7月12日 まさに「花の百名山」伊吹山登山
もう何度キャンセルになったかも忘れちゃうほど、チャンスがことごとく潰れてた伊吹山に今日ようやく行くことができた。
伊吹山という名前を聞いて即座に場所を言い当てられる人は中京〜関西の人で、決して全国的に有名な山ではない。新幹線で東京から大阪に向かう時、名古屋と京都の間で右手に見えるどっしりとした山なんだけども、滋賀県の最高峰ながらその標高はたった1377m。冬ならば名古屋も京都もピーカンなのに何故か3000m級の高峰のように真っ白に雪化粧してる山...それが伊吹山である。滋賀方面から見ると独立峰だけにどっしりとした山容が印象的ではあるけど、それ以上に山腹を大きく抉り取るように露出したセメント採取場の傷があまりにも痛々しく思え、悲しい気持ちにすらなる山なのである。
そんな伊吹山に登りたい!何故だったかそう感じたのは去年のこと。以来、事あるごとに伊吹山について様々な側面から調べを進めてきたわけなんだけど、知れば知るほどにこの山は特別だと感じるのである。僕がネットで調べて知りうる限りの伊吹山の特別さを挙げるときりがないけれど...
1. 日本で三番目に山頂での風が強いこと
1位はもちろん富士山、2位が蔵王、そして3位がたった1300mちょいの伊吹山なのだ。伊吹山は若狭湾から伊勢湾に向かう季節風の通り道の真ん中に位置する独立峰ゆえ、気象条件がととても厳しいのだ。その風の強さは日本書記にも登場し、イノシシに姿を変えたこの強烈な風は宝剣「草薙の剣」をすでに持たない日本武尊に瀕死の深手を与え、その命を奪ってしまったほどなのである(彼はその後我が家の近所で命を落とすことになる)
2. 伊吹山は赤道直下にあったらしいこと
伊吹山は大規模なセメント採取場があることからも判るように全山が石灰岩で出来ている。これは古生代二畳紀(約2億5千万年前)には、赤道直下の海底であり、その海底に降り積もった堆積物が石灰岩化したものだ。その証拠に山頂付近でウミユリやアンモナイトの化石が多く発掘される(*実際、山頂に展示してあった)し、海底火山の噴出物特有の岩石も多く露出している。つまり、伊吹山は赤道直下から数億年を経て太平洋プレートの造山活動によって押し寄せられ湖北に辿り着いたというわけなのだ。
3. 「さざれ石」の産地であること
現在我が国にある「さざれ石」(君が代に出てくる石ね)のほぼ100%が伊吹山産だという事実。さざれ石(学名・石灰質角礫岩=石灰石が長い年月の間に雨水で溶解され、その時に生じた粘着力の強い乳状液(鍾乳石と同質)が次第に小石を凝結して徐々に巨石となり、浸食作用により地表に露出したもの)ってだけで、何やら特別な感じを覚えるのは僕だけか?
4. 1300種類もの植物種が存在していること
北海道から沖縄までの日本全国で約6000種のうちの実に1300種!1/4近くがこの一つの低山に自生しているのだ。しかも高山帯に似た特殊な気象条件で、3000m級の山岳にしかないはずの高山植物が350種以上自生していて、そのほとんどがこの山を南限としている。しかも「イブキ...」と名の付く伊吹山固有の花も多い。
5. 歴史の舞台であること
前述の日本武尊も神話も然り。織田信長は、この山の西麓・安土に城を構え、強大な仏教徒の軍事力に対抗するためキリスト教(カトリック)の布教を認めた。その際、カトリック修道士たちに、伊吹山を解放して米よりも付加価値の高い薬草を育てさせたのだという。あの信長も伊吹山の特別さに気付いていたのだ。そしてこの山の南麓はあの関ヶ原古戦場。当日は伊吹山らしく一間先も見えない濃霧だったとか。
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