How to canoe for beginners Vol.3
Chapter3. カヌー選び
ひとくちにカヌーと言っても目的によってその特徴は様々。実際には乗ってみないとホントの意味で分かったことにはならないのですが、カタログのスペックや形状からなんとなくそのカヌーの性能をうかがい知ることは出来ます。カヌーも他の遊び同様、いろいろな道具が必要です。「カヌーは値段が高い!」って?おっしゃる通り高いです。例えば僕のカヌーのOld Town Camperは標準タイプで26万円します。これがアメリカ本国じゃ$850なんですよ、実は。$1=¥140としても¥119000。以前の$1=¥80なんて時だと¥68000!イヤになる数字だけど、個人的に輸入すると送料が50%ぐらいかかるって話です。まあ、購入後のサポート代だと思えば安いんですけどね。
それに、カヌーって丈夫なんですよ。特にポリエチレンやロイヤレックスっていう素材のものはメンテナンスフリーだし、傷とか気にしなければ一生モノなんです。僕は大体年に30〜40日カヌーに乗るんですけど(仕事終えてから近所の野池で1〜2時間漕ぐのも入れて)、例えば10年使ったとすると一回あたり¥600てことになりますよね。(「毎日コーヒー一杯我慢すれば買えるんです。」なんていう変な商品の勧誘みたいな例えだけど)これってフィールドに行くガソリン代より安いぐらいです。ゴルフだったら10回コースに出たら、カヌー買えちゃいます。その他に必要なライフジャケットやパドル、ウエットスーツやレスキュー道具なんかも一式揃えて5万円でお釣がきますしね。一度買ってしまえば、あとで買い足すモノなんてほとんどないし(ライフジャケットは2年ごとに買い替えてますけど)クルマみたいな諸経費や車検もないし、僕は楽しみのわりに安いって思います。もちろんショップによっては多少の値引きもありますし、パドルとライフジャケットはオマケで付けてくれるところも多いしね。(ただし、カヌーってそう大量に売れるものじゃないので、ショップの利幅もびっくりするくらい少ないんです。あんまり無理を言わないように!)それでは、カナディアンカヌーで必要な道具について説明しますね。
Canoe カヌー
これはもう絶対必要(笑)。目的にもよるけど僕みたいな使い方、すなわち「ファミリーでゆったりとツーリングを楽しんだり、時にはキャンプしたり」って使い方なら16フィート以上のフラットボトム(=平底タイプ)がいいと思う。静水での安定感(あくまで「感」だけど)は抜群だし、初心者から上級者までこのタイプのファンは多いです。ラウンドボトムはホワイトウォーター(=いわゆる瀬)に強くて、傾いた時(あるいは傾けた時)の安定性に優れています。またキ−ル付きは直進性に優れているので、湖など広くて曲がる必要の少ないフィールドに適しています。
ツーリング&キャンプに使うなら、最大積載量400kgは欲しいところ。僕はシルエットの美しい「メイントラディショナルスタイル」が好きだけど、べつにこだわりが無ければ先の尖ったモダンなスタイルのほうが性能はいいのが多いです。材質は日本の川で使うならやはりロイヤレックスかクロスリンクポリエチレンと表示されたものが丈夫。ウッドやFRPは綺麗だけど、貧乏性の僕は使うのがためらわれるんですよ。でもウッドのカヌーでガンガンやれる人って憧れます。お金持ちだから?いえいえ、こういう人は自分で直せるウデを持ってる人だから。ロイヤレックス製のフラットボトム艇ならOld Town Canoe/CamperやPathfinderなんてところがオススメ。(詳しくは下のボタンをCLICKしてみて下さい。)参考までにこれからカタログからカヌーの性能を読み取るための基礎知識を書いてみますが、あくまでこれは一般論。実際に試乗するのが一番だけど、初心者の場合はどれに乗っても「スバラシイ!」と感じるので(笑)、詳しくはショップで聞くか、詳しい人に教えてもらいましょう。僕の愛用のカヌーについて
My Favorite Equipments #1
カタログからのカヌー選び 全長
ft表示が一般的ですが(1ft=約30cmです)現在販売されているカヌーのほとんどが15−16ft。もっとも使い勝手の良い長さと言えるでしょう。ボトム形状や全幅にもよりますが、一般的に長いほど直進性がよくスピードも出て積載量も大きくなりますし短いほど積載量やスピードはスポイルされるものの回頭性が良く小回りが効きます。
全 長 特 徴 -13ft ソロ専用カヌー。過激なホワイトウォーター艇はこの長さ。釣り用もあり。
14ft 基本的にソロカヌー無理すれば2人乗れる。荷物は無理かな?
