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鮎釣り師10人に聞きました

たとえ、衝突を避けるためとはいえ、パドラーだけが恐縮しなければならない理由はないですよね?

とはいえ、何十年もアユ釣りをしてきた人達の立場に立てば、パドラーに対し「見慣れない派手なフネ」に乗った「チャラチャラした奴ら」という印象を持つのは仕方の無いことだと思うし、比較的平均年齢の低いパドラーが一部の口の悪い釣り師にやり込められるという図式も理解できます。海外のように「カヌーのある風景」がごく自然に感じられるほど、老若男女がカヌーを楽しみ、普及すれば釣り師との関係も改善されてゆくのでしょうが・・・。そんなわけで今とりあえず出来る事、それは鮎釣り師をもっと理解するということに他なりません。そこで、1996年9月から11月にかけて、下記のような調査を実行しました。小学生の時の自由研究みたいで面白かったです。合計8回の川下りで出会った釣り師は12人。それにしてもあの事件の時は妙に多かったのになあ。

 

アユ釣り師とお話ししよう!ツアー槻要

団体で行くと他人との交流は難しいのでソロ。川幅の拡がる雨あがりを選び、上流側でフネを降り、河原を歩き、「自分はカヌーに乗る者だが、どんな風に通れば邪魔にならないか教えて欲しい。」とアユ釣り師に尋ねるという方法。(その際、地元か否か、年齢も併せて聞いた。)こちらの真摯な姿勢を示すため許可を得て、録音またはメモを取らせてもらった。

アユ釣り師Aさん(40代・地元)

「カヌー?最近増えたな。対岸寄りを一声掛けて通ればええよ。ただわしら竿は横向いとっても糸は下(しも)いっとるやろ?そやで下(しも)のはうばか見とるで、あんたらが背中からすうっと来たらびっくりするんやわ。瀬の音であんたらがちょっとやそっと声かけても聞こえやへん。大声でな。」

アユ釣り師Bさん(50代・地元)

「通してくれ、ゆうとんのに通るなとは言えへんわな。わしら何十年てここでこれしとるんやで、後から来たあんたらはちょっと遠慮して欲しいっちゅうのも本音やな。」

アユ釣り師Cさん(40代・県外)

「こないだ、上の方から笛吹いて来た奴がおったわ。なんやえらっそうにピーピーと。おまわりに怒られてるみたいで感じ悪かったわ。それから、団体でバラバラと10分ぐらいかけて通る奴ら。まとまって、さっさと通れて言いたいわ。」 

アユ釣り師Dさん(60代・地元)

「もめたんか?なかにはそんな奴もおるわさ。あんたらの中にもやらしい奴おるやろ。とにかく声かけて遠いとこを通る事やな。竿と糸の出とる方向をよう見て、下に回り込んだりせんとさっさと行くこと。それと釣れますか−?とかゆわんこと。釣れてへんヤツはかっかきとるで薮蛇や(笑)。」

アユ釣り師Eさん(60代・地元)

「ここ何年か水が低いで、釣れへんわ。川幅も狭うなっとるし、兄ちゃんらのフネでも底擦るんとちゃうか?ま、そんなんやでなんかきついこと言われても、相手にならんとき。(都会の川では石投げられるらしい、との問いに)あ、それはあかんわ。もしそんなこと.あったら名前きいとき。組合でいうたるさかい、わしにいうておいで。そりゃあかんで、警察ざたや。」

川舟の漁師Fさん(50代・地元)

「そやなあ・・・。瀞場でバシヤバシャやられたらアユ散るわな。瀬はかまへんのとちゃうか。わしらが綱やりだしたら、ちょっとおとなしゅうしてくれたら。この川で漁でメシ食っとる人はおらへんのやで、あんたらとおんなじで道楽なんやけど。まあ、それははれ、、相手のあることやし・・・わかるやろ?」

川舟溜まりで談笑中の漁師Gさん(40代)、Hさん(60代・ともに地元)

