次に実際に宮川へ行って、川がきれいな理由を調べてみることにしました。何故かというと、ここまでの研究で宮川がきれいな理由は源流である大台ケ原が日本一の多雨地帯であることが分ったのですが、「川紀行 宮川」(山田倫子著)という本によれば、地球環境の変化で大台ケ原に降る雨量が年々少なくなっていることを知ったからです。それと、僕の印象ではカヌーで下ったことがある他の川に比べて宮川は特に水が少ない気がするのです。父によれば宮川はダムによって水量のほとんどを奪われていて、今、三重県は宮川流域ルネッサンス協議会というものを設けて水量を増やすために話し合いを続けているらしいです。それなのにどうして宮川はきれいであり続けているのか?まずは宮川流域ルネッサンス協議会のホームページをはじめ、色々なホームページで宮川がどんな川なのかについて調べてみることにしました。

【宮川について】(インターネットで調べたことや川にいる人に聞いた話)

 

宮川の名前の由来

『宮川は古くは、「大川」や「度会の河」「五十鈴の河」など、さまざまな名前で呼ばれていました。「豊受宮(外宮)の禊川」が縮まって「豊宮川」、さらに縮まって「宮川」となったと言われています。このことからもわかるように、宮川は、伊勢神宮がご鎮座する「聖地」伊勢と俗界の境界でした。時の権力者の力も伊勢までは及ばず、豊臣秀吉も伊勢では「太閤検地」を行いませんでした。また、伊勢を訪れる旅人は宮川で禊をしてケガレを祓ってから、神宮へ参拝する習わしだったということから宮川は伊勢神宮の禊の川なのです。』(宮川流域ルネッサンス協議会)

宮川の歴史

父の話では父が中学生の頃の宮川は僕がよく泳ぐ今の海山町の銚子川よりもさらにきれいで、岸辺でマスクを着けて水に潜ると50m以上離れた対岸で川の中を歩く人の足がくっきり見えるほどだったそうです。10年前でも今とは比べ物にならないほどきれいで、もっと普段から水の量が多くてカヌーを操るのに苦労するほどだったそうです。

以前、僕は宮川で川舟に乗って鮎漁をしているおじいさんに昔の宮川について話を聞いたことがあって、おじいさんの話では今みたいな浅瀬はほとんどなく、河原が今よりももっと高くて川幅が狭く、増水していない時でもゴーゴーという音を立てて流れていたようです。ダムが出来る前は熊野川と同じように宮川村などで切り出された材木を筏に組んで、筏師が乗って河口の貯木場まで運んでいたそうです。粟生頭首工の上流には筏師が通るたびに筏を操るために使う竿で突く岩があって、何度も突くので岩に窪みが出来ている痕が今もあるそうです。

そんなふうに普段から急流だった宮川ですが、不思議なことに今のように雨が降ったからといって濁ったり増水したりすることは滅多になくて、いつも透明だったらしいのですが、何年かに一度はひどく増水して下流の村が水害にあうこともありました。ひとたび増水すると10m以上も水位が上がるので、「お伊勢さんほど大社はないが、なぜに宮川、橋がない」と歌われたように、昔は橋を架けることが出来なくて、何ヶ所も渡し舟があったそうです。(昔、父がカヌーを始めた頃は、まだその渡し舟が右岸の田間と左岸の牧戸を結んでいて宮川にワイヤーが張られていたそうですが、久倶都比売橋が出来て廃止になってしまったそうです。)


昔の久倶都比売神社の渡しの様子

江戸時代に宮川の治水を任されたひとりが有名な大岡越前守です。大岡越前守が山田奉行所(今の伊勢市)の奉行の頃、宮川の監理をしていた北氏と、宮川上流の紀州藩に属する稲葉氏との間にアユ獲りをめぐって争いが発生。そこで大岡越前は、訴えを聞くとすぐさま境界を決め、神領を広げました。当時の紀州藩主であった徳川吉宗は大岡の器量に感服し、後に自分が江戸八代将軍になると大岡を江戸南町奉行に起用。目安箱の設置、町火消しの創設などに、その手腕を発揮しました。

そんな宮川ですが、1956年に宮川ダム、1966年に三瀬谷ダムと粟生頭首工が完成して宮川は4つに分断されました。宮川流域ルネッサンス協議会のホームページによれば『宮川の源流は日本有数の多雨地帯で知られる大台ヶ原・大杉谷。その雨の多さは「月の35日雨が降る」と言われるほどです。宮川ダムを始めとするダムや堤防が整備される以前は、大雨が降るごとに洪水を起こし、流域に大きな被害をもたらしました。その回数は霊亀3年(717)から昭和21年(1946)のあいだに40回を数え、「市中海となる(1040)」「堤防が切れ、山田・河崎・船江まで浸水し、安全な所僅かに五分の一ほど(1684)」といった記録が洪水の規模を伝えています。』とありますが、ダムも堤防もない時代に1200年間に40回、つまり30年に一回しか水害の記録がないということは逆にすごいと思います。ダムが出来て以降、長く大きな水害はありませんでしたが、平成9年と平成16年にダムが水没するような大水害が起きたのでダムや堤防が出来た今でも水害の起きる回数はあまり変わらないみたいです。