夕暮れの大阪南港を出航するさんふらわあ(みやざきエキスプレスデッキより)
『何事も直前にならないと決まらない、一年中“予定は未定”な我が家。そのくせ、決まる時は衝動的とも言える早業で全てを決定し、段取りを済ませてしまうのも特徴だ。去年の西表島は丸二日で全ての予約を終えてしまったし、乗鞍登山&上高地トレック&万水川DRなんて計画から出発まで1週間。数年前のエアーズロック登山に至っては、買い物の途中に思い立ってそのままショッピングセンター内の代理店に飛び込んでその場で決めちゃったし...。そんなワケで、今年の夏の予定も一瞬にして決定。
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例によってMaakunがどこかの本で仕入れてきたネタを秘書検定資格も持ってる優秀なツアーコーディネーター(笑)のともちゃんがチョイチョイとプラン化。で、朝目覚めてから今日の行き先を決める“元・放浪の旅人”な僕が数パターンのルートプランを書き上げる...あれよあれよと言う間に(正味一昼夜)決定し、昼休みに乗り継ぐフェリーも民宿もキャンプ場も全ての予約完了!あとはガイドさんを誰にするか?DiscoにMTB4台と久々のテントキャンプの道具をどうやって積むのか?それだけクリアするだけだ。行き先はナイショだけど(笑)、10時間オーバーの過酷なトレッキングもあるハードな旅なので、Maakunが小学生でAzuの体力もアップしてきた今年が最初で最後のチャンス!待ってろ●●●!でも、お天気だけは良くしてね(笑)↓あっという間に10册の“るるぶ”が!(爆笑)』
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...なんて日記に書いたのは6月23日。まだまだ先の話だと思ってたけど、あっという間に旅立ちの日を迎えたのである。今日から一週間、短いけど夏のバカンス。屋久島と九州を回る予定である。
昨日までに完了できなかった仕事を出発15分前に片付けて、14:30自宅を出発。この暑さのなかをMTBでポタリングするのは命に危険が及ぶだろう(笑)ってことで、当初の予定とは違ってMTBを積んでないのでDiscoのカーゴルームはがら空き。わざわざジェットバックを載せる必要もなかったほどだ。
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大阪南港かもめ埠頭に到着
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客室から見た夕景
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名阪道は空いてたけど、大阪市内がちょうど通勤ラッシュと重なって、大阪南港・かもめ埠頭に到着したのは17:20。搭乗手続きを済ませた後は港を散策して時間を過ごす。学生時代に関西汽船「さんふらわあゼロ」に乗組んでたこともあって別府を往復するたび眺めてた懐かしい場所だけど、もうすっかり景色が変わってしまって戸惑いを感じるほど。
搭乗開始とともにマリンエキスプレス「みやざきエキスプレス」(15000t)に乗船して、一等洋室Aにチェックインした後、まずは展望風呂で汗を流すことにする。Maakunとふたり並んで入る展望風呂の窓から眺める南港の倉庫群の上に美しい虹が姿を現す。
『なんか、オレたちの旅立ちを祝福してくれているみたいだよなぁ!』
少し温めのお風呂に肩まで浸かって、太陽の傾きとともに刻々と変化する虹を飽きずに眺め続けた僕らだった。
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一等室ではしゃぐAzu
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Maakunは何を想う?
