紀州のお殿様が乗る駕篭に合わせて一間半(2.7m)と昔の山道としては高規格な美しい石畳をザーザーと轟音を立てて流れる渓流沿いに進むと夜泣き地蔵の祠が見えて来る。
地蔵尊の先には渓流を渡るポイントがあって、今日の増水でこの石橋が渡れるかどうかがこのコースでの唯一の心配材料だったけれども、さすがは日本一の多雨地帯にあって長年道路としての機能を果たしてきた熊野古道だけあって、全く問題なかった。
この辺で先を行く『熊野古道大遠足』の中高年ご一行様に追い付く。小さなせせらぎを越えるのにかなり躊躇していて渋滞が生じているので、僕らは流れの中に足を踏み入れて抜き去ることに。
『山歩きは初めてっぽい人が多かったね。』
僕がそう言うとtakaboo夫妻が大きく頷く。
『どうしてそんなことが判るの?』
Mamaは少し不思議そう。
『靴だよ、靴。揃いも揃って新品だっただろ?きっと今日のために新調した人ばかりなんだよ。』
『ナ〜ルホド!』(笑)
馬越一里塚を過ぎ、少し階段のような石畳を頑張って登り切ると、林道が古道を横切る。ここからは石畳は途切れて普通の山道の風情だ。薄い石を綺麗に積んだ畑の痕跡を左手に見ながら平坦な土道を進むと、間もなく13:00ちょうどに馬越峠に到着する。
一旦は尾鷲湾から尾鷲市街地を一望出来る馬越峠でランチタイムにしようとベンチに腰を下ろしたものの、台風一過の強風(それまでの海山町側では山懐に抱かれてほとんど感じなかった)が吹き荒れて、ゆっくり座ってられる状態ではなく、食事を断念。
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