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October.2003 Part.1

 

 

 

10月11-12日 お・ソロ大井川&お父さんだけの気田川


雨上がりの気田川をゆく“お父さんズ”(気田川)

 

10/11 大井川ダウンリバー

「じゃ、行ってくるね。」「気をつけて」夜もまだ明けぬ5:30、家族にしばしの別れを告げ、カーステレオを操作してHYからE.クラプトンにチェンジするとお父さんは“男”に戻る。朝焼けの湾岸道を抜け愛知県東部の市街地を縫うR1から東名へ。ローソンのレタスハムサンドを紙パックのコーヒーで流し込み「れいらぁ〜!」小さく口ずさみながら、すでにすっかり明るくなった東名の車列に乗って東へ。Go!East....今日はソロで大井川へ。


大井川砂漠のイメージ

大井川...あれは1996・春。カヌー仲間から誘われた某自動車メーカー主催の“なんちゃって”キャメトロ「大井川リバーレイド」が大井川との出会いだった。当時はインターネットもなく、情報と言えば「日本の川地図101」と「カヌージャーナル」だった頃。それでも、手を尽くして大井川について調べたのだが...当時の愛車FFボルボ850では進入不可で水面にカヌーを下ろすまでに疲れきってしまいそうな広大な河原、地元では自嘲を込めて「大井川砂漠」とまで呼ばれる乏しい水量、幾多のダムによって遮られた流れ...4歳の息子と身重の妻を残してまで出かけるに値しない川...大井川はそんなイメージの川なのだった。

ところが、時代は流れインターネットの時代が到来。某サイトのBBSに書き込みをされていたtakabooさんという方が、その大井川を準・ホームリバーにされていることを知る。彼のHPを読むたび、大井川のイメージが良い意味で崩れてゆく。
南アルプスを源流に持つ川独特の青白く澄んだ流れが広々とした明るい谷を大きく蛇行しながらゆったりと流れていく。鉄橋を渡る大井川鉄道のSL、新緑、紅葉...そして何より僕のようなチキン&ぐうたらパドラーにも良さげな穏やかな川相...

で、今回、「ごめんなさい大井川」の旅に出ることになったというわけだ。

牧之原ICで東名に別れを告げ、まさに砂漠のように広い大井川の河原を右手に見ながら僕は上流を目指す。


9:30a.m.大井川・千頭に到着

スノーピークウェイVer.野宴会2000でカシータを牽いて訪れた久野脇キャンプ場を越え、すぐにゴールポイントである駿河徳山に到着。駅の位置とゴールの河原への進入路をチェックして、さらに10分ほどで今日のスタート・千頭(せんず)駅前の河原に到着する。


10:30a.m.スタート!(今日の装備)

9:30a.m.、4時間ちょうどだ。

駅前に広がる広大な河原は堤防付近が親水公園風に整備され、その先のダートも砂利採取のためかフラットで固く踏み締められており、四駆でなくとも容易に進入できる。最も水際に近い上流側の河原にクルマを停め、カヌーと安全装備、そして防水トートを下ろす。
道路から眺める限り穏やかで危険のない流れっぽいが、初めての川ではヘルメットやプロテクターも念のためにカヌーに積み込む。朝の薄日が気持ちの良い河原でスッポンポン着替え。河原が広いので、双眼鏡ででも覗かない限り...人並みなら証拠不十分(笑)

今回はソロということで荷物が極端に少なく若干バウが浮き気味なので、河原の10kg程度の石をバウに載せて喫水線をフラットにして10:30スタート。

『箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬ大井川』と馬子唄にも歌われるほどで大雨の後は殺人的な大増水に見舞われる大井川だけど(超広い河原...つまり氾濫原がそれを物語ってる)、今日の水量は最低レベル。宮川はおろか、その支流・某アキヒロ川よりも細い10mほどの川幅に面喰らいつつ、川底に点在する岩を避けて進む。南アルプスを源流に持つ隣の天竜・気田川と同様に青白く澄んだ気持ちの良い水質なので、川底の様子はとても確認しやすいけれど、スラローム競技状態でパドルを休ませる暇を与えてくれない。でも、ソロ&カヌーの喫水をフラットにしたおかげでどうにか浅瀬をクリア。takabooさん情報で浅瀬続出〜ライニングダウン必至を覚悟していたが、気田よりも速い流れに乗って意外なほどスムーズだ。


