10月11-12日 お・ソロ大井川&お父さんだけの気田川
雨上がりの気田川をゆく“お父さんズ”(気田川)
大井川砂漠のイメージ 大井川...あれは1996・春。カヌー仲間から誘われた某自動車メーカー主催の“なんちゃって”キャメトロ「大井川リバーレイド」が大井川との出会いだった。当時はインターネットもなく、情報と言えば「日本の川地図101」と「カヌージャーナル」だった頃。それでも、手を尽くして大井川について調べたのだが...当時の愛車FFボルボ850では進入不可で水面にカヌーを下ろすまでに疲れきってしまいそうな広大な河原、地元では自嘲を込めて「大井川砂漠」とまで呼ばれる乏しい水量、幾多のダムによって遮られた流れ...4歳の息子と身重の妻を残してまで出かけるに値しない川...大井川はそんなイメージの川なのだった。 ところが、時代は流れインターネットの時代が到来。某サイトのBBSに書き込みをされていたtakabooさんという方が、その大井川を準・ホームリバーにされていることを知る。彼のHPを読むたび、大井川のイメージが良い意味で崩れてゆく。 で、今回、「ごめんなさい大井川」の旅に出ることになったというわけだ。 牧之原ICで東名に別れを告げ、まさに砂漠のように広い大井川の河原を右手に見ながら僕は上流を目指す。 スノーピークウェイVer.野宴会2000でカシータを牽いて訪れた久野脇キャンプ場を越え、すぐにゴールポイントである駿河徳山に到着。駅の位置とゴールの河原への進入路をチェックして、さらに10分ほどで今日のスタート・千頭(せんず)駅前の河原に到着する。 9:30a.m.、4時間ちょうどだ。 駅前に広がる広大な河原は堤防付近が親水公園風に整備され、その先のダートも砂利採取のためかフラットで固く踏み締められており、四駆でなくとも容易に進入できる。最も水際に近い上流側の河原にクルマを停め、カヌーと安全装備、そして防水トートを下ろす。 今回はソロということで荷物が極端に少なく若干バウが浮き気味なので、河原の10kg程度の石をバウに載せて喫水線をフラットにして10:30スタート。 『箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬ大井川』と馬子唄にも歌われるほどで大雨の後は殺人的な大増水に見舞われる大井川だけど(超広い河原...つまり氾濫原がそれを物語ってる)、今日の水量は最低レベル。宮川はおろか、その支流・某アキヒロ川よりも細い10mほどの川幅に面喰らいつつ、川底に点在する岩を避けて進む。南アルプスを源流に持つ隣の天竜・気田川と同様に青白く澄んだ気持ちの良い水質なので、川底の様子はとても確認しやすいけれど、スラローム競技状態でパドルを休ませる暇を与えてくれない。でも、ソロ&カヌーの喫水をフラットにしたおかげでどうにか浅瀬をクリア。takabooさん情報で浅瀬続出〜ライニングダウン必至を覚悟していたが、気田よりも速い流れに乗って意外なほどスムーズだ。 45kmを下って橋が1本!ってな人工物の極端に少ない北山川〜熊野川とは違って、ここ大井川は次々に橋が現れて初めてなのに川地図なしでも自分の位置を把握するのに苦労しないほど。川の難易度は(今日の状態に限れば)宮川よりも若干易しいレベル。時折、気田に似た直角カーブもあるけど、盛大な返し波の白い波頭から察するにアンダーカットロックは皆無で、仮に岩に突撃しても優しい返し波がフネを安全に戻してくれそうだ。 雰囲気の良い河原に上陸してコーヒーを煎れ川に浮かんだりして遊びつつ、ため息が出るような美しい吊り橋や、そびえ立つ立派な聖牛(水流を弱め土砂の流失を防ぐための伝統的な構造物)を幾つも越え、チャポチャポランランランの瀬を数カ所クリアすると目の前にグレーの橋が現れる。ん?えっ?あれっ?も、もしかして宗徳橋?...そう、そこは紛れもなくゴールの駿河徳山の河原なのであった。 時計は11:40a.m.