴らしい森の小径である。小さなピークを過ぎて一旦下り、次の坂を登り切ると、そこが山頂。あっけないほど楽に三峰山(1253m)に登頂を果たす。


歩いてるだけで楽しい気分になる理想的な森

三峰山(1235m)登頂!

展望所から鎧岳・兜岳〜倶留尊山〜大洞山のパノラマを楽しんだ後、芝生に覆われた山頂広場の真ん中でPRIMUSを取り出して、いつものラーメンランチ。無風晴天の山頂は長袖では暑く半袖ではヒンヤリするという過ごしやすい気温で、穏やかな日差しを浴びて思わず居眠りが出るようなノホホンな雰囲気だ。


山頂から望む曽爾の山並み


 

夫婦で山上お昼寝ってのも悪くないけど、17:00までに帰宅しないとマズいので、1時間ほどを山頂で過ごした後、八丁平方面へと下山を開始する。10分ほど疎林の間を下ると突如ススキが揺れるなだらかな広場に出る。ここが八丁平である。緩やかなカーブを描く稜線には一面に陽光を浴びて黄金色に輝くススキの穂が揺れ、その向こうには始まったばかりの紅葉が目に鮮やか。こんなに素晴らしい景色をふたりで独占できるなんて!とても幸せな気持ちだ。


山頂からススキの穂が揺れる八丁平へ

八丁平から三重県方面へと少し下りてみる

このまま八丁平から登尾登山道に戻るのはもったいないので、県境を越えて三重県方面へと続く登山道を散策。さすがは南斜面ってことで、登山道の両側は真っ赤に熟した木の実やトリカブトの青い花などとても鮮やかな色調に満ちている。GPSによれば八丁平から約1kmほどの樹林帯に入ったところでUターンして、再び八丁平に戻り、穏やかな森を抜けて三畝峠で登尾登山道へと合流、往路と同じコースを下山する。


広々とした平原に吹くそよ風が気持ち良い


美しい低木のトンネル

八丁平は自然の庭園のように美しい

陽射しを燦々と浴びて明るい雰囲気だった南斜面から峠を越えて北斜面に進むと、地面に伸びる影が長いこともあってか、14:00だというのにもう夕暮れの雰囲気。往路は僕ら以外誰もいないことが楽しく感じていたけど、復路は同じ状況なのに少し寂しいというか心細い雰囲気が漂う。

『何だかクマでも出そうな雰囲気だよなぁ。』『やめてよぉ、怖くなっちゃうじゃない!』

三峰山は奈良県境・中央紀伊山地の最深部にある山で、最近そのずっと下の山麓にあたる我が町の森で熊(ツキノワグマ)の目撃情報が数多く報告されていることから考えるとここにも熊がいるのは絶対なわけで、いつ出くわしても不思議じゃない状況にあるのだ。(幸い、地面の足跡も木の幹の爪痕も発見出来なかったけど)


クマザサの道を通って紅葉の森へ

この季節の山に入るからには当然の装備として、僕の腰にはいつものナイフ、そしてザックの外ポケットには熊避けマスタードスプレーを常備しているけど、もし熊と出くわし、不幸にも襲い掛かって来たら、結局は小手先の道具はあまり役に立たず手近な棒を振り回して闘い、そんでもって当然負けて、ともちゃんに覆い被さって捨て身で守ることぐらいしか出来ないのではないか...そんな風に思うのだ。


木々の間から見える鋭峰・高見山

再び紀伊半島独特のムンクの森へ

そんな手も足も出せない僕が出来ることは、ただひとつ。要するに熊に会わない(遭わない)よう、熊に存在をアピールしてあちらの方から避けてもらうようにすること。具体的に挙げるなら長野県森林組合公認熊鈴(良い音がします)をチリンチリン鳴らすのもひとつだし、幸い人喰いヒグマがいない紀伊半島では匂いの強い香水を使うこと、そして喫煙者がいると熊との遭遇回数が極端に減るというデータもある。


南斜面は明るく暖かで柔らかな森の小径 

北斜面はすでに夕方のような光

でも一番簡単で一番効果的なのは...

『クマ?アハハ...大丈夫よ!ワタシたちみたいに大声でバカ話しながら歩いてたら、クマが呆れて出てこないわよ、きっと。』

そーだよな!並んで山を歩きながら、誰も聞いてないのをいい事に夫婦でバカ話でゲラゲラウハウハ笑い過ぎて苦しぃぃ〜!...マジでコレ、クマ避けに意外と有効なのかもしれない。


ホンドリスに出会った森

そんな話をしながら歩いていると、僕らの先に小さな小動物がいるのが目に入る。フサフサしたグレーの体毛、長くて太い尻尾...おおっ!ホンドリスだぁ!いつもならこんな野生動物を真っ先に見つけるのはともちゃんの方だけど、今日は僕が先に発見。さほど僕らを警戒する様子も見せず、僕らが近づいたぶんだけ登山道をチョコマカ走る感じで、相当長い時間その可愛い姿を観察することができた。


最後の階段を下りるとゴール

ゴールから望む三峰山

ブナの森が杉の人工林に変わり、休まずに下り続けると間もなく目の前にスタート地点の山小屋とOUTBACKが見えてくる。15:00ちょうど、ゴール。実にキレイな山小屋でひと休みした僕らは帰り道にある御杖温泉姫石の湯でまったりとした時間を過ごし、最近恒例になりつつあるケーキ屋に立ち寄って16:30に帰宅した。(慌ただしいけど、この時間制限があるってのが逆に楽しい!)


結局登山道は僕らだけ。停まってるのもOUTBACKだけ。

小屋の内部。焚火しながら一晩過ごせたらなぁ... 

たった1200mの低山で往復6.5km、4時間程度の山歩き。ここのところ続いてた日本百名山の山々と比べると退屈な山歩きにも思われがちだけど、秋晴れにも恵まれ、山頂から眺めた室生火山群の特徴的な山並みなどの眺望や一面のススキヶ原や紅葉は第一級の素晴らしいものだったし、何と言っても山頂で老夫婦に会った以外は登山客がゼロ!要するに僕らだけの山を堪能することが出来るのは三峰山ならでは。オジサン&オバサンが夫婦でお喋りを楽しみながらのんびり過ごす秋の一日にはぴったりのお山であった。

 

三峰山の花々CLICK

Photo by aki with RICOH Caplio 500G wide

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