橋が多い大井川(駄ジャレじゃないです)

意外にもタイトな流れだ。

45kmを下って橋が1本!ってな人工物の極端に少ない北山川〜熊野川とは違って、ここ大井川は次々に橋が現れて初めてなのに川地図なしでも自分の位置を把握するのに苦労しないほど。川の難易度は(今日の状態に限れば)宮川よりも若干易しいレベル。時折、気田に似た直角カーブもあるけど、盛大な返し波の白い波頭から察するにアンダーカットロックは皆無で、仮に岩に突撃しても優しい返し波がフネを安全に戻してくれそうだ。
河原には増水時の荒れ狂う大井川の様子を物語る大量の流木が折り重なっていて焚き火し放題。もしキャンプ装備を積込んでたら『今夜はウチに泊ってかない?』ってな誘いにのってしまいそうな河原が多数(笑)で目移りして困ってしまった。


折り重なる流木にヨダレが...

先人の知恵・聖牛(水防効果は絶大らしい)

今日の水位ではほとんど瀬はない

美しい吊り橋が随所に

雰囲気の良い河原に上陸してコーヒーを煎れ川に浮かんだりして遊びつつ、ため息が出るような美しい吊り橋や、そびえ立つ立派な聖牛(水流を弱め土砂の流失を防ぐための伝統的な構造物)を幾つも越え、チャポチャポランランランの瀬を数カ所クリアすると目の前にグレーの橋が現れる。ん?えっ?あれっ?も、もしかして宗徳橋?...そう、そこは紛れもなくゴールの駿河徳山の河原なのであった。


11:40a.m.ゴール!!

時計は11:40a.m.、アナログ時計だと電池切れを疑うところだけど、CASIOプロトレックはデジタルなので11:40と表示されてれば間違いなく11:40なわけで、ホントに11:40なのである(笑)。
スタートから休憩を入れて1時間10分...時速15km近くで下ってきたわけか??熊野川カヌーマラソンの競技中も含め、自己ベストのラップタイム(笑)

カヌーから積荷を降ろし、濡れたウェットスーツやウェイディングシューズを着替えていると、11:50発の千頭行き列車の汽笛が谷に響き渡る。次の列車は12:43なので、河原でランチタイムにすることに。
川の水は料理に使える雰囲気ではないので、残り少ないプラティパスの水でスパゲッティを茹で、カリカリに炒めたアンチョビ缶にオリーブオイルとクレイジーソルトを加えて、出来上がり。

アンチョビスパゲッティを食べ終えた後は、伏せたカヌーの下に道具を入れて防水トートだけを手に駿河徳山駅まで徒歩5分。タイミングよく千頭行き列車が駅に入ってくる。ん?こ、これは...オレンジ色の車体に紺のストライプ...いつも見慣れた近鉄特急“ビスタカー”の車両である。SLで有名な大井川鉄道だけど、全国私鉄の払い下げ車両を使用していることでも有名。それにしてもここまで来てビスタカーとは(笑)。

駿河徳山から千頭までは列車で10分、駅を出てクルマまで3分、ゴールまでクルマで15分、そしてカヌーの積込み3分...合計30分ほどで後片付け完了。時計はまだ13:30。さてこれからどうしよう?あまりにスムーズ過ぎて呆然となってしまう僕である。


ソロでは貴重な自分の写真(駿河徳山駅にて)

ん?えっ?な、なんで近鉄特急が??

大井川鉄道で10分

カヌーの積込み完了!


伝統の水防対策“聖牛”

 


笹間湖ワンダリング


笹間湖・浮島に向う(3枚の写真を合成しパノラマ化)

このまま気田川に入っても時間が中途半端なので、『大井川支流に素晴らしい謎の湖があるらしい』というマジコさん情報を信じて、カーナビで目星を付けた笹間湖を偵察に向う。ゴールポイントの駿河徳山からクルマで15分、林道の針葉樹林の隙間から信じられないほどのブルーの湖面が見えてくる。なんなんでしょう、この青さ!空は厚い雲に覆われ、彩度の低い森の緑と比較するとその青さが一種異様ですらある。パラオのロックアイランズやセイシェルのような(...って両方とも行ったことないけど)目に刺激的な青さ...これはスゴイ!