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展望風呂の窓からは虹が
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僕らの一等洋室Aは特等室に隣接していて船首に面した素晴らしい客室。船首を西に向けた“みやざきエキスプレス”。船窓からは西に沈みゆく夕日で黄金色に輝く空が眺められて息を飲む美しさ。
日没まで夕陽を眺め続けた後、船内のレストランへ。バイキング形式のレストラン、値段もリーズナブルで美味しくて、自分が働いていた頃のフネメシとは大違いで驚き。そして夕食とともにお待ちかねのビールをプシュッ!(takabooさんじゃないけど...笑、フェリー旅はこれが楽しみなのである。)ほろ酔い気分のまま船室に戻り、備え付けのTVでBS放送でサッカーのアジア杯を観ながら眠りにつくのだった。
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展望デッキにて
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美しい南港の夕暮れ
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自宅14:30………17:20大阪南港かもめ埠頭19:30……マリンエキスプレス“みやざきエキスプレス”……(泊)
高知沖にある熱低(数時間後、台風11号“MALOU”に変わる)のせいで揺れ(ピッチング)が大きい“みやざきエキスプレス”。元・船員(笑)の僕はともかく、Mamaが少し船酔い気味だ。8:30、豪雨の宮崎に到着。無事上陸した僕らは宮崎名物フェニックスが風雨に大きく揺れる宮崎市内を抜けて、宮崎道〜九州道で一路鹿児島を目指す。雨は覚悟していたものの対向車の上げる水しぶきが車高の高いDiscoのフロントスクリーンを洗うほどの豪雨に、意気消沈(涙)。口には出さないけど家族全員が『どうしてよりにもよって旅行初日が雨なのよ...トホホ。』と思ってるに違いない。
ところが!高速を走るうち、霧島あたりから雲間に青空が少しづつ覗き始め、えびのJTからは快晴!急に饒舌になる僕らだ。10:20、2時間足らずで鹿児島フェリーターミナル(FT)に到着。
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鹿児島フェリ−タ−ミナルからトッピ−に乗り込む
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AzuとMaakunの向こうに桜島
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隣接の駐車場にDiscoを停めて、遊び道具の入ったザックやスーツケースを手分けして持参して屋久島行きの水中翼船“トッピー”(=トビウオの意味)乗り場へ。11:45種子島経由屋久島行き“トッピー4号”出航。桟橋を離れてすぐに浮上したトッピーは南に針路をとり錦江湾を80km/hオーバーで疾走する。左手に桜島。右手には美しい山容を誇る開聞岳。いつ見ても美しい姿である。
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80km/h
overで疾走する水中翼船トッピー
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錦江湾から望む開聞岳
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錦江湾を出てしばらくすると、右舷方向の水平線に異様な雲の塊が見え始める。晴れ渡った水平線にそこだけが真っ白に輝いている。『あれってもしかして屋久島じゃない?』ただの雲の塊でしかなくて島影は一切見えないけれど、初めて見る僕らにも屋久島だと判る“特別な”雲なのだ。
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間もなく船窓に“雲、湧き上がる島”が姿を現す。
これぞ屋久島!まるでモスラの故郷のようだ...
(この光景が見たくて海路を選んだのだ!...ホントは¥の都合だけど)
トッピーが経由地・種子島を出ると、雲に隠された高峰の麓がくっきりと視認できるようになる。僕らは二階席から一階席の船首部分に席を移してグングン近づいてくる屋久島を飽きずに眺める。僕らが飛行機ではなく船旅を選んだ理由...それは、もちろん予算的理由もあるけど、“洋上のアルプス”とも称される2000m近い高峰が連なる屋久島を海抜ゼロメートルからこの目に焼き付けたいと思ったからだ。クルマで1時間足らずの距離をわざわざ一日かけてカヌーで下る...そんなことを楽しいと感じる僕らにとって、スピードは必ずしも正義ではない。青い海に渦巻くように湧き上る真っ白な雲をまとって浮かぶ屋久島を見ること...もしかすると、これは一番の贅沢なのかもしれないと思うのだ。
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種子島に寄港後、一直線に屋久島へ
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ダイナミックな光景が眼前に広がる
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14:20トッピーは屋久島東部・宮之浦港に入港。桟橋で予約を入れておいたレンタカー屋さんの出迎えを受け、三菱ekワゴンを借り受けて(8/3 15:00から4日後の8/7 7:00までで保険込み¥10500には驚いた!走行2000kmの新車同様だし。)、そのまま民宿に入る予定を変更して、遊び場の下見を兼ねて反時計回りに島内一周に出発することにする。レンタカ−屋のおじさんによれば、遊びながらでも十分に日没までに回れるとのことだ。
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上陸後、レンタカーで島内一周に出発(一周約100km)
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どのガイドブックを見ても酷評されてた島内の道路事情だけど、紀伊半島の三桁国道なんかより断然高規格で走りやすい。随所にコンビニがあるわが町なんかよりずっと都会な宮之浦地区を抜けると、ある地点から突然右手に見える海の色が変わる。MacOS9のデスクトップを少し濃くしたような色...沖縄のエメラルドグリーンでも紀伊半島の群青色でもない美しい青さだ。左手の山並みは和歌山南部・串本の森を少し南方系にした雰囲気。フロントスクリーンに伸びる道路を隔てて左側の緑と右側の青のコントラストが目に眩しい。
小さな峠をいくつか越えて15:00永田いなか浜に到着。「屋久島うみがめ館」を訪れる。名前からすると、いかにも観光客相手のドライブインみたいな印象を受けるけど、実際はウミガメ保護と学術的研究を行う前線基地のような雰囲気。
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HPに『ウミガメは単なる観光地の特産物ではありません。興味本位のツアーは御遠慮くださいますよう、重ねてお願い致します。』とあるように、決して観光地ではないのである。
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思いの他小規模な建物に入ると、手作りっぽいけど非常に内容のある展示が目白押し。入館してすぐに声を掛けたフレンドリーな感じのスキンヘッドのスタッフから聞くレクチャーは本当にためになることばかりだった。
中でも僕が驚いたのはウミガメの行動範囲の広さ。屋久島でマーキングされたウミガメの確認された場所を示すピンが刺された北西太平洋の地図。ピンは日本全土ばかりかフィリピンまでにも及ぶ。中でも我が三重県・紀宝町の位置に刺されたピンは郷土愛を刺激されてちょっと嬉しかったりするのだ(笑)。
うみがめ館から県道を挟んで広がるいなか浜に降りてみる。随所に産卵ポイントを示す杭が立っていて、そこを踏まないように最短距離で水際へ(海へは一直線に。横方向の移動は波打ち際を...これがいなか浜を歩く時のルールである。)。
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屋久島ウミガメ館にて
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花崗岩の砕けた粒が粗く淡いベージュの砂浜の向こうには、沖縄とは違った青さの海。その水はこれまで見たどの海よりも透明度が高いように感じた。
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駐車場の茂みの向こうに...