「上(かみ)の方はどやった?今日はちっさいのしかおらんやろ。えっ、このフネか?これはオーダーメイドで(笑)30万や。船外機は別でな。そうやなあ、まあ綱に突っ込んできたりせんだらええんとちゃうか?それより、カヌーの人らは上(かみ)の具合(釣果のこと)教えてくれるし俺らは何とも思うとらん。ま、これに懲りんとこれからも川賑わしたってな。」

河原でカップヌードルをたべていた釣り師Iさん(60代・地元)

「ぇぇか、にいちゃん。アユていう魚は縄張りがあるんや。そやで友釣りができるんや。ちゅうことはな、あんたらが通ってちょっとの間逃げてっても、またそのうち戻ってくる。ほんとや。そやで別に遠慮することはないんや。けどな、釣りする奴は気ィの短いのんが多い。知っとるか?わしらは家そこやからええけど、遠いとこから来て、金払うて、釣れへん。そこへあんたらがニコニコしながら流れてきてみ?怒るわな。そこらの気持ちも汲んでやって、にいちゃんら若いんやで折れたってほしいわ。ヒヒヒヒ(笑)」

夫婦で川舟にのって漁(綱)に向かうJさん夫妻(不明・地元)

「ちょっと前まで日本一の清流やったのにこれ見てみ。苔で川の底ずるずるや。水が少ないでフネの通れるコースが狭まなって釣り師ともめるんちゃうか?この時期、瀞場で朝一番に漕がれると困るな。アユは瀬の方へ逃げるで綱打ってもあかんのやわ。そやけどカヌーなんかより、水上バイク(ジェットスキー)やられると、わやや。油浮くしな。」

アユ釣り師Kさん(40代・県外)

「はっきりいうて、迷惑やな。アユ逃げるからな。縄張り?天然モノとちがうぞ!そんなもんあるかいな。これだけの密度でいたら、縄張りなんか取ってられへん。放流してる川のアユは団地住まいなんや。川下りしたかったら時期ずらし。川はどこでも12月から5月は君らのもの、6月から11月は僕らのもの。」

ウェットスーツで登場。投網のLさん(60代・地元)

「4〜5年前は年に何回も大水がでて、河原もきれいやったけど、去年の夏から水あがっとらんでバーベキューの焚き火の跡がすごいやろ。まあゴミはほかしてくし、子供らの水泳場でジェットスキーするし何考えてけつかるんかのう。あんたとは違うやろけど、田植えの時期に田ァの脇に一日中車停めるのはやめてくれんかな。田ァに水張ってあるのン見たらわかると思うんやけど。」


そんな訳で、当初は無視されたり怒られたりするんじゃないかと心配しながら始めたアユ釣り師との交流でしたが、フネを降りて話しかければ、はとんどの方が笑顔で答えていただけました。「にいちゃんもやってみるか?」といって川舟に乗せていただき、綱の張り方をレクチャーしてくださったFさん。少し無愛想ながら、慣れた手つきでアユをさばいて「ちっこいけど嫁さんにみやげ持ってったれ。」と袋一杯のアユをくれたBさん。本当に有り難うございました。パドラーのなかにも非常識な輩がいるように、アユ釣り師もいろいな人がいます。またカヌーに好意的な釣り師でも、ボウズの時はイライラしています。だからこそ、もっとお互いを理解する努力を惜しんではならないと感じた、この2カ月間でした。

1996 akihikom 

 

 

鮎釣り師との関係...その後

このページを作って2年、あの事件以来幸い大きなトラブルには至っていません。それどころか積極的に話しかける癖がついたからか、鮎釣り師&漁師のオジサマ方には鮎を頂いたり、家に招かれてご馳走になったばかりかお風呂まで入れて頂いたり(!)して本当に良くして頂いています(笑)。そんななか、このサイトをご覧いただいた「カヌーイストにして鮎釣り師」ワッキーさんとおっしゃる方からメールを頂き、執筆をお願いしたところ貴重なご意見を伺うことが出来ました。掲載許可も頂きましたので全文掲載させて頂きます。


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