別荘分譲地で頂いた「レイクサイドタウン川根」
パンフレットより転載。

曇り空なのにホ、ホンマに青い!!
(こちらは実際に撮影した写真)

イイものを見せて頂きました。さあ、帰りましょうって思いつつクルマを走らせていると別荘地分譲中の看板が目に入る。「ご自由にお入り下さい」とあるので、良い撮影ポイントがあるかもしれないと思いつつ別荘地へ入る。するとちょっと色っぽいオネエサマ(あくまでかなり年上ね...笑う)に呼び止められパンフレットを手渡される。『もうカヌーは乗って来られたんですか?』カヌーからポタポタ垂れる水滴を見てオネエサマ。『ええ、大井川で。』『ここじゃ、なくて?』『えっ、ここでもフネ下ろせるんですか?』『ココから上流にしばらく行くと階段があってカヌーを楽しまれてる方もたまにいらっしゃいますよ。』おおっ!イイ情報ゲット!フネは出すつもりないけど、カヌーを降ろす場所だけでも確認しておこうということで僕は上流に向けクルマを走らせる。
1kmほど進むと湖は渓流に変わり、かなりの広さがあるパーキングが見えて来る。その奥にはコンクリートの擬木の手摺があり、そこから湖に流れ込む渓流に降りられる。かなり急だけど、北山川・田戸の階段に比べればどうってことがない階段の下には、真っ白でフラットな河原が扇状に広がっている。そしてその河原を回り込むように流れる渓流の美しさ!場所確認だけのつもりが、5分後にはウェットスーツにとPFDを身に着けカヌーを担いで階段を降りている僕の姿がありましたとさ(笑)


カヌー降ろし場の河原からスタート

渓流を下ってゆく

完璧に透明な水にカヌーを浮かべると、時速2kmほどの速さでカヌーは湖へと運ばれて行く。左岸から張り出した木の枝には妙に人を怖がらないカワセミが数羽。時折水面に急降下しては小魚をくわえて元の枝に戻る姿を観察することができる。見事に静か!完璧に無音!パドルの音さえも雑音に感じられるほどなので、パドルをシートの下に差して、流れに身を任せる。防水バッグからPRIMUSのシングルバーナーを取り出し、渓流を流れながらの湖上コーヒータイム...触媒付バーナーの轟音は少し興醒めだけど。
しばらくすると、流れがほとんどなくなり、湖底がライムグリーンとブルーにクッキリと色分けされたポイントに到着する。マグカップをボトムに置いて、ここからはパドリングで進む。大きく屈曲した湖をしばらく進むと、さきほどの別荘地に面した入り江が見えて来る。その入り江を横断して大きく右に回り込むと、さきほど見た島...浮島の全貌が姿を現す。
大きな鯨のような浮島(実際は左岸と天の橋立のような細い回廊で繋がっている半島なのだが。)は全てが鬱蒼とした広葉樹林で、もう1ヶ月もすれば、見事な紅葉が楽しめそうだ。湖を渡り浮島に近づく。島と左岸の森とを結ぶ回廊の最狭部はほんの2mほどで、水位が上がった際にも渡れるように簡素な丸木橋が架けられている。


笹間湖に入る

浮島へは丸木橋が架けられている

バスボートはもちろん、他のカヌーも誰もいない鏡のような湖面を独り占め...本当に夢のような時間なのである。浮島の反対側へ回り込んだ後、ちょっと冷めたコーヒーを飲み干して湖の真ん中を悠々と進む。水温がかなり低いので泳ぐのは止めた方が無難だけど、ちょっとだけこの美しい湖の水に入って自然と自分を同化させたいような衝動に駆られる。『笹間湖で入水自殺。三重県のAさん(38)か?』になるとまずいので、それはやめにして、再び渓流に戻ることに。

 

 