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いなか浜のコバルトブルーの海!
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荷物を減らすために履いているトレッキングシューズがミスマッチ(笑)
3〜40分をいなか浜で過ごし、僕らは永田の集落を後にして西部林道に入る。
西部林道は、永田から栗生を結ぶ13kmの林道で、この林道を取り囲む地域は、学術参考林、生態系保護地区、国立公園、そして世界遺産登録地域に指定されているほどの貴重な自然が残され、まさに屋久島海岸部の至宝とも言える場所である。それだけに観光資源としても魅力充分。
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世界遺産区域・西部林道はヤクザルの楽園
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以前、道幅拡幅工事の計画もあったけど自然保護の観点から、従来のままの道路が残されたという経緯があり、そんなわけで観光バスはもちろん普通車でもまともに通行できないスゲェ道だと散々脅かされてたけど、実際に走ってみると素晴らしく整備された高規格な道路だ。(ちょっと整備が行き届き過ぎと感じた)
『落石注意』が道路上にある落石に注意せよ、という意味ではなく落ちてくる落石に直撃されないように注意せよ、という意味な紀伊半島の山道(笑)。ガードレールなしで崖下100m立ち木なし&対向車に出会ったが最後、バックで1km!なんていう“命懸け”の道を走り慣れてる僕にとっては、路肩がしっかりしてて離合ポイントが数多く設けられた西部林道は全く緊張することはない。
西部林道に入って間もなく、当たり前のように野生のサルが出現。ヤクザルである。
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名前からしていかにも怖そうで、目でも合わせようものなら『なんじゃ、ワレェ!』と凄まれそうなサルなのかと思いきや(笑)、何とものんびりした雰囲気を醸し出す森の哲人ってな佇まいである。ニホンザルの亜種なんだけども、亜種とは言っても明らかにニホンザルとは風貌が異なり、まるで蓑を着たかのような長い体毛と逆立って真ん中分け(パッと見は頭がハートマークにも見える...笑)の歌舞伎役者のような髪...頻繁にニホンザルを見慣れてる我が家にとっては小柄な彼らが可愛く見える。
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小学校で『ポケットにいつも小石を入れていて、サルを見かけたら睨んで石を投げつけて大声を出して追いかけましょう。』と、何とも正しい指導をされてる(笑)我が家の子供達だけど、ここはヤクザルのテリトリー。僕ら侵入者はそっと通り過ぎるのが正解のようである。
『サルはもういいわ。家でも見られるし。』道路を頻繁に横切るヤクザルに辟易させられた頃、今度は鹿が道路脇に現れる。我が家の近くにも鹿はいるけど、道路に出て来るのはたいてい夜。こんな時間に木漏れ日のもとで鹿を見るのは奈良公園か大台ケ原ぐらいのものなので、子供達は大喜び。
『わぁ〜可愛い!』ニホンジカの亜種・ヤクシカだ。僕らとヤクシカのは距離にして3m。カメラを向けるとキョトンとした顔でじっとこちらを窺っている。まるで写真を撮ってくれと言わんばかりである。我が家の裏山にいるような大型の鹿ではなく(あいつらはDiscoのドライバーズシートに座った僕を窓越しに見下ろすほどデカイ!)大人の顔をしてるのに明らかに小柄でやけに可愛い。
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そんでもってヤクシカの楽園でもある
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『いやぁ、ラッキーやねぇ、ヤクシカをこんなに至近距離で見られるなんて!』そんな風に無邪気に喜んでたら、その後カーブを曲がるたびにシカシカサルシカサルシカシカ...(笑)。夕方の西部林道にはナンボでもいるのである。
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西部林道から見た口永良部島
西部林道を抜け道路に中央線が現れると、間もなく滝の看板が目に入る。県道を右に折れてしばらく進むと九州一番の高さを誇る日本の滝100選・大川の滝(おおこのたき)だ。(この滝の手前には、これまた名水百選の大川湧水がある。)
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大川(おおこ)の滝
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駐車場から滝への遊歩道の脇に川へアクセスできる場所もあるけど、今日は少し濁りが入ってて我が家の基準では泳ぐのはちょっと...な感じ(普段は澄み切った水をたたえてるんだろうけど...)なのが残念。
大川の滝を後にして4kmほどで永田から34km走って初めての集落である栗生(くりお)に入る。Mama&子供達の強い希望で、青少年旅行村のあるカマゼノ鼻にある塚崎タイドプールへ。
狙ったわけじゃないけど、偶然干潮に向う時間帯ということで、そこそこ潮が引いていて田んぼの畦のように仕切りがあるふたつのタイドプールを中心に周辺全てがタイドプールと化している。まだ荷物を解いてないし、荷物を減らす目的で全員がトレッキングシューズを履いているので、水に入ることはしなかったけど、どっちみち深さは膝までほど。小さめだけど色とりどりの魚やカニ、ヤドカリなどの観察を楽しむことが出来た。(子供達によれば『ここの魚やカニはトロい。』らしい。手掴かみで簡単に捕まえることができるのだ!)