、アナログ時計だと電池切れを疑うところだけど、CASIOプロトレックはデジタルなので11:40と表示されてれば間違いなく11:40なわけで、ホントに11:40なのである(笑)。 カヌーから積荷を降ろし、濡れたウェットスーツやウェイディングシューズを着替えていると、11:50発の千頭行き列車の汽笛が谷に響き渡る。次の列車は12:43なので、河原でランチタイムにすることに。 アンチョビスパゲッティを食べ終えた後は、伏せたカヌーの下に道具を入れて防水トートだけを手に駿河徳山駅まで徒歩5分。タイミングよく千頭行き列車が駅に入ってくる。ん?こ、これは...オレンジ色の車体に紺のストライプ...いつも見慣れた近鉄特急“ビスタカー”の車両である。SLで有名な大井川鉄道だけど、全国私鉄の払い下げ車両を使用していることでも有名。それにしてもここまで来てビスタカーとは(笑)。 駿河徳山から千頭までは列車で10分、駅を出てクルマまで3分、ゴールまでクルマで15分、そしてカヌーの積込み3分...合計30分ほどで後片付け完了。時計はまだ13:30。さてこれからどうしよう?あまりにスムーズ過ぎて呆然となってしまう僕である。
伝統の水防対策“聖牛”
笹間湖・浮島に向う(3枚の写真を合成しパノラマ化) このまま気田川に入っても時間が中途半端なので、『大井川支流に素晴らしい謎の湖があるらしい』というマジコさん情報を信じて、カーナビで目星を付けた笹間湖を偵察に向う。ゴールポイントの駿河徳山からクルマで15分、林道の針葉樹林の隙間から信じられないほどのブルーの湖面が見えてくる。なんなんでしょう、この青さ!空は厚い雲に覆われ、彩度の低い森の緑と比較するとその青さが一種異様ですらある。パラオのロックアイランズやセイシェルのような(...って両方とも行ったことないけど)目に刺激的な青さ...これはスゴイ! イイものを見せて頂きました。さあ、帰りましょうって思いつつクルマを走らせていると別荘地分譲中の看板が目に入る。「ご自由にお入り下さい」とあるので、良い撮影ポイントがあるかもしれないと思いつつ別荘地へ入る。するとちょっと色っぽいオネエサマ(あくまでかなり年上ね...笑う)に呼び止められパンフレットを手渡される。『もうカヌーは乗って来られたんですか?』カヌーからポタポタ垂れる水滴を見てオネエサマ。『ええ、大井川で。』『ここじゃ、なくて?』『えっ、ここでもフネ下ろせるんですか?』『ココから上流にしばらく行くと階段があってカヌーを楽しまれてる方もたまにいらっしゃいますよ。』おおっ!イイ情報ゲット!フネは出すつもりないけど、カヌーを降ろす場所だけでも確認しておこうということで僕は上流に向けクルマを走らせる。 完璧に透明な水にカヌーを浮かべると、時速2kmほどの速さでカヌーは湖へと運ばれて行く。左岸から張り出した木の枝には妙に人を怖がらないカワセミが数羽。時折水面に急降下しては小魚をくわえて元の枝に戻る姿を観察することができる。見事に静か!完璧に無音!パドルの音さえも雑音に感じられるほどなので、パドルをシートの下に差して、流れに身を任せる。防水バッグからPRIMUSのシングルバーナーを取り出し、渓流を流れながらの湖上コーヒータイム...触媒付バーナーの轟音は少し興醒めだけど。 バスボートはもちろん、他のカヌーも誰もいない鏡のような湖面を独り占め...本当に夢のような時間なのである。浮島の反対側へ回り込んだ後、ちょっと冷めたコーヒーを飲み干して湖の真ん中を悠々と進む。水温がかなり低いので泳ぐのは止めた方が無難だけど、ちょっとだけこの美しい湖の水に入って自然と自分を同化させたいような衝動に駆られる。『笹間湖で入水自殺。三重県のAさん(38)か?』になるとまずいので、それはやめにして、再び渓流に戻ることに。
低い雲に覆われた秋葉山を背景に進むマジコさん
並んで漕ぎながら、何を話す?お父さんズ
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