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FLAME LAYOUT

How to canoe for beginners Vol.17

   


Chapter 10  カヌーキャリアの製作(3艇積)


MXCC- 003(Mason Experimental Canoe Carrier Number3) 

複数艇積みの始まり

カナディアンカヌーを始めてしばらく経った頃、高名なカヌーイストBill Mason師の著書“Song of the paddle”に出会った。ページをめくると目から鱗の連続だったけれど、一番印象に残ったのは、旧式の30カローラに5艇のカナディアンカヌーを積んでる写真(↑)。これを見て正直『バカだなぁ〜!(笑)』なんて思っていた。

実際のところ、一家族でカヌーを複数艇所有するなんてことは、かなりマニアな世界に思えたし、目の前にいるアウトドア嫌いの妻とヨチヨチ歩きの息子がソロでカヌーに乗るなんてことは夢の世界でしかなかったのだ。
ところが10年もの時は流れ、アウトドア嫌いの妻は一端のソロパドラーを名乗り、ヨチヨチ歩きの息子は少年になってひとりで川を下り、存在すらなかった娘もがソロの練習を始めるに至った。そんな変化に合わせるように、一艇だった我が家のカヌーは1996年に2艇に、そして今年3艇にと増殖してゆく。Bill Mason師の5艇とまではいかないけれど、我が家も少しだけ“マニアな”世界に足を突っ込むカタチとなり、合法的かつ安全に1台のクルマに3艇を積込む必要性が生じたのだった。


キャリア関連抜粋はこちら

3艇積みプロジェクト試案


こんな感じになるのかな?(合成写真です)

我が家のDiscoことLand Rover Discovery Series2は、背が高過ぎることを除けばLazyカヌーイストフレンドリーなクルマのひとつである。1890mmの全幅は2艇のカヌーを並べて積むことを可能にし、傾斜がほとんどなく垂直に立ち上がったサイドウィンドウがもたらす幅広のルーフとルーフ後端にまで回り込む形状の丈夫なレインガーター(雨樋)は各種キャリアシステムを強固に支えることができる。しかも2艇積みで苦労の種であるストラップの取り回しも前後2ケ所に設けられたサンルーフのおかげでかなり簡単に車内からこなすことが出来るし、前後のタイダウンも最小限のバンパーと短いオーバーハング、4tトラック並みのフレーム直付けで遠慮なく締め上げることができる。
ところが、3艇ともなると、話は別。かなり頭を使って最善の方法を考えないと難しいのである。

A.縦積み
まず初めに考えたのは、カヤックのように3艇を縦に積む方法。イラストで見る限りかなりグッドアイデアに思えるのだけれど、モダンデザインのカヌーならともかく我が家のトラディショナルなリカーブドデザイン(カヌーの両端が反り上がったスタイル)の場合はこのイラストのように各カヌーを接触させて積むことは出来ないので実際にはキャリア幅をオーバーする上に、高速走行中にイラストで言えば右からの横風を受けると間違いなく2車線分は左に吹っ飛ぶか、あるいは転倒することは間違いなく、断念。(加えて、クローズドボディのカヤックとは違ってオープンデッキのカナディアンカヌーは横方向の強度が低いので、この形でストラップを締め込むと変形するらしい)

B.ウレタンブロックのみ使用
次に考えたのが、カヌーをルーフに直置きして積載するためのウレタンブロックを使用する方法。これはかなり現実的だったけれど、下段のカヌーのハルに全ての荷重が掛かることと、柔軟性のあるハルのせいで上段のカヌーを留めるストラップが緩む可能性が高いこと、そして積込みが非常に困難であることを考えて断念。

C.デタッチャブルキャリア(2本脚)
次に考えたのが、以前、TARZOでカタログモデルだった横U型のパイプを使ったサーフボード2段積みアタッチメントのアイデア。ところが強度不足に加え、取付けがボルトオンということで、カヌーに行くたびに取り外しの作業が必要(取付けたままの3m近い車高で日常生活を送るのはヒジョーに不都合)。しかも下段のカヌーの積込みが困難ということでデタッチャブル(着脱式)キャリアの線でアイデアが固まってくる。ベースキャリアにメスのソケットを立て、そこに逆U字あるいは鳥居型のキャリアを差し込む...これでほぼ決まりかけたけど、重量を試算すると重過ぎて僕のひ弱な腕力では精密な2本脚のソケットに上手く差し込みできないことが判明。しかも家での積込みの際はともかく、フィールドで下段のカヌーを積み降ろしする際にもいちいち取り外し&取付けの作業が必要なことに気付き...これも断念することになる。

D.Tバーキャリア(&パッド)
デタッチャブル、しかもフィールドで取り外すことなく下段のカヌーを積み降ろしできて、その上クルマの回送もOK...この条件を満たすアドオンキャリア...そんなのあるわけないじゃん!と諦めかけたその時、ふと一本足のT-バー方式を思いつく。一本脚では強度不足なのは当然なので、T-バーの横バー下側に発泡ゴムのパッドを咬ませて下段のカヌーに荷重を分散、T-barのポスト部分に過度のストレスを与えない方式...これならイケル!そう実感する。でも、これでもフィールドで下段のカヌーを積み降ろしする際にもいちいち取り外し&取付けの作業が必要なわけで...と、その時、近所の公園で回転式のジャングルジムを見てグッドアイデアが浮かぶ!そうだ、T-バーのポストを円柱にしてクルリと90度回転させてやれば簡単に下段のカヌーを積み降ろし出来るじゃないか!T-バーを自立させようとすると、その付け根の取付け部分を強固かつ回転式にするのは実現不可能なふたつの命題になるけど、元来T-バーはゆらゆらグラグラしてても問題ないわけで...2艇のカヌーの隙間に生じる強烈な風圧(時速の倍になるらしい)も円柱なら抵抗が最小限だし...そんなわけでこの方式に決定なのである。

設  計

そうと決まれば、専門家にお願いする前に自分なりにイラストを描き、図面を引いてみる。文系の僕にはあまり馴染みのない製図だけど、中学の技術家庭の授業のレベルでも叩き台がないよりましなので、ま、適当に、テキトーに...(笑)それを元にプロの門を叩くと...
どうやら実現可能らしい!(嬉)ただ、下段のキャリアバーのストレスがかなりのものということで、早速78インチ肉厚3mmの強化バー(通常は2mm。パッケージには40% stronger!の文字が誇らしげ)を個人輸入し($だと本体は安いけど、そ、送料が...涙)、T-バー装着に備えることにする。それに加えて、3艇積みに必要なアタッチメント(RV-INNOのカヌーアタッチメントIN420 1セット¥20000、50mmストラップIN411 4本¥8000、スライドキットIN417 ¥20000などなど...ちょっと高過ぎません?)も揃え、あとはT-バーの完成を待つのみ!


一応下手なイラストで希望を伝える

 


素人設計図を描いてみました!


T-bar carrier Vr.1(某プロの方の手による...)
非常にシンプルで軽いけど、ポストの長さの調整方法がカットするしかないので難しいのと、クルマがバウンドした際にキャリアバーに全重量が加わるので要改良。


T-bar carrier Vr.5
Version1の図面ではT-barをキャリアバー上に設置する仕様になっていて、全ての負荷がT-barのポストを通じてキャリアバーに掛かることになります。キャリアバーは通常の2mm厚ではなく、3mm厚の強化バーを使用していますが、強度が充分ではないので、Version5ではキャリアバーからオフセットさせて付け根は自由にスライドさせています。下段のカヌーをT-barからタイダウンした後に付け根のクイックリリース金具で締め込むカタチにすることになりました。それによって荷重は殆どが下段の2艇のカヌーに掛かり、T-barはあくまで積込みの際の補助的な役割を担い、走行中のバウンドなどで垂直方向に過度の荷重が掛かった際にのみ効くことになります。T-barの自立は全く考えていませんので、ヨーイングに関してはT-barはその役目を果たすことはなく、T-bar両端から下段カヌーを巻き込む形で伸びた50mmストラップと前後のバンパーフックからカヌーの先端に伸びたケブラー芯入りのロープが上段のカヌー及びT-barのヨーイングを抑えます。

 

完成予想図(^^)

 


検  証

T-バー製作が着々と進むなか、実際に3艇を積込んで実験を敢行。2×2材を使ってこれまでに浮かんだ積載のアイデアを全て実際にやってみて、その実現性や利便性、安全性を検証する。でも、実際にやってみて縦積みはカヌーのサイドの形状から接するバーを300mmほどアップさせないと中央部がルーフ(実際には内側2本のバー)に接触することが判明。独りで積込みが可能だったのはB. ウレタンブロックのみ使用D. Tバーキャリア(&パッド)のみ。

B. ウレタンブロックのみ使用(斜め積み)

最初の1艇(オリーブCAMPER)は楽々だけど、両脇の2艇の積込みが非常に困難。しかもラチェット金具にハルが接触するのでウレタンブロックが外れて収拾がつかなくなる。ベルトで締め込むと両脇のカヌーが内側にズレ、前後のタイダウンロープに全てを依存することになり、走行は不可能だと思われる。

D. Tバーキャリア(&パッド)

実際に積込みの簡便性、ベルトを締め込んだ際の安定性に群を抜いていたのは、やはりT-バー方式である。今回は2×2材の模型を仮置しただけで積込みの実際は想像でしかないけど、高さを可変式の横バーにローラーアタッチメントが付加されれば、より簡単に積込みできると想像に難くない。(T-バーの取付けにはハシゴが必要だったけど、カヌーの積込みは下段の2艇とさほど変わらずハシゴも必要ないほどだ。)


オタクな楽しみ(^^)

素材や細部の加工&取付のアイデアをみんなにアドバイスしてもらって具体化してゆくT-barキャリア...せっかく完成度の高い道具が出来るのだから、もっと悪ノリして遊んじゃおう!ってことで、まずはネーミング。
悩みに悩んだ末に偶然浮かんだT-バーのアイデア...全ての問題をクリアするその機能性はまさに魔法のようなので“Magic-o-carrier”と名付けることに。英語のMagic、伊西語のMagico、そして“ホントはスゴイ人だったのね”なT-bar製作主査の某・理系カヌーイストのお名前を拝借してね(笑)。
そしてネーミングの次はカッコイイロゴステッカー(笑)
これもできちゃってます→

完成の暁には“Magic-o-carrier”のロゴステッカーの下に、アドバイス頂いた全員のサインを旧いMacのようにサンドブラストで彫り込むつもりですので(そこまでやるか?...笑)関わった人はサインを添付ファイルで送るように!(笑)

スライドキット装着

3艇積み用のT-バー取付けにともなって、追い出されるカタチで取付けできなくなったローラーアタッチメント。一段積みでは正直なところ全く不要なアタッチメントだけど、(プロレスラー並みの体力があれば2段積みでもローラーなんて不要なんだろうけど...)、虚弱体質の僕は(泣笑)上段に積む前にちょっとひと休みするためにRV-INNOのボート用スライドキットIN-417を取り付けることにする。


収納してると全然目立たないけど...

伸ばすとこんなに後方まで!

これでウッドガンネルが傷むことはない。

カヌーってものはひとりで積み降ろし出来なければ格段に出動機会が減るので、何としても必要な装備なのである。カーショップにIN-417が届いたちょうどその日、ゴミ収集場に黒くて長〜い物体発見!金属ゴミじゃない日に出されたためにイエロ−カ−ドが燦然と輝くその物体は...RV-INNOのキャリアバー137cm!一日置いても誰も取りに来る様子がないので、『しょうがないなぁ...』などと言い訳をしながら戴いてくることに。で、キットに入ってる1650mmバーでは短すぎるので手持ちの1890mmバーを使って取付けたIN-417はRV-INNOの商品らしく機能的ではあるけどボルトヘッド剥き出しでPL法でヤバいんじゃないの?って感じの無骨さ。ホームセンターで水道管用の保温カバーと耐食性の高いダクトテープを調達してバーに巻き付け、余ってた椅子の脚用キャップをエンドにはめ込んで、良い感じになりました。


 

完成!!


3艇積み完了!

 


ストラップの取り回しも良好

 


下段を積む時はこうしてTバーを90°回転させるだけでOK

 
Bill Mason カヌーキャリア関連抜粋


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