タイドプールは遊び始めるとキリがないので、ほどほどに切り上げて次なる目的地、平内海中温泉に向う。
大平洋の荒波が打ち寄せる磯の際にあるので、満潮になると海中の没してしまうので干潮の前後2〜3時間しか入ることができないという野趣溢れる温泉(しかも源泉が45℃なので、いい湯加減は干潮2時間前のほんの1時間ほどらしい)ということで、今日の時間帯はベストタイミング!「小奇麗だけど循環式の温泉なんて興味なし。温泉はやっぱり掛け流しの天然だよ!」な僕とMaakunは入る気満々だけど、お日さまさんさん!更衣室なし!水着禁止!しかも混浴!な条件は、うら若き乙女と、元・うら若きおばちゃんにはちょっと辛いようだ。
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『誰が小学4年生と3●歳の裸体を見て喜ぶんだよ!誰も見てないって!』と思いつつも口が裂けても言えず(笑)、実際に下見に行ったらおっちゃんが3人並んで『どうだぁっ!』とばかりにリッパな(リッパではなかったけど...笑)アレを見せつけてくれてる...そんなわけで海中温泉入浴は断念した次第。
(夜は女性が多いそうで、家族連れじゃなかったら、深夜こっそりと宿から片道40分掛けてでも来たいと切に願う僕であった...笑)
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ただ下見をするだけのつもりが、何度も止まって結構遊びながら回ったもんだから、時計の針は18:00を回る。いきなり民宿の夕食時間に遅れるってのも印象が悪いので、ここからはただひたすらに安房を目指してクルマを飛ばす。尾之間からは比較的建物が多くなり、“まっぷる”で見たことのあるメジャーなホテルや民宿&ペンションが点在している区間だ。海中温泉から20分、安房川を越えて「旅人の宿“まんまる”」に到着。
まずはチェックインを済ませて荷物を運び入れてから海の見える本棟で夕食。トビウオ、旭蟹、亀の手...屋久島特産の食材をふんだんに使った和風のコース料理は味、ボリュームともに素晴らしい!家庭料理じゃなく、料亭のような上品なお料理に感激だった。
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旅人の宿「まんまる」(安房)に到着
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「まんまる」の夜景
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夕食を堪能した後は美しい中庭の先にある別棟の展望風呂へ。海側が全面ガラスの広いお風呂に4人で並んで入っていると、タイミング良く正面の大平洋から月が昇ってくる!!時折、月が流れる雲に隠れると雲間から伸びる光の帯が海面を照らして、それはもう言葉に出来ないほどの美しさなのだ。
『なんだかさぁ、今日だけでも十分に満足じゃない?』
『そうよねぇ、明日からず〜っと雨でもいいわって感じもするわねぇ。』
早くも大満足な僕らは、明日の白谷雲水峡トレッキングに備えて早めに床に着いたのだった。
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「まんまる」の窓からは月光に光る海が一望できる
宮崎FT8:30……宮崎道・九州道……10:20鹿児島FT11:45……水中翼船“トッピー”……14:20屋久島・宮ノ浦港
宮ノ浦港14:40……レンタカー……15:00うみがめ館/永田いなか浜15:30……西部林道………16:35大川の滝
大川の滝16:45……16:50塚崎タイドプール17:20……17:30平内海中温泉17:40……18:00旅人の宿まんまる(泊)
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