8月1-5日 サマーバケーション2003! Part2
バスの車窓から見た雲海に浮かぶ穂高連峰 早朝3:30a.m.、遠足当日のように自然と目が覚める。手早く着替えを済ませカシータの外に出て空を見上げると満天の星空!今日も良い天気になりそうだ。アウトドアキッチンでレギュラーコーヒーを煎れ、500ccの魔法瓶一杯に満たし、ぐっすり眠ってる子供達を起こして着替えさせて、昨夜のうちに準備した4人分のディパックをクルマから取り出すと、乗鞍岳最高峰・剣ケ峰3026m登山の準備は完了だ。 登山と言っても、観光コースに組み込まれているほどのお気楽な山。決して重装備が必要なわけではないけれど、登山ビギナー&子連れの僕らには何が起こるか判らない!それなりの準備を整えて出発だ。 去年はマイカー登山ラストイヤーで賑わいを見せた乗鞍も、今年からマイカー規制が実施されて登山客が激減しているという話を聞いて、俄然行きたくなってしまったヘソ曲がりな我が家。実際、僕らの乗ったバスも乗客は僕ら4人だけで、いくら低公害バスとはいえ大排気量のバスにドライバーさんを加えて5人乗りじゃ、あまり意味がないんじゃないの?なんて感じてしまう僕だった。 スカイラインのワインディングを40分ほど走ると、突如左側に雲海に浮かぶ槍ヶ岳&穂高連峰が目に飛び込んでくる。手前の黒っぽい山腹には真っ白な雪渓が朝日を受けてキラキラ光り、そのコントラストが素晴らしい。間もなくバスは赤い三角屋根の建物が立ち並ぶ畳平BTに到着。 富士見岳(2817m)の西麓を巻くように進むと右手に畳平の水源にもなっている不消ケ雪渓。雪渓の向こう、摩利支天岳(2872m)頂上付近にはコロナ観測所の白いドームが青空に映えて美しい。 景色や花を眺めたり写真撮影しながらモデルタイムの倍以上時間を掛けてのんびり歩いているけど、ご来光狙いの人達と観光バスのツアー客の合間なのか、僕らを追い越してゆく登山客はほとんどない。コロナ観測所と富士見岳、そして剣ケ峰の分れ道の峠に立つと、こんなに朝早くからスキーヤーがいる位ケ原大雪渓の向こうに朝日岳(2975m)、蚕玉岳そして剣ケ峰の3つのピークが姿を現す。『目的地が見えると、なんか気が楽だよなぁ!』そう言って振り返ると、峠の岩に座り込むMaakunとAzuの姿。 「ちょ、ちょっと休ませて、お願い!お願いっ!」夏バテして日陰でハァハァ舌を出してる犬のような目をしてノビているMaakunは少し顔色が悪い。どうやら早くも高山病の初期症状のようだ。それでも、まだまだ花を見たり景色を眺めたりする余裕はあるようで、そのままのんびり進んで30分ほどで肩ノ小屋に到着。出発前に朝食を食べたのに早くもお腹が減った僕らは、肩ノ小屋でうどんを注文する。山菜うどんではなく天ぷらうどんを注文しぺろりと平らげたMaakunの様子を見て、登山の継続を決定(笑)し、充分に休憩をとった後にいよいよ本格的な登山道に足を踏み入れる。序々に傾斜がきつくなり、砂礫で滑りやすい道は非常に歩きづらい。最初は10分に1回だったMaakunの休憩要請が5分に1回になり、3分に1回になり...もう間もなく稜線というところでいよいよ動けなくなってしまう。「なんでやろ?ほんと不思議なんやけど、スッゴイ身体が重くて動かへん。」精神的にはしっかりしてるのに身体が動かない様子...完全に高山病の症状だ。 「ま、のんびり行こうよ。どうしても辛ければ戻ればいいし。」何としても登頂したい本音を抑え、彼の気持ちの負担を軽くすることに努めつつ、なんとか蚕玉岳に到着。それにしても登山道の脇で休憩していると声が掛かる掛かる(笑)。「無理しちゃだめよ。」「頑張ってね。」「気休めかもしれないけど、この酸素キャンディなめなさい。」(そんなモノがあるんですね!?)そんな激励や心配の言葉は有難いんだけど、「今すぐ戻りなさい。」「どれどれボク、舌を出してごらん...あっ、白い!これはヒドい高山病だ!」「酸素持ってないの?持ってるんならすぐに吸引させなさい。」「お父さん、酸素吸わせると余計高山病がひどくなるから吸わせない方がいい。」「この程度なら休み休み行けばダイジョウブ。」みんな言うことがてんでバラバラ。
肩ノ小屋〜蚕玉岳の登山道から見たコロナ観測所と穂高連峰 中には「睡眠不足だろっ!ちゃんと寝かせないