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 July.2006 part.3

 

 

 

 

  

 


雲上をゆく(伊吹山登山道分岐付近)

 

7月12日 まさに「花の百名山」伊吹山登山

子鬼の居ぬ間に...#8

もう何度キャンセルになったかも忘れちゃうほど、チャンスがことごとく潰れてた伊吹山に今日ようやく行くことができた。
伊吹山という名前を聞いて即座に場所を言い当てられる人は中京〜関西の人で、決して全国的に有名な山ではない。新幹線で東京から大阪に向かう時、名古屋と京都の間で右手に見えるどっしりとした山なんだけども、滋賀県の最高峰ながらその標高はたった1377m。冬ならば名古屋も京都もピーカンなのに何故か3000m級の高峰のように真っ白に雪化粧してる山...それが伊吹山である。滋賀方面から見ると独立峰だけにどっしりとした山容が印象的ではあるけど、それ以上に山腹を大きく抉り取るように露出したセメント採取場の傷があまりにも痛々しく思え、悲しい気持ちにすらなる山なのである。
そんな伊吹山に登りたい!何故だったかそう感じたのは去年のこと。以来、事あるごとに伊吹山について様々な側面から調べを進めてきたわけなんだけど、知れば知るほどにこの山は特別だと感じるのである。僕がネットで調べて知りうる限りの伊吹山の特別さを挙げるときりがないけれど...

1. 日本で三番目に山頂での風が強いこと
1位はもちろん富士山、2位が蔵王、そして3位がたった1300mちょいの伊吹山なのだ。伊吹山は若狭湾から伊勢湾に向かう季節風の通り道の真ん中に位置する独立峰ゆえ、気象条件がととても厳しいのだ。その風の強さは日本書記にも登場し、イノシシに姿を変えたこの強烈な風は宝剣「草薙の剣」をすでに持たない日本武尊に瀕死の深手を与え、その命を奪ってしまったほどなのである(彼はその後我が家の近所で命を落とすことになる)

2. 伊吹山は赤道直下にあったらしいこと
伊吹山は大規模なセメント採取場があることからも判るように全山が石灰岩で出来ている。これは古生代二畳紀(約2億5千万年前)には、赤道直下の海底であり、その海底に降り積もった堆積物が石灰岩化したものだ。その証拠に山頂付近でウミユリやアンモナイトの化石が多く発掘される(*実際、山頂に展示してあった)し、海底火山の噴出物特有の岩石も多く露出している。つまり、伊吹山は赤道直下から数億年を経て太平洋プレートの造山活動によって押し寄せられ湖北に辿り着いたというわけなのだ。

3. 「さざれ石」の産地であること
現在我が国にある「さざれ石」(君が代に出てくる石ね)のほぼ100%が伊吹山産だという事実。さざれ石(学名・石灰質角礫岩=石灰石が長い年月の間に雨水で溶解され、その時に生じた粘着力の強い乳状液(鍾乳石と同質)が次第に小石を凝結して徐々に巨石となり、浸食作用により地表に露出したもの)ってだけで、何やら特別な感じを覚えるのは僕だけか?

4. 1300種類もの植物種が存在していること
北海道から沖縄までの日本全国で約6000種のうちの実に1300種!1/4近くがこの一つの低山に自生しているのだ。しかも高山帯に似た特殊な気象条件で、3000m級の山岳にしかないはずの高山植物が350種以上自生していて、そのほとんどがこの山を南限としている。しかも「イブキ...」と名の付く伊吹山固有の花も多い。

5. 歴史の舞台であること
前述の日本武尊も神話も然り。織田信長は、この山の西麓・安土に城を構え、強大な仏教徒の軍事力に対抗するためキリスト教(カトリック)の布教を認めた。その際、カトリック修道士たちに、伊吹山を解放して米よりも付加価値の高い薬草を育てさせたのだという。あの信長も伊吹山の特別さに気付いていたのだ。そしてこの山の南麓はあの関ヶ原古戦場。当日は伊吹山らしく一間先も見えない濃霧だったとか。


OUTBACKを停めゴンドラ乗り場へ

ゴンドラで3合目へ

少し脱線してしまったけど、こんなわけで僕の “伊吹山熱”は高まるばかり。ようやく訪れたチャンスに朝イチに出発したい気持ちを抑え、親としての務めをちゃんと果たし、子供たちを学校に送り出してから準備を開始して8:30に出発だ。
一路、ゴンドラ乗り場がある伊吹山スキー場へ。本当は標高210mの山麓から頂上を目指したいところだけど、子供たちが帰宅するまでには帰らないといけない「子育て“仮”卒業」の僕らにはあまり時間がない(涙)。そこで標高730mの3合目までゴンドラで上がって、そこから1377mの頂上を目指すという何とも“なんちゃって”な登山なのである。
今回はかなりメジャーな山、しかも山頂に数軒の山小屋がある上に標高差は650m足らずということで、かなりの軽装。関係者以外通行禁止の大きな看板があったので、その直前の観光協会前駐車場にOUTBACKを停め、徒歩でゴンドラ乗り場へと向かう。(乗り場前には広大な駐車場あり。どうやら道を間違えた模様)


3合目(765m)

牧場のような中をスタート

平日、しかも雨模様ということで登山客は皆無だからかゴンドラは停止中で、僕らが往復¥1500のチケットを買って乗り場に入ったところでロープウェイが動き始めたほどである。眺望の良い現代的なゴンドラに乗ること10分で僕らは標高730mの3合目駅に到着。牧場のような雰囲気の草原を登山道の標識に従ってスタートする(10:55)。
登山道というよりも散策路のような道の両側には今が盛りのユウスゲの群生地。但しユウスゲはその名の通り夕方から夜にしか花を開かないので、黄色い蕾のようにしか見えない。


凄いスピードで流れる雲に呆然と立ち尽くすともちゃん

 


6合目より上は厚い雲に覆われている

スキーリフトの降り場付近、少し傾斜が強くなったところで牧草地から登山道らしい砕石の道となる。
ここまで進んだところで空から雨が落ち始め、首から提げた一眼レフOLYMPUS E-300を慌てて小ぶりの防水バッグに収めてザックにしまい、代わりに防水カメラRICOH Caplio400Gwideを取り出す。
レインウェアを着るほどでもないけど、何も着ないと少しづつ濡れてゆく...中途半端な雨である。今回も軽装ながら全て濡れても保温性の落ちない速乾素材のテクニカルウェアを着ているので濡れは怖くないけれど、せっかくの花々を一眼レフで撮ることが出来ないのは非常に残念だ。
そんなシトシト雨に相棒のともちゃんはちょっとご機嫌斜め。しかも山を見上げると6合目あたりから上は完全に雲の中...渦巻く雲がかなり激しく雨が降っている感じにも見える。

5合目には使うのにかなり勇気が必要そうなトイレ(笑)と多くのベンチが設えてあるけど、登り始めたばかりの僕らには用がないのでそのまま通過。
浮かない表情のともちゃんとの微妙な空気を感じながら、しっかり幅のあるとても歩きやすい登山道を進む。
『ねぇ、どうする?』
『どうするって何を?』
『だからこのまま登るのかなって思って...』『え?登山中止するって意味?』
『そうは言ってないけど...』
こういう場合の彼女は内心“もう止めて帰りましょう”って思っているに違いないんだけど(笑)、EZwebで付近の雲の流れを見る限り危険な雷雨の兆候はなく、ただ雨がシトシト降ってるってだけで危険なわけでもないのに帰るわけないでしょう!(笑)


登山道脇には花が絶えない

『あ、そう。じゃぁ問題ないじゃん、このまま登ろうよ。』とそのまま登り続ける。

ところが、彼女の表情が浮かない感じだったのは、6合目まで。
『きゃぁ〜!イブキトラノオよっ!』
『カワイイィ〜!イブキジャコウソウの群生だわぁ〜!』
6合目を過ぎた辺りから、登山道の両脇に咲く花々...しかも伊吹山でしか見られない固有種の数がグンと増え、ただの山歩きに宝探しの要素が加わって、ともちゃんはさっきまでの憂鬱な表情はどこへやら(笑)。


花の向こうで戯けるともちゃん

幻想的な風景の中を進む

その上、僕らが登るにつれて、まるで僕らが押し上げているかのように雲のラインも同じスピードで上昇してるみたいで、雨が強くなるどころか完全に雨も上がって、振り返ると下界には関ヶ原から琵琶湖に掛けて広がる大パノラマが楽しめるのだ!僕らの進む登山道は雲が晴れているけど、東斜面と西斜面は雲が猛烈なスピードで斜面を駆け上がっていて、霧の中にぼんやりと浮かび上がる高さ2mにもなるシシウドはまるで人影と見間違うほどの存在感。
『何だかワタシたちってすごくツイてるわねぇ〜!』うんうん、ツイてると思うよ。こんな草原みたいな南斜面で7月の強烈な日射しを浴びたら、体力の消耗が早そうだもん。


時折立ち止まって野花を観察する

登山道脇に咲く美しく可憐な花々に目を奪われて進むうち、すぐに7合目を通過。この辺りからはいよいよ雲の中に突入し、極端に視界が悪くなる。花々の写真撮影のたびに立ち止まる僕はともちゃんより少し遅れ気味。先行するともちゃんの姿が深い霧の中に消えることもしばしばで、一瞬不安を感じることもあるけど、登山道はあくまで明瞭で、しかもザックのベルトに固定したGPSは確実に衛星を9つも捕捉し10m等高線入りの1/25000地形図に僕らの現在地を投影し続けている。


草原のような斜面

8合目からは登山道が少し険しくなる

8合目からはクネクネと登山道の蛇行が大きくなり、路肩に崩落している箇所もあって、少しばかり注意が必要になる。霧の中から『キャ〜!早く来てぇ〜!』という悲鳴が上がるたび、滑落でもしたか!と慌てて走って追いつくんだけど、たいていはカワイイ花を見つけた喜びのあまりあげた歓声(涙)。そんなことを繰り返しながら、僕らはグングンと高度を稼いで行く。


いよいよ雲の中へ

霧の中に9合目の標識が浮かび上がる頃には視界は20mほどとなり、登山道も不明瞭になり始める。GPSに目を遣る回数が増えた頃、乳白色の霧の中に人の声が響く。ん?何だ?フェードインのように浮かび上がる人影。『あの〜スミマセン。駐車場はこっちで良いんですかね?』革靴にスラックス、スカートと普通の恰好のオジサンとオバサン。『いえいえ、この道は登山道ですよ。』ドライブウェイで山頂にやってきた観光客がいるってことは、どうやら山頂の遊歩道が近いようだ。


雲の中へ姿を消すともちゃん

9合目の標識。視界はほとんど利かずGPSが頼り

間もなく霧の中に登山道と遊歩道の分岐を示す標識が現れ、僕らは標識に従って遊歩道を進む。5分ほどで遊歩道が広場に出て、ぼんやりと霧の中に浮かぶのは伊吹山寺山頂本堂「覚心堂」。ふたり揃ってお参りを済ませ、立ち並ぶ山小屋のソフトクリームの看板にそそられつつ、狭い通路を抜けて山頂方面へと進む。


霧の中に浮かぶ伊吹山寺山頂本堂「覚心堂」

どこが山頂?アザミのチクチクを避けつつ山頂へ

ところが!あまりに視界が悪いために山頂の全容を掴むことが出来ず、あと数十mを残して山頂を求めてウロウロ(笑)。ミヤマコアザミの葉っぱがチクチクする獣道みたいなトレイルをGPS片手に進み、ようやく一等三角点に到着。伊吹山(1377m)登頂!である。


伊吹山頂(一等三角点)

な〜んも見えないミルクポットの中で泳いでるような状況の山頂を後にして、山小屋脇の広場に並ぶピクニックテーブルに腰掛けて、おにぎりのランチタイム。霧のせいで何の眺望もないのが残念だけど、その代わり激しく流れる霧の濃淡が目まぐるしく変化し、ほんの3m先のアザミが霞むこともあれば数十m先のニッコウキスゲがぼんやり浮かび上がる瞬間もあって、実にダイナミックな風景の変化に感嘆の声を上げる僕らだ。


ヤマトタケルの像が立つ観光用山頂

山頂のベンチでランチタイム

出来れば山頂の遊歩道を隈なく歩き回ってお花畑をじっくり観察したいとこころだけど、Azuの寂しがる顔が思い浮かんだ僕らにはあまり時間がない(涙)。山小屋で伊吹山天然水で作ったソフトクリームを味わい、Azuのお土産用にニッコウキスゲのピンバッチを買い求めて下山開始だ。


ニッコウキスゲの群生

山頂遊歩道を散策後、下山開始

復路も往路と同じく霧に包まれる滑りやすい遊歩道を慎重に歩く。登山道の真ん中に咲いたミヤマコアザミを避けようとしてつまづくともちゃんの姿にクスッ!(笑)。笑いをこらえつつしばらく進むと登山道への分岐ポイントに到着。視界数mだった往路よりは霧も薄らいで、伊吹山の美しい稜線とそのラインに続く下界の平野がぼんやりと浮かぶ様は実に雄大な光景だ。
上りでは見上げる形だったのでどうしても下草の陰に隠れていた花々だけど、下りでは誇らしげに咲く色鮮やかなその花弁を容易に見つけることが出来るのが嬉しい。


登山道のミヤマコアザミと霧の中に消えるともちゃん


雲上のお花畑をゆく

時折休憩を入れながらの下山

9合目を過ぎたあたりで、僕のトレッキングシューズに異変発生!
段差を下りる時、着地の瞬間サイド方向に何やらグニャリとよじれるような感覚があり、立ち止まって右足を見てみると、なんとトレッキングシューズのビブラムソールが剥がれ始めているではないか!しかも左も同様に接着部分のラバー全周にわたって亀裂が入り、小石が挟まっているし。今朝出発前に点検した時は何の異常もなかったのに...2002年10月、三峰山登山前に購入して以来、3年あまりずっと僕の身体を支えてくれたZamberlanのトレッキングシューズ。


ホワイトアウトながら一本道で迷うことはない

雲が切れて一瞬の眺望が楽しめる

僕の野遊びのメインは水辺なわけで、この靴でのこれまでの山行は40回ほどと少ないし(ほとんどがハイキングレベルの山ばかり)、充分なケアとは言えないものの使用後は毎回ブラッシングと陰干しを励行し、普段は風通しの良いカヌー倉庫の棚に保管してたので壊れるのはちょっと早過ぎるかな?という印象である。
ただ、小学校3年生の時に初めてトリコニーと呼ばれる鋲付きの青いキャラバンシューズを買ってカチャカチャ鳴らしながら歩いて以来、これまで10足近い軽登山靴を履き潰してきたけれど、靴擦れが一度もなかったのはこのZamberlanだけ(たぶんメーカーの足型は僕の足にとても良く合ってるんだと思う)。


イブキトラノオが揺れる

 

大抵の軽登山靴は足首の前後の自由度が小さく、つま先を下げて接地面積を出来るだけ大きく着地することが出来ないものが多く、特に下りでは踵から着地せざるを得なくなるわけで、仮にここでスリップすると後方に転倒することは必至。ところがこのZamberlanは左右方向は結構ガチガチでくじく心配はないくせに、前後方向に柔らかくソール全体で着地出来る、まるで運動靴のような自由度がある。僕みたいな“時々山歩き”な場合、耐久性に問題があったとしても履き心地が良ければノープロブレムだし...次もまたZamberlanかな?と思うのだ。


また雲の塊が駆け上がってきて視界を奪う

とにかくソールに異常がある靴での下山は危ないので、少し緊張しながら慎重に下り続ける。その間にも僕らの目を楽しませてくれる美しい花々。この時期の週末ともなると花を求める登山客が列をなす伊吹山なのに、今日は僕ら夫婦の独占状態。いつの間にやら“生”カッコウの声まで響き渡ってとても素敵な山歩きである。

15:30、3合目のゴールに到着。3合目で僕らを出迎えてくれたのは、朝は黄色い芋虫のように閉じていたのに、夕方近くなって見事に開いたユウスゲの群生!ソールの破損で少し気疲れした僕らの疲れも吹っ飛んでしまうような見事な咲きっぷりである。群生地の間に設けられた遊歩道を少しだけ歩いてユウスゲの美しい黄色い花を堪能した僕らは、ゴンドラに乗り込んで山麓へ。


3合目に到着。ちょうど8kmのお手軽登山

ゴンドラから望む琵琶湖と竹生島

OUTBACKに戻った僕らは、少し遠回りして道の駅でAzuとMasaご所望の伊吹山プリンをお土産に買い込んで、関が原〜いなべ市(旧・藤原町)〜四日市と続く快適な “紫陽花街道”R375〜R306で自宅へ。子供たちが帰宅する寸前に家に辿り着くことが出来た次第。

今回の伊吹山は5合目よりも上が雲に覆われて眺望を楽しむことは叶わなかったけれど、山肌から溢れんばかりに咲き誇る初夏の花々や草原のような山を流れる雲の壮大な光景を堪能することが出来て、僕らにとって実に印象深い山行となった。
『伊吹山ってサスガよねぇ〜!これまで登った山々の中でお花の素晴らしさはNo.1よ、No.1!』
またまたぁ〜ともちゃんはホレっぽいんだから!
あ、でも花の写真を500枚も撮ったのは伊吹山が初めてだよな。


伊吹山で見た花々CLICK


 コウゾリナ

クララ

キバナノカワラマツバ

アカツメグサ

キリンソウ

ヒメジオン

キツリフネ

カワラナデシコ

イワベンケイ

カラマツソウ

シシウド

クルマバナ

オオイヌノフグリ

シシウド

カタツムリ

イブキジャコウソウ

イブキジャコウソウ

イブキトラノオ

ヒロハシモツケ

ホオジロ

カノコソウ?

ヤマホタルブクロ

キバナノレンリソウ

ミヤマトウキ

ヤマアジサイ

ミヤマコアザミ

ニッコウキスゲ

ニッコウキスゲ

ミヤマキンバイ

カタツムリ

グンナイフウロ

オオバギボウシ

オオバギボウシ

クルマバナ

クサフジ

クサフジ

クサフジ&コウゾリナ

ルリトラノオ

コウゾリナ

ヤブジラミ?

イブキフウロ

アカツメグサ

エゾフウロ

ユウスゲ

ウツボグサ

テリハノイバラ

クサフジ

シシウド

Photo by aki with OLYMPUS E-300

 

 

 

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