【宮川の観察】

自由研究を始める以前から気付いていたこと

宮川をカヌーで川下りしていていつも不思議に思うのは下流へ行くほど水が澄んで美しくなることです。また、水がきれいでついつい泳ぎたくなる淵は必ずと言ってもいいほどに大きな瀬のすぐ下流なのもとても不思議です。もしかするとそこに宮川の水質が保たれている理由が何か見つかるかもしれないので、実際に宮川に行って調べて見ることにしました。

普段、僕が宮川を下るのは粟生頭首工の下流にある七保大橋から伊勢市の度会橋までの中流域約30kmの区間です。七保大橋から田口大橋までの区間で淵の川底が見えることは年に何度かしかありませんが、中川大橋を過ぎた辺りから徐々に透明感が上がってきて、鮠川大橋のひとつ手前の浅瀬を超えると急に透明度が増します。特に鮠川大橋の淵は水深4〜5mの深さがあっても川底まですっきりと見渡すことができて、ここから久倶都比売橋までは宮川中流域で一番水がきれいな場所と言えるでしょう。久倶都姫橋を過ぎて砂利の採掘をしている内城田大橋までは少し透明度が落ちて、内城田大橋を過ぎるとまた急にきれいになります。そこから伊勢自動車道の橋までがきれいで、伊勢自動車道を過ぎると急に濁り、度会橋が近くなると海の匂いが混じって水は海と同じ感じになります。

 

【実際に川を調べてみる】(フィールドワーク)

調査はカヌーを使って川を下りながら行いました。川を調査するには川を歩くのが一番なので、最初はP.F.D(ライフジャケットのようなもの)を身に着けて泳いだり歩いたりしながら川の様子を観察しようと思ったのですが、すぐに疲れてあまり長い距離を調査することが出来ないので、歩くのと同じスピードで自由に動き回れるカヌーが一番適していると思いました。宮川は穏やかな川なのでひとりでも安全に下れますが、今年、僕は他の川で3回も転覆しているので今回は父と妹が遊びを兼ねて付き合ってくれることになってとても心強かったです。ただ、誰かに乗せてもらっていると川の流れが読めないし自由に行動出来ないので、3人とも自分のカヌーにひとり乗りで下ることにしました。
調査する区間はこれまでの経験から宮川の水が澄んだり濁ったりを繰り返す中川大橋から内城田大橋下流の宮リバー度会パークまでの約10kmを調査する区間にしました。

 

 


A地点

中川大橋→長原の左カーブ

中川大橋(A)から長原まではほぼ直線に流れるので水質に大きな変化はありませんが、右岸の立花の集落を手前あたりで左岸にこぶし大の石が集まった河原(B)が川にせり出して川幅を狭めます。これまで水深50cm以上あった川が浅くなり、小さな浅瀬になり、この浅瀬の直後に透明度が少し上がります。
左岸に長原の河原(C)を見て大きく左に曲がる部分は左が砂利の河原、右が岩場に続くテトラ護岸になっていて、いつもなら透明度の高い場所ですが、今日は右岸から流れ込む小山谷川が干上がっていて、川底に藻が生えていました。去年の台風の被害と三瀬谷ダムの水門故障が長く続いたために大量の土砂が流れ込んだために、本当は大きな粒の砂利のはずの川底が砂や泥がたまって藻が生える原因になったみたいです。


C地点手前


長原の左カーブ→鮠川大橋

長原のカーブからは両岸が岩壁になって、透明度の変化はありません。ところが、茶屋広の上流の鮠川大橋が見える場所でまず右岸の河原がせり出し、左岸の岩場に流れがぶつかるS字カーブの浅瀬(D)があり、カーブの入口と出口には1m以上の高さの差があるので水量が多い時は気を付けないといけない瀬です。この瀬を過ぎると、宮の透明度は別の川のように上がって、銚子川にも負けないほどの水質になります。
この大きな変化には何か秘密があるに違いないので、カヌーを岸に上げて(D)の入口と出口の川に潜って確かめてみます。ここに潜って気が付いたことは、浅瀬の入口と出口の水温が大きく違うことです。入口は川のどこもが生ぬるく、出口では水面近くも入口より冷たいですが、水深3mぐらいの川底はかなり冷たくなっていました。


S字カーブの浅瀬(D)   

浅瀬の出口下の川底を調べる

なぜ冷たいのか不思議に思ったので潜って川底を観察したところ、(C)では川底が細かな砂と泥だったのに、ここは玉砂利の川底になっています。そして、砂利を動かして少し川を濁らせたら、川底の方から濁りが消えてゆくという不思議なことが起きたので、川底にへばりついて観察したら、川底全体から流れを手で感じるほど冷たい水が湧いていました。


川底からの湧き水を確認する

父に尋ねると、こういう段差のある瀬の後は急に水温が下がり透明度が上がるので、自然の緩速濾過(かんそくろか)効果が生まれているのだろうと言っていました。瀬の入口の上流には流れの止まっている部分があって、そこから河原の地下をゆっくり通りながら微生物に浄化された水が下流側の淵の底から湧水のように湧き出しているようです。


鮠川大橋の透明な流れ


鮠川大橋→久倶都比売橋

鮠川大橋のすぐ下流右岸に流れ込む干上がった鮠川との合流点(E)のそばでも潜ってみましたが、鮠川は3面護岸でコンクリートに固められているので川底から湧き上がる様子は確認できませんでした。
その上、ここから宮川は右へ左へとカーブをくり返して片側交互に広い河原が出来ていますが、舟瀬(F)までは流れもほとんどない瀞場ですので、透明度は徐々に悪化していきます。そして舟瀬(F)で久しぶりに段差があって流れが狭まる浅瀬が見えて来ます。


舟瀬の浅瀬

ここは流れが右岸の岩場にぶつかって水位が高い時は危険なこともある瀬ですが、今日はカヌーの底を打つほどの水深だったので、カヌーを引いて歩いて瀬を越えます。その時、瀬の入口から50mほど下の出口に向って、水深は一定なのにウェットスーツ越しにも感じられるほど徐々に水温が下がります。瀬の両岸を観察すると、岸辺の砂利の隙間から流れが出来るほど水が湧いていて、そこだけは砂利の色が少し違うほどです。ここでは瀬の両側からと瀬の途中の川底からも自然の緩速濾過(かんそくろか)効果が生まれているようです。
ここから田間の集落を右に見て正面の牧戸の大岩(G)までは一直線の浅瀬が続きます。今日のコースで一番流れの早い区間です。ここの水は水温は下がらないのに透明度が上がって行く感じがします。理由はわかりませんが、砂利の川底が続く早瀬も川の水が伏流水と混じりあって川をきれいにする効果があるのだと思います。大岩(G)を過ぎると、また1mほどの段差がある牧戸の瀬があります。ここは右岸が久倶都比売神社へ続く森が川へせり出しています。巣があるのでカワセミを良く見かける場所ですが、ここまで来るとスタートの中川大橋とは全く別の川のように水が澄んでいます。台風増水の影響で川底は細かな砂に覆われていますが、玉砂利の川底に戻れば一番透明度が高くなる地点(H)です。


久倶都比売橋→内城田大橋

橋が開通するまでは、宮川最後の渡し船が残っていたのがこの久倶都比売橋下流の上久具(I)です。対岸の棚橋に小学校があるので、通学のために乗る人が多かったようです。今も乗り場や乗り場への階段が残っていますが、父の言うワイヤーはもうありません。右岸は砂利の採取場があって何となく埃っぽいですが、川もここで少し濁ります。右岸の広い河原を過ぎて内城田大橋(J)が近づくと、それまではこぶし大の石〜玉砂利の河原ばかりでしたが、ここからは砂の河原に変わります。内城田大橋の左岸は家が立ち並んで度会町役場がある度会町の中心なのでゴミが目立ち、川の透明度が落ちます。


(I)地点

(J)地点


一之瀬川を遡上して調べてみる

 


内城田大橋→宮リバー度会パーク

内城田大橋を過ぎると川幅が一気に広がり、右岸側から宮川中流域で最も大きな支流である一之瀬川が合流します。一之瀬川は水質が良いので、この合流点(K)で宮川は生まれ変わったようにきれいになります。最近はすぐに涸れたようになる宮川本流と一之瀬川の水量が変わらないぐらいになる時も多くて、どちらが本流でどちらが支流なのか判らないほどです。これは一之瀬川で泳いだ時の様子です。
宮リバー度会パークの前(L)は以前はとてもきれいでしたが、右岸がコンクリートで固められてからは、よどんだ感じになることが多くなりました。


ゴールの宮リバー度会パーク(K)地点

一之瀬川の水中の水中(K)地点

 

 

【このページの結論】フィールドワークで気付いたこと

1.

これまでに感じていた通り、中川大橋から宮リバー度会パークの区間の宮川は澄んだり濁ったりを繰り返しながら、下流に行くほど水がきれいになっていくこと。

2.

流れがなくなる淵では徐々に濁っていき、早瀬を過ぎるときれいになること。

3.

人家の多い地区に差し掛かると一気に水の濁りが進み、河原に雑草が生えている部分が多くなること。

4.

雨が少なく本流の水位が下がっている時でも支流の水はそれほど少なくならず、またとても水温が低くて澄んでいること。