3月21日 “伊勢槍ヶ岳”こと(笑)錫杖岳登山
湖面の向こうにそびえる錫杖岳(676m)
目覚めてベッドルームの天窓を見あげると、青い空を流れる白い雲。強い乱視の僕にも判るほど鮮やかな青と白のコントラスト。昨日の曽爾高原はどうも不完全燃焼だったので、空が僕を誘っているかのように思えるのだ。リビングから聞こえてくるのは、Maakunが低学年でハマった絵本のアニメ化でAzuがすっかり夢中な『怪傑ゾロリ』のテーマソング。...ってことは午前7時すぎってことか?
『今日はどうするの?』『どうするってザックも登山靴もDiscoに積みっ放しだし、山に登ろうよ。』
そこへ僕らの会話を聞きつけたMaakunがやってきて...『登ろう!錫杖岳!』
その一言で数年前から彼が狙ってた錫杖岳登山が決定。
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木立の中をゆく
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3年ほど前に買った“三重の山”(山と渓谷社)という県内の山のガイドブック。本来は僕が自分のために買って書斎の書棚にあったのだけど、今ではMaakunの本棚に移動、いつの間にやら彼の名前が書いてある。その本の中で一番のお気に入りが錫杖岳なわけである。
なぜ?どうやら山のカタチが尖ってて登山意欲をそそられるのが一番の理由らしい。確かに美しい女性とは付合ってみたくなるのと同じく美しい山には登ってみたくなるよね(笑)。
錫杖岳は、別名・雀頭山。“錫杖”にしろ“雀頭”にせよ、鋭く槍のように尖った山容を意味してるわけで、僕が中学生の頃よく登った経ケ峰(通算で数十回は登頂してる?何たって、僕らの肝試しは“深夜の”経ケ峰登山だったから...笑)から望むその美しい姿を見て、僕らはよく“伊勢槍ヶ岳”と呼んだものだ。
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普段どおり朝食を食べて、コンビニで昼食のカップ麺とおにぎりを買い込んで錫杖湖湖畔の登山口に着いたのが10:30。湖畔から眺める錫杖岳は麓から中腹までの針葉樹林と中腹から8合目までの疎らな低木、そしてあたかも森林限界点がそこにあるかのような山頂付近の岩場、と本当に北アルプスの高山のような佇まい。たった676mってのが信じられない感じだ。
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クルマをパーキングにデポし、錫杖湖周遊道路の脇に立つ立派な「錫杖岳登山道」の標識の脇から下ノ垣内登山道へ(10:30a.m.)。最初は何てことない幅の広い林道を15分ほど。
林道の終点から左に折れて(10:45a.m.)、幅30cmほどの深く掘れた溝のような道を辿り、滑滝状の滑りやすい渓流を横断(11:06a.m.)すると15分ほどで杉木立の中を木の根の階段が延々と続く険しい道になる。
大人でもなんとか手をつかずに上がるかどうかってな段なので、胸の高さになるAzuはかなりキツそう。でも、なんとかよじ登って、杉が疎らなヒノキに変わると目前が明るくなって関町方面からの尾根道に合流(11:30a.m.)。登山道脇に座って一休み。初めての休憩である。
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滑滝状の滑りやすい渓流を横断(甘く見ていました...涙)
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Azuちゃん、がんばるっ!
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676mという標高を見て完全にナメ切ってた僕ら。林道からずっと急峻な山道に汗だくなのである。Papaは正直なところそれほどでもないんだけど、他の3人はこれまで登ったどの山よりもシンドイ(涙)との感想。『これだったら乗鞍の方が楽だよね。』3000m級の山と比べてため息をつくMaakun。確かにそんな感じである。
そこから少し下って、最後の上り。いよいよ錫杖岳の“槍”の部分に差し掛かる。
腕のプロトレックの高度計の数字がぐんぐん大きくなってゆく。(登山道脇の標高表示がかなりイイカゲンなのには笑ってしまう)
階段道の途中で落合の郷からの登山道と合流(11:55a.m.)。さらに階段を上がると数字が650mを超える場所で目の前の視界がパッと開け、正面に立派な休憩小屋が現れる(00:05p.m.)。
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『おっ、お嬢ちゃん、よく頑張ったね!』小屋で休む人から声を掛けてもらってAzuもちょっと嬉しそう。(但し彼女は3歳であの急峻なエアーズロック登頂してるんだけど...笑)そこからは、大岩を回り込むように登ると頂上である。登頂成功!(00:07p.m.)
