How to canoe for beginners Vol.7
Chapter 5 レスキュー
ここでお話しするのは初心者向けということで、静水または緩やかな流れの川(2級未満*)を平均的なレクリエーション・カヌーで行く場合を想定しています。レスキューについて本や雑誌、ましてやWEBページで語ることは無理なのは分かってるんですが、知識として最低限のレスキュー方法についてお話ししたいと思います。これはあくまで知識なのであって、これを読んだからって何一つレスキュー技術の向上にはつながりません。それだけは覚えておいて下さいね。とにかくしっかりしたスクールで確かなインストラクターの指導のもと繰り返し練習して自分のものにして下さい。
はじめに
レスキューの方法を読む前に、まずは必要な装備を確認しておきます。(このどれ一つがなくても確実なレスキューは出来ないという最低限の装備です。決してこれさえあれば大丈夫ってことではありません。)
P.F.D
ライジャケなしでは全てが始まりません。クルマのシートベルトと同じで事故(カヌーの場合は沈)が起きるまではうっとうしいだけなんですが、最近のものは着心地もいいので着てるのを忘れるほど。ベルトやハーネスも正しく装着しましょう。緊急用のホイッスル、ロープ切断用のナイフを取りだしやすい位置に付けましょう。ただし胸や腹にポケットやナイフホルダーのあるものはリエントリーの際ガンネルに引っ掛かって困る場合が多いので、取り付け位置にも気をつけて。ウェア
カナディアンの場合沈しない限りは濡れないので安易に考えがちですが、実はカヤックよりシビアに考える必要があります。カヤックはいつも水を浴びて濡れてるけど、カヌーは沈した場合、全くのドライ状態から急にウエット状態に変わる訳ですから体の受けるショックはより大きいんです。夏の一時期を除きウエットスーツは絶対必要。(真冬はドライスーツ!)コットン素材は絶対避けて、ハイテク化学繊維のお世話になりましょう。最近はトラディショナルなカヌーにも合う「アウトドアっぽい」ハイテクウエアもあるので、お店で相談してみましょう。実は僕も「スポーツっぽい」ウェアは苦手なのでコットンっぽく見えるけど実はハイテクってのを身に付けています。シューズはツアーかワンダリングか、上流か下流かなどによって変わるけど、とにかく泳げるものを選びましょう。その観点からいえば長靴はダメ。試しに泳いでみてください。足首固定されて泳げないから。水圧がかかって脱ぐ事さえできないって知ってる?詳しくは山海堂「これ一冊でわかる着衣泳実技トレーニング」(¥1648)で。
あと、ヘルメットも準備しておきましょう。カヌー専用の水抜けの良いヤツが必要でしょう。ロープ
ここで言うロープとはスローロープ(投てき用ロープ)のことです。水に浮かぶ視認性のよいロープが袋に入ってるもので、専用品がいくつかのメーカーからでています。本来陸から水面の人を助けるためのものだけど、カナディアンの場合は別の使い方をすることが多いですね。カヌーの両端に取り付けるので一艇につき2個必要。浮力体付けてる人少ないけど必要な装備です。アルミ艇やFRP艇など素材自体に浮力のないものは、前後に隔壁を設けて浮力を確保してるけど、ポリエチレン艇やロイヤレックス艇は構造上隔壁は難しいので浮力体(エアバッグ)が必要になります。実際沈したら分るんだけど、コレがあるのとないのとではレスキューにかかる手間が大違い!安いからみんなで付けましょう。Old Town のロイヤレックス艇の場合、普通水面スレスレに浮かぶんですが、浮力体付では完全に水面上に浮かびます。ということは裏返ったまま引っぱることができるし、戻してもほとんど水が入らないっていうこと。楽ですよ!ホント。
その他
レスキューはうまくいっても、つきものなのがケガ。擦り傷、切り傷はもちろん打撲、骨折なんて重傷もありうるからファーストエイド・キットは必携です。市販のアウトドア用を利用してもいいけど、僕は防水性を考えてパッキン付の弁当箱を利用してオリジナルのキットを組んでます。救急法の心得のない人は関連のハンドブックも入れておきましょう。保険証のコピーも忘れずに。
Chapter 5 レスキュー かんたんレスキュ− 次は具体的なレスキュー方法です。この際ハイレベルなやり方は無視して、パニクってても出来る安全確実な方法についてお話しします。
*川のグレードについて
雑誌や川地図などを読んでると良く出てくる「2級の瀬」とか「グレード3の瀬」といった表現。これらは瀬の大きさを示す段階なんだけど、はっきり言って国際的なグレードと日本国内でのグレードはまるきり1ランク違ってるし、実際のところ主観に負う部分が大きいのあんまり当てにならないのかも。(ガイドブックなどのグレードはちょっと大袈裟なことが多い。実際に下って書いたものほどその傾向が強いのは当然ですよね...笑)