約2km・1時間半のレイク・ワンダリングを楽しんだ後、僕は再びカヌーをクルマに積込んで笹間湖をあとにする。大井川を越えたあたりで空から雨が落ちて来る。気田川・秋葉神社のある春野町までは40km以上の山道。定番のR362ではなく、全線1.5車線の県道でのショートカットを試みたことが災いして、しっかり崖崩れの通行止めに遭遇、林道を迂回することを余儀無くされた(涙)。でも、途中で山村の秋祭りにも遭遇し、しっかりその雰囲気を味わうことが出来たのは大収穫。17:00ちょうどに到着した春野町役場前の町営風呂で汗を流し、そのままほんわかしたイイ気分で秋葉神社下社キャンプ場入りとなった。
下社キャンプ場はこれまで見たこともないほどの大盛況。ずらりと並ぶクルマのナンバーはほとんどが東京方面のもの。ここが関東エリアであることを痛感する瞬間である。そのなかにどこかで見たことのあるブルーSTEPWGNとトレーラーを発見!まさかのTAKEさんご一家!風の噂でアキヒロ家との北山川を悪天候で断念して気田川にお越しになるかも?と聞いてはいたけど、ホントに会えるとはびっくりなのである。
TAKEさんちと挨拶した後、その隣にテントを設営する。しばらくしてマジコさん登場!僕のとお揃いのスノピ旧型タ−プ(¥2980by SAKAIYA)の下で地ベタリアンスタイルでちゃんこ鍋を突つきながら3人で語り合う。早くも「お父さんだけの気田川」の始まり始まりぃ〜!先にお休みになったTAKEさんが抜けてからも数時間、久々に日付が変わるまで飲み語り(?)を楽しんだ僕らだった。


10/11 お父さんだけの気田川


低い雲に覆われた秋葉山を背景に進むマジコさん

 

独りだとテントでぐっすり眠れるのは何故だろう?家族4人でファミリーテント・Eureka!サンドームだといつも眠りが浅くよく夢を見る。枕元に置いたマグライトが額に当たってヒンヤリした感触、枕の下のナイフの異物感...万一の時に家族を守らなければ!という気負いが眠りを妨げるのだろうか?
その点、ソロはいい。眠りに落ちたが最後、次の瞬間は朝なのである(笑)

今日はいよいよ「お父さんだけの気田川」。24時間のカラータイマーを胸に参加のマジコさんと、急遽加わったTAKEさんと僕の3人でここ秋葉神社下社から天竜川合流点・気田川橋までの12.5kmをダウンリバーすることになっている。
LAGERの和風メニュー“おぞうに”に“サトウのごはん”を加えて簡単に朝食を済ませ、24時間で3度目のウェットスーツを身に着けてカヌーを水辺まで運び(今年の台風による増水で川の流れが変わり、堤防から非常に遠くなってしまった)、3台のクルマを連ねてゴールポイントに向かう。ゴールにDiscoとマジコさん'sリバティをデポしてTAKEさん's STEPWGNで再び秋葉神社下社へ。


青白く輝くダウンストリームV..これぞ気田川!

10:30、TAKE家の見送りを受け、降りしきる雨の中、お父さんズを乗せた3艇のカヌーは気田川の川面へと滑り出す。今日の水位は+61cm。前回5月の+27cmに比べて34cmのアップ。若干の青白い濁りが入っているものの、川そのものの清冽感は相変わらず素晴らしい気田川である。
縦一列になって最初のテトラの瀬へ。瀬の入口には鮎釣り師が2名。その後も屈曲を曲がるたびに釣り師の姿が絶えることはない。餌釣りが解禁を迎えたこの時期の気田川。そのほとんどが餌釣り師である。友釣りの半分以下の短い竿を使用する餌釣りの釣り師は川岸ではなく川の中心に立っていることが多いので、その背中を抜けることができて少しは気持ちが楽だ。

僕らの数百m前方には、10艇ほどのカヤック。彼らには申し訳ないけれど、まるで僕らの露払いを務めてくれているかのようで有難い。

台風による大増水で川の流れが大きく変わっているために、瀬や分流の手前でカヌーの上に立ち上がって念入りにスカウティング(偵察)をしながら僕らはさらに進む。
笹合橋を越え、通称・ドクターロックの手前の左岸は、竹が倒れ常設の(笑)ストレイナーが出来ているので手前の右岸にカヌーを寄せスカウティング。その結果、今回は本流を完全に塞いでいて漕行不可と判断、ライニングダウンすることに決める。そこへ、カヤック5〜6艇のパーティが本流を一直線に下ってくる。「危ないですよ〜!」両手で×のジェスチャーをして叫ぶと最初の数艇はストリームアウトするものの、後続はそのまま行こうとするので慌てて止める。


竹のストレイナー

ストレイナー除去を試みる僕

「な〜んだ、通れないんですか!ありがとう!」カヤックから降り立ったのは50〜60代のおじさんたち。艇もパドルもいかにも使い込んでますっ!カヤック歴長いですっ!って感じの渋い雰囲気。僕らも10年後、20年後にこんな風に楽しめたらいいなぁ、と羨ましく感じるのだった。
ドクターロックを過ぎ、しばらく進むと現在の気田川で一番大きな瀬・高圧線下の瀬が目の前に現れる。ここでも、手堅く右岸にカヌーを着けて歩いてスカウティングに向う。


お待ちかねの高圧線下の瀬ですよぉ〜!