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山頂は非常に狭い岩場。
ピ−クの小さな岩の上に立つと急峻な独立峰の山頂らしく、遮るものがない360°の大パノラマを堪能することができる。
目前の伊勢平野の海岸線を辿ると、先週行った伊良湖や三角形の神島もかすかに見えて最高の眺めである。
ただ、山頂は山麓から見上げて想像してた以上に狭く、そして想像してた以上に混雑している。普通は後から登って来た人のためにザックを下ろすだけでもピークだけは避けるのが常識なのに...十数人の中高年の人達が、信じられないことにその狭い岩場を占拠してお弁当を広げている。中には通路にザックを置いて、あとから来た人がつまずいて転倒しそうになってキッと睨んでる大馬鹿ものも(!)。そりゃイカンだろ、アンタが悪い!
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90分で登頂成功!
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...喉元まで言葉が出かかったけど、多勢に無勢、また『遊びに来てるのに喧嘩せんといて!』とMamaに叱られるといけないので、記念写真だけ撮って早々にピークを後にする。自分も立派な中年だけどさ、最低限のルールは守ろうよ!自分の親の世代に少々ゲンナリな僕らだった。
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岩に覆われた切り立った頂上に立つ(なんか“皇室アルバム”風ショットだな...笑)
頂上からは360°大パノラマ(伊勢湾方面)
頂上直下の休憩小屋は広くてしっかりした屋根のあるスペース。ここからの眺めもピークとそれほど変わらず、なかなかのもの。4人のデイパックに分けて入れたランチセットを取り出し、今日の一番重い荷物である水を鍋に注いで、カップ麺を作る。春とはいえ、少し肌寒い今日のような日(平地より6.76×0.6℃=約4℃低いし。)には、どんな豪華な料理よりもウマイのがこのラーメンなのである。
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頂上下には立派な休憩小屋が
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お腹いっぱいになって余裕の笑顔
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座り心地の良いテーブル&ベンチに座って、鍋の上に載せて暖めたおにぎりを頬張り、ラーメンを啜り、ちゃんと食後のコーヒーを煎れる...なんとも文化的な感じ。普段ならかなり質素な部類に入る食事だけど、場所を変えると“こんなゼイタクをしていいんだろうか?”なんて幸せを感じるから不思議である(笑)。
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休憩小屋で1時間を過ごし、僕らは重くなった身体に軽くなったザックを背負い、下山を開始する(00:30p.m.)。
急勾配の階段を下り切ったところで、往路の下ノ垣内道ではなく別ルートの落合登山道に折れ、そこからひたすら階段を下りる。距離は2000mと往路の2/3しかないけど、ただひたすら続く急勾配の階段道にMama&Azuの膝がすぐに悲鳴をあげる。(段差が大きいので一段一段飛び下りることを余儀無くされるから)
2〜300mごとに登山道脇に木製のピクニックテーブル&ベンチが、そして500mごとに真新しい距離表示看板(←頂上500m 1500m登山口→)が配置されていて、どうやらこちらがメインルートらしいんだけど、これを登るのはヤダなあって感じ(笑)。“頂上まで25分 老人は45分”という看板裏の落書きに爆笑しつつ、早くも笑い始めた膝をかばいながら耳がツ〜ンとなるほどのスピードで僕らはひたすら下る。
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帰りは別ルートで(100%階段で膝が死にそう)
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駐車場から望む錫杖岳
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美しい杉木立を抜け、目前にお寺の大屋根が見えてくると、いよいよゴール(14:20p.m.)。お疲れさま!
“低山をのんびりトレッキング”のはずが結構ハードな登山訓練みたいになっちゃったな。
荷物を積込んで湖畔を少しドライブしても時計は、まだ3時前。
『あ〜猛烈に温泉に入りたいっ!』Mamaの一言でそのまま榊原温泉“湯元・榊原館”へ。
ここは数あるアルカリ単純泉の中でも、とびっきりのヌルヌル感でお肌スベスベになる温泉。日もまだ高いうちから温泉でゆったりする気分は背徳の香り(笑)。しかも風呂上がりに食べた真珠粉入り(!)七栗アイスクリーム、最後の2コってことで『お金要らんわ!』とタダ!何だか知らないけど、ヒジョ−に幸せな気分で帰宅したのでありました。
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で、帰宅するなり家族に突撃アンケート!Q1.『あなたは、もう一度錫杖岳に登りたいですか?』
答えは...Azu『もうヤダ!』Mama『お願いだから山登りは勘弁して!』Maakun『もういいよ、来年まで行かない!』
そしてQ2.『それでは山登りとカヌー、どちらが良いですか?』みんな声を揃えて『カヌー...と言いたいとこだけど、その手には乗らないわよ!』僕の意図を全てお見通しのようで...