15-16ft 大人2人子供2人で乗れる。2泊程度までキャンプツーリングの可能
17ft- 大人2人子供2人&3泊以上のキャンプも可能
全幅
全幅はカヌーの一次安定性とスピードに大きく関係します。本来は底から4inch喫水線の幅の数値が重要なのですが、カタログ上の全幅でだいたい判断できるでしょう。レクリエーション&ツーリングカヌーの標準は85−90cm。これより幅が広いものは主に釣り用、狭いものはスピード重視のレーシング用です。それと当然ながら短いモノは軽く長いモノは重いです。
全 幅 特 徴 -85cm スピードがあって両サイドを漕ぎやすい。長いものは静水レーシング用、短いものはホワイトウォーター用に多い。当然一次安定性は低いので釣りは不可。
85-95cm リクリエーション&リバ−ツ−リング用に多い。一次安定性とスピードのバランスが良い。パドリングも釣りもという欲張り派にオススメ。
95cm- 一次安定性のみを追求した釣り専用モデルでいわゆるカヌーのカタチをしたバスボート。パドリングは楽しくなくてエレキモーターなどで動かすのが無難。
一次安定性→イニシャルスタビリティとも言い、カヌーに乗り込んだ際の安定性のこと。初心者が「このカヌーってグラグラしないわね!」って感じるみせかけの安定感。
二次安定性→セカンダリースタビリティとも言い、カヌーを傾けた時の復元力のこと。中上級者が「このカヌーって粘りがあるなあ。」って感じる真の安定性。
全高(深さ)
深さのあるカヌーほど積載量が大きいですが、一概に全高と言ってもカヌーはバウやスターンの高さとセンター部分の高さで異なるのが一般的です。バウ&スターンの高さがあるものは瀬での浸水が少ないかわりに水面からの投影面積が大きいため横風の影響を受けやすいです。またセンターが高いものは浸水しにくく積載量を多くとれる反面、パドリングがやりづらい特徴があります。
先端のフォルム(ステム)
現在売られているカヌーは先端が高くなって大きく丸く反りあがったトラディショナルスタイルと先端が比較的尖ったカタチのモダンスタイルに二分されます。湖で優雅な感じに漕ぐならトラディショナル。流水での性能を求めるならモダンでしょうか。ただトラディショナルはプラスティック成形に手間がかかるとか、輸送の際に積み重ねて運べないなどメーカーの都合による部分が大きいという話も(笑)
底のカタチ(ボトム)
カヌーの性格を決める重要な要素がボトムの形状です。カヌーはこれで決まる!と言っても過言ではないぐらい。「こいつはフラットだからセカンダリ−スタビリティが...。」なんて会話が出来れば相当のカヌー通かも(笑)
ボトム形状 特 徴 底が平らで箱みたいなものなので一次安定性が高く初心者でも安心。釣りや子連れカヌーにぴったりだけど、一旦傾いたらそのまま沈の可能性が高い(二次安定性が低い)でもカヌーの神様ビル・メイスンが愛したスタイルだけにわざと傾けた際にエッジがキールの役目を果たしたり、接水面積が極端に小さくなるなど中上級者にも楽しめる。奥が深いってことね。主にリクリエーショナル艇。
達磨さんみたいなもので、一次安定性は全くナシ。初心者が乗るとカヌー嫌いになるタイプ(笑)。ただしかなりの角度に傾けても特性の変化が小さく、達磨さんのように復元性が高い(二次安定性が高い)から中上級者にはタマラナイ魅力がある。同重量なら最も接水面積が小さいので速くて操作性抜群。主にホワイトウォ−ター艇。
フラットとラウンドの中間的なカタチ。ラウンドをサッカーボールとすればシャローはラグビーボール(笑)中途半端かと思いきや、これが一番扱いやすかったりする。しかもラウンドはかなり経験を積まないと乗りこなせないけど、これなら中級者だけでなく初心者でもホワイトウォーターを含むツーリングなどに行けてしまう。主にツーリング艇。
シャロ−ア−チの底面にV字状の突起を加えたのがシャローV。スピードが増し、リ−ン(傾け)の使い方によっては操作性が増すフラットとシャローのイイとこ取り的な形状なんだけど、反面何故かストリーム・イン(流れに入る)時にバランスを崩すことが多い。(僕は何度も沈しました)Vの程度がそこそこでないと、ダメみたい。主にリクリエーショナル寄りのツーリング艇。
フラットボトムに大きなキール。コレは直進性重視のタイプ。釣り用のカヌーはほとんどこれで、モーターを動力に湖でのバス釣りに行くなら絶対にオススメ。ただし全然曲がらないから、屈曲が大きくて細くて流れの急な日本の川には適さないし、パドリングを楽しむには操作性が低いのでつまらないかも。主に釣り専用艇。
サイドの形状
カヌーを輪切りにした場合のハル(船体)のサイドの形状は、漕ぎやすさや安定性、耐浸水性に影響します。
サイドの形状 特 徴 「ネズミ返し」のように水の侵入を防ぐし傾いた時のリカバリ−が比較的容易だけど、特に体の小さな(座高の低い?)パドラ−にはカヌーの近くにパドルを差し込むことが困難。
フレアーとタンブルホ−ムの中間でまずまず漕ぎやすく安定性も高い。でもコレって上流側に傾いたら沈も早いけど。
特に幅が広いカヌーや深さのあるカヌーに多い形状で(ウチキカヌ−のスワンとか)ガンネルの幅が狭くなってパドリングはやりやすくなる。でも反面傾けた時にサイドがラウンドボトム状態になって安定しないので普通の幅のカヌーでこの形状にするメリットは全くない。
ロッカー
バウ(舳先)からスターン(船尾)にかけてのキールラインのカタチ、つまりボトム形状がカヌーの輪切りならロッカーは縦割りした底のラインの「反り」のことです。これは主にカヌーの回転性能に影響します。
ロッカ−形状 特 徴 Straight 最も直進性が高く、また接水面が大きいので安定している。逆に回頭性能は望めない。モーターを動力とする釣り用カヌーはコレ。
Moderate 今売られているほとんどのカヌーはこのカタチ。ストレートなキールライン(もしくは若干ロッカーをつけてある)で両端を反り上がらせ、水切りを良くさせる。
Extreme 接水面積が最小で極端な話、パドラ−のお尻の下のみが接水してるリバーカヤックのようなタイプ。当然コマのように回転性能は抜群だからホワイトウォ−タ−艇に多いけど、真直ぐ進めるのは上級者だけ(笑)
素 材
カヌーとひとくちに言っても、その素材は様々。好みで決めるってのもひとつの重要な選び方だけどやっぱり用途に応じた素材ってのもあるので素材別に一覧表にまとめてみました。
素材 特 徴 バーク(樹皮) 16世紀の白人入植以前に使われていた木のフレームにバーク(樺の木の樹皮)を張っカヌー。今所有してる人は少ない(笑)けど10年以上前東急ハンズ(?)でインディアンの末裔の人が復元の実演をやってたような記憶が。
ウッド&キャンヴァス ウッドのハルににキャンバスを張った19世紀のカヌー。今もOld Townの現役カタログモデルにもあって「現代のどのカヌーよりも美しく、軽く、丈夫」らしいんだけど、100万円以上する(涙)し素人じゃ修理できないし。
ウッド&FRP 俗にウッドカヌーと言われているのがコレ。ウッドの芯材をFRPコーティングして耐水性と強度を持たせてある。完成品を買うと50万円以上するし、自分で修理出来ないと困るので、ハンドメイドじゃないと意味がなさそう。軽いし雰囲気も抜群だけどFRPの強度以上は出ないので、湖や流れのない深い川専用です。もちろん自分で直せるならガンガン瀬を攻めてもOK。
FRP 上のウッドカヌーのウッドを省いたもの。だいたいウッドじゃなくても段ボールだってFRPで固めちゃえばカヌーになるわけで、強度的には何ら差はありません。しかもFRPはペイントの発色が良いし表面の水切れが良く下のABSやポリに比べたわみが少ないのでレーシング艇などはコレが多い。(シーカヤックなんてほとんどこれ)もう少しFRPを薄く軽く仕上げるために引裂き強度のあるケブラーを使用してるのもある。とはいえ当然岩にぶつかるのは不可。
ABS樹脂複合素材 いわゆるロイヤレックスとかロイヤライトとかいった名前の付いた複合素材でビニールでABS樹脂とABS樹脂発泡体(フォーム)をサンドして熱を加えてフォームを膨らませて作るもの。軽くて丈夫、しかも適度な柔軟性があるので衝撃にも強くリバーツーリングには最適の素材。現代の大量生産カヌーはほとんどコレ。発泡体によって素材自体に浮力があるので不沈。
ポリエチレン 従来のポリエチレンは紫外線に弱い欠点があったがクロスリンクポリエチレンなどカヌー用のものはその欠点をある程度克服。全ての素材の中で最も強度があってしかも浮力が大きいのでレンタル艇やスクール艇に使われるほど。ただし加工工程の都合やたわみを防ぐためにある程度の厚みが必要で、滅茶苦茶重い!これで軽ければなあ。
アルミ 軽くて丈夫で紫外線や錆に強いというアルミ合金、ジュラルミンを使用したもの。航空機のようなソリッドな美しさは魅力的でほぼメンテナンスフリーだけど一度へこむと鉄のように容易に板金できないしというアルミ素材ならではの欠点も。
布 アルミや木の骨格に布(といってもターポリンやナイロンなど)のスキンをかぶせるフォールディングカヌ−。ウリは折り畳むことで運搬や収納が容易で軽いこと。船体布の素材の進歩でちょっと岩にこすったぐらいでは修理不能にならないし、組み立てもエア注入を併用するなどによってテンションをかけるのも以前ほど力を必要としない。欠点はやはり組み立て時間がかかることと強度が増したとはいえリジッドに比べると落ちる剛性感。
国内で買えるカヌー一覧
Name
全長 全幅 重量 素材 ボトム サイド ロッカー 用途 価格 Old Town
OTCA17
488
91
34
W&C
F
S
M
WRLF *105.0
Molitor
518
89
38
W&C
F
S
M
WRLF *120.0
Trapper
396
91
27
W&C
F
S
M
WRLF *90.0
Pack
366
81
15
RYX
SV
S
M
WRLF *15.8
Hunter
427
89
24
RYX
F
S
M
WRLF *19.8
Pathfinder
452
92
25.8
RYX
F
S
M
WRLF 22.8
Camper
488
92
26.7
RYX
F
S
M
WRLF 24.8
Osprey
427
98
24.5
RYX
S
S
S
WRLF 22.8
Scver119K
358
83
19.5
POLY
F&K
S
S
WRLF 13.8
Scover158
478
90
36
POLY
F
S
M
WRLF 19.5
Appalachian
488
89
30
RYX
S
F
E
WRLF 24.0
Cascade
452
86
27
RYX
S
F
E
WRLF 22.0
penobscot16
493
86
26
RYX
S
S
S
WRLF 26.0
Tripper
523
94
36
RYX
S
S
M
WRLF *26.8
Mad river
Outrage
365
65
23
RYX
R
T
E
WRLF 18.5
St.Croix
442
92
32
POLY
SV
S
M
WRLF 14.5
Teton
488
92
36
POLY
SV
S
M
WRLF 15.8
Explprer
488
90
32
POLY
SV
S
M
WRLF 23.2
Quest
445
90
26
RYX
S
S
S
WRLF 22.5
Tahoe
427
95
26
RYX
S
S
S
WRLF 20.5
Guide
442
76
27
RYX
SV
S
E
WRLF 21.9
Whinooski
425
100
29
FRP
SV
S
S
WRLF 34.0
Freedom
488
89
33
RYX
SV
S
E
WRLF 25.9
Escape14
427
83
16
TARP
SV
T
S
WRLF 16.4
Escape15
457
91
19
TARP
SV
T
S
WRLF 18.2
Escape16
503
92
22
TARP
SV
T
S
WRLF 19.2
一覧表の見方
素材 W=ウッド C=キャンヴァス FRP=ファイバーグラス RYX=ロイヤレックス
POLY=ポリエチレン TARP=タ−ポリン(布)ボトム F=フラット R=ラウンド S=シャローアーチ SV=シャローV K=キール
サイド S=ストレート M=モデレート E=エクストリーム
ロッカー S=ストレート F=フレア T=タンブルホーム
用途 W=ホワイトウォーター R=リバーツーリング L=レイクツーリング F=釣り
Dagger/Gutz/Mohawk/Lettman/Pyranha/Nanok/Navarro/Guide/ALLY/MERRIMACK
Chapter 3 道具選びあれこれ
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