5月は本流が一番のヒーロールートでなかなか楽しめたのだが、今日は流れがきっちり三等分されてどの流れも弱く問題ないけど、1m間隔でカヌーが乗り上げるのに適当な隠れ岩が点在しているので、ピンポイントでのターンやサイドスリッピングが要求される。『あの “門柱”の右を入ってすぐに左の本流に戻って“おいでおいで岩”の左から右岸“マジコ岩”のエディインですね。』マジコさんは岩に名前を付ける天才だ!(笑)
まずはマジコさんが挑戦...しようとしたところへ後続のカヤック10艇のパーティが到着。スカウティングから戻る僕に可愛らしく利発な感じのオネエチャンが声を掛けてくる。(川ではカワセミに出会うより貴重!)どこから来た、とか、どこまで下るとか他愛もない挨拶だけど、可愛い女の子と話せて舞い上がってしまうお父さんズ...瀬の攻略なんてことは完全に忘れてニヤニヤモードになってしまう。

気を取り直して、マジコさんがストリームイン! “門柱”の右を入ってすぐに左の本流に...ゴンッ!アレレ?門柱に登るマジコ艇であった(笑)。
次に僕がスタート。マジコさんのコースを参考に、さきほどのスカウティングは無視して門柱の左からアプローチ。本流上の2つの岩をジグザグに避けて、おいでおいで岩の左スレスレからマジコ岩の裏へ...無事成功!(ヒーロールートをオーソドックスに攻めるという掟破りの面白くもなんともない方法でスミマセン>皆様)
最後にTAKEさん。かなりのベテランに感じるTAKEさんだけど、ソロでのダウンリバーは実は今回が初めてということで、かなり慎重に瀬に入ってくる。何度もカヌーの上で伸び上がりコースを確認して彼が選んだのは、門柱の右...つまりさきほどのマジコルート。『そっちはダメだ!』僕の叫び声も空しく、ゴンッ!ズルズルズル...岩に弾かれてくるりと真横になり、そのまま右岸に上陸していくTAKE艇(笑)ズザザザ...陸に上がったカヌー状態で、爆笑の渦(笑)

TAKEさんと僕の画像をクリックするとマジコさん撮影&制作のGIFアニメが見られます(笑)

なんとか沈することもなく、瀬下りを楽しんだあとは、3つの分流を使ってフェリーやストリームイン&アウトなど瀬遊び。でも、決して若くはないお父さんズ。15分ほどで腕がパンパンに張って、すごすごと下流に向け川下りを再開するのでありました(涙)


並んで漕ぎながら、何を話す?お父さんズ

高圧線の瀬の後、パドルを上げて快適な流れに身を任せ、ドンブラコドンブラコと並んで流れるお父さんズ。
『いやぁ、川で女の子に声掛けられちゃいましたよ〜!いいなぁ〜やっぱり。地獄に仏、川面にギャルでしたなぁ〜!』と僕。お父さんズの興味は瀬なんかじゃなく、さっきのオネエチャンに移ってしまってる(笑)

マジコ

『なかなか可愛い子でしたねぇ〜サクラちゃん!』

a

『えっ!名前聞いちゃったりしたの?い、いつの間に(アセアセ)』

『だって、ライジャケにSAKURAって書いてあったでしょ?』

a

『あ、いや、それは、もしかして、いや、もしかしなくてもカヌークラブの名前じゃないでしょうか...リーダーのおじさんのライジャケにもSAKURAって書いてあったし...』

『・・・』

a

『でしょ?』

『黒マジックでやけに素っ気ない文字だと思った!...涙』

一同爆笑のお父さんズは、お昼を過ぎたことに気付いて6kmポイントの河原でランチタイム。
断続的に降りしきる雨の中、少しだけ冷えた身体にマルタイ棒とんこつラーメンがウマい!(笑)
対岸にゴールしたカヤックのパーティの女の子たちがオーバーパンツを脱ぎ去るのを眺めて♪今のキミはピカピカに光ってぇ〜ウヒヒヒ♪などと唄いながら(それは僕だけ...涙)1時間ほどをこの河原で過ごした後、さらに激しくなった雨の中、13:30午後の部スタート。