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3月20日 倶留尊山登山...は断念(曽爾高原)
お彼岸といえばお墓参り(笑)。子供の時から祖父母にしっかりと教え込まれているので、これを外すわけにはいかない。V字谷の底からよじ登るように上がった急斜面にある我が家のお墓。ちょっとした登山道よりも急傾斜なので、登山靴は必携なのである。家族全員でお墓参りを済ませ、そのまま峠を越えて曽爾高原へ。
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斜度40%の道を通って故郷のお墓参り
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ふきのとうが可愛い
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今日は曽爾高原・おかめ池の後方にそびえる倶留尊山に登る予定である。1時間ほどのドライブで曽爾高原駐車場に到着。3月だし、人っ子ひとりいない閑散とした様子を思い浮かべてたんだけど、駐車場は満車!しかもそのほとんどが軽トラック...な、なぜ?ふと見ると、登山道入口に『野焼中 危険・立入禁止』の看板が!まぁ、よりにもよって年に一度の野焼きの日にやってきてしまったのである。(曽爾高原は奈良・若草山と同様に野焼を行う)しかも、到着とほぼ時を同じくして雨が降り始める。あ〜あ、せっかく来たけど、今日は登山は無理だなぁ。
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野焼き当日(...つまり今日)の曽爾高原
(夏の曽爾高原はこちら)
家族みんながへこんで帰ろうと再びエンジンに火を入れた瞬間...
『あっ、看板を抜いてるっ!』どうやら野焼きがタイミング良く終わった模様。
『倶留尊山登山は無理だけど、野焼き直後の曽爾高原なんて見るチャンスないから、ちょっと観て行こうよ。』僕とMaakunの言葉に女性陣、渋々ながら同意。用意したザックや登山靴をカーゴルームに残し、ジャングルモックのままDisco備付けの折畳み傘を開いて、
“観光客スタイル”で観にいくことに。
舗装された坂道を上がると、僕らの前に真っ黒に焼け焦げた草原が広がる。まだ各所で白い煙があがっていて炎もちらほらと見える。...まるで隕石が落下したシベリアの写真を見ているかのようだ。僕らを包む強烈な臭い。『さあ、帰ろうか?』そう言い掛けたその時...
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雨に登山の意欲をすっかり失う我が家
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でも、ちょっとだけ登ってみる?
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『おっ、いいねぇ〜家族で傘の色が違う所がスバラシイ!絵になるから、ちょっと池の周りを歩いてみてくれないかなぁ!』休憩小屋にいた数人のアマチュアカメラマンからモデルの依頼(笑)。
なんで、オレたちがあんたたちの写真のアクセントを演じなきゃなんないわけ?なんて思いつつ、ノリの良い我が家は、ついつい調子に乗って『はいはい、いいですよ!で、どのぐらい離れて歩こうか?』(笑)。池の周りをモデル気分でお散歩(ただし、後ろ姿)。池を半周したあたりで、『せっかくだし、もうちょっと上まで行ってみる?』とMama。誰だよ、こんな雨の中歩くのヤダって言ってたのは!?そんなわけで真っ黒に焼け焦げて、雨が落ちてシュンシュン音をたててる原野を伸びる一本道の階段を僕らはどんどん上がって行く。
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雨は雪に変わる
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亀山峠(810m)まで登っちゃったよ!
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灰色の空、焼け焦げた一面の原野、地味な色彩の中、ひときわ輝く赤い炎のそばまでやって来ると、やっぱり欲が出てくる女性陣。『ねぇ、Papa、あのてっぺんまで行っちゃダメ?』と山を見上げながらAzu。おいおい、さっきの話はどうなっちゃったわけ?ま、いっか(笑)ってことで、斜面を登って標高810m・亀山峠に到着。なんかちょっとした達成感。峠に着く頃降りしきる雨が雪に変わり、風も出て体感温度が一挙に下がったので観光客スタイルではちょっと辛くなり、その先は当然断念して斜め下から吹き上がる雪を傘で避けつつ下山。なんか、運が良いんだか悪いんだか...微妙な一日だったな。
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亀山峠から見下ろす曽爾高原とおかめ池
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