とりあえずこれまでに出版された書籍のなかに書かれたグレードの基準を比べてみたのが下の表なんだけど、かなり大きなズレがありますね(笑)。
級 A
「川遊びカヌー」
野田知佑監修B
「カナディアンカヌー」
吉原宜克著C
「カヌーライフ」
カヌーライフ編集部1級 静かな流れで、小さい瀬はあるが、カヌーで下るには問題ない。
静水からゆっくりした流れでさざ波や小石波程度が現れる状態を指し、初めて川を下る人から初心者に対応できる。
波高20〜40cm障害物や高波のほとんどない静かな流れ。いわゆるさざ波程度。
2級 波高にして50cm程度の急流が所々になるが、川の前方は見通しが利いて危険はない。
簡単な急流で、大きな波や小さい渦もあるが規則正しい。やさしい流れで、初心者もほぼ安心して挑戦できる。
波高50〜90cm100cmほどの波が連続するが、進路設定は容易で、険悪な障害物もない。多少のコントロール能力は要求されるが、スカウティングの必要はなし。ビギナーが安全かつ楽しく漕ぎ下れる限界点。
3級 波高100cm。不規則な波や渦が続き、カヌーのデッキに波をかぶる。流れの中に隠れ岩が存在するが事前に遠くから確認できる状態で大きな危険はない。
高い変則的な波の起こる急流で、その急流が頻繁に現れ、渦も発生している。カヌーの進路をしばしば変えなければならず、技術力のない人には漕ぎ続けることが困難となる。我が国の川はこのクラスの状態の場所が最も多い。中級者向き。波高100〜120cm
オープンカヌーを簡単に沈めることができる、大きくてパワフルな波が続く。障害物も増え、的確な流れの読み、複雑なコントロール能力が必要。スカウティングの必要も高まる。ビギナーならほとんど沈してしまう。
4級 波高は100cmを超し、見通しも利かず絶対に下見が必要な瀬
長く難しい急流で、高い荒れ狂う不規則な波と渦がある。不規則な流れを読み、すばやく軌道修正する技術力を要求され。上級者向き。オープンデッキカヌ−のホワイトウォ−タ−艇で航行できる、一般的限界で、レスキュー能力がことのほか重要になる。波高130〜150cm
難易度の高い、複雑な激流が続く。時として険悪な障害物やキーパーホール(脱出できない逆巻く瀬)も出現する。高度なパドリングテクニックが必要で、スカウティングと陸上のレスキュー体制が不可欠。通常エキスパ−トパドラ−のみのフィ−ルド。
5級 頭を越すような大波になり、隠れ岩の多い瀬が連続する。上級者の高度なテクニックが要求される。生命の危険もあり、下見はもちろんのことレスキューの準備も必要だ。
非常に難しい、長くとぎれのない激流で、不規則な高い波と、難しい渦が発生している。エキスパート向き。オ−プンデッキ・カナディアンカヌーでここまで挑戦できる人は真のプロフェッショナルであり、高度な流れの読みと技術力なくしては実現しない。波高200cmぐらい。
長く複雑な進路と、障害となるホールが続く。下るには非常に高度なテクニックを要する。スカウティング、レスキュ−要員配置は不可欠。生命への危険度も高い。
6級 カヌ−では漕行不可能なところ。
ひとことで言えば「生命の危険なくしては試みることはできない」極限状態の流れで航行は不可能である。
5級の難易度に。究極の進路選択が必要。生命への危険度も究極的に高まる。通常の見識としてこのグレードの瀬は日本に存在しない。
写真1 グレード1〜1.5 写真2 グレード0.5〜1
Aなら3級、Bでは2級、Cでは1級とグレ−ドが分かれる。でも水深が充分でストレート。しかもジャンプ台付きで危険はほとんどない瀬。1〜1.5級ってとこかな。思わず「キャッホー」系の声が出る。痛快!!こういうの大好きです。
波の高さでは1級とグレードは低いけど、上流部で急勾配で流速20km以上。隠れ岩だらけで400m以上も続く(僕にとっては)地獄のような瀬。ヘルメットとプロテクター着用中。実はちょっとチビりそう(涙)だけど中級者になればこんなの鼻唄まじり。
上の写真1なんて乗ってる本人は3級の瀬だと感じてるけど、こうやって冷静に見れば1級〜1.5級だし、写真2のように400m以上も続く隠れ岩だらけの早瀬は危険度も高いし実際恐いけど、波の高さで言えば1級以下。それじゃ2級や3級の瀬ってどんなの?ごめんなさい、恐くて写真なんて撮ってる余裕はない!...というより経験があんまりないんです。トホホ...(笑)
瀬の写真集(笑)
上の瀬の下流部 同じ瀬をカヤックで行く これでも1〜1.5級 思わず笑顔。楽し〜い!
...でもカヌーにひとりで行く時の一番恐ろしい瀬は我が家にある。
その名は「よめさんの瀬」6級である(涙)
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