誰がリーダーでも誰がドレイでもない全くもって対等な3人。技術的にも体力的にも似通った3人は、ある時は縦一列に、またある時は横に並んで川下りを続ける。待ったり急いで追い付いたりすることなく、フツーに漕いでたら、あら不思議!ずっとペースが同じなのね!ってな阿吽の呼吸でペースを保てるのがとても楽だ。


言葉は要らない。

大胆に見えてメチャ慎重、実は臆病なお父さんズ(笑)は、時折現れる瀬の前には必ずフネの上で立ち上がって流れの先を確認する。台風のせいで流れが変わり、水位の割に全体にまったりした印象の気田川だけど、そんな慎重なカヌーイングが効を奏して進路を間違えることは全くない。

右手に砂利採取プラントが見えると、それまで広くだらだらと流れていた川が左岸沿いに集まり少し勾配がきつくなるのと相まって快適で長い早瀬が現れる。水面下には大きめの隠れ岩が点在し、左岸にはカヌーがギリギリ入れるエディが多数...僕のレベルでは最高に気持ち良く下れる区間だ。最大50cm程度の波を越えながら、カヌーを右に左に振ったりサイドスリッピングで隠れ岩をかわしつつ、クロス1発でエディインしたり、バウを速い流れにわざと喰わせてみたり、ちょっとしたストッパーでエッジングを試したり...これが結構ハマるのである(笑)。


星空のように輝く水面を進む

松間橋をくぐって大きなRの右カーブに入った頃、正面の厚い雲の隙間から太陽が顔を覗かせる。
それまでの暗い雰囲気がまるで別の場所のようにがらりと明るく変わり、レインウェアのフードを脱ぎ去った僕の耳に鳥たちのさえずりが飛び込んで来る。
しばらくすると急激に気温が上がったのだろうか、川面から湯気のような靄が立ちのぼり、水面から数十cmのあたりに漂う。
真正面の太陽からは、降り注ぐ光があらゆる色のくっきりとした筋になって、僕の前をゆくマジコさんとTAKEさんを照らす。
ギンギングラマンとアニバーサリーキャンパーの白っぽいハル(船体)を包み込む銀河のような光の明滅...美しい!文句なしに美しい!
目の前にピンボールの瀬が迫っているのにパドリングを忘れて魅入ってしまう僕だった。

誰が引っ掛かって立ち往生するんだろ?と期待のピンボールの瀬は川底のカタチがすっかり変わってしまい、スムーズに通過。オーラスの瀬も川の傾斜が緩くなったために、流れが岩に絡むことなく妙にストレートな瀬(..とも言えない?)に大変身。何故か流れのど真ん中に太い杭が立ってる以外は、去年の面影は全くなく、そのままゴールへと続くのだった。
14:40、僕らはゴールの天竜川合流点・気田川橋上流の河原に到着。
TAKEさんは奥さんと子供達がクルマで迎えに来てくれてるので、TAKEさんと別れた僕らはそのままクルマにカヌーを積込んで秋葉神社下社に戻ることなく気田川に別れを告げることができる。
初めて走る天竜川沿いの県道から天竜市、浜松市を抜けるマジコさんと僕。マジコさんに付合って浜松市内のキャンピングカーショップで1時間ほどを過ごしたあと、東名を西へ。


オーラス手前の早瀬を行く笑顔のTAKEさん

 

夕暮れの高速道路をちょっと言えないスピードで疾走しながら、僕のココロは徐々にオトコからパパへと戻って行く。昨日から三枚目のE.クラプトンのCDを止め、センターアームレストの蓋を開けて手探りで一本のカセットテープを取り出す。トンネルに入り、縞模様のように流れるナトリウム灯のオレンジの光。左手に持ったカセットテープをその光で一瞥し、キティちゃんのイラスト入りのラベルに“あずのおきにいり”という文字を確認した僕は、にっこりと笑ってそれをカーステレオに挿入した。

しばらくしてLand Roverご自慢のharman/kardonスピーカーからは新しい名探偵コナンのテーマソングが流れ始めた。それと時を同じくして、僕の胸で赤く点滅していた36時間用“オトコ”カラータイマーは、その光を失うのだった。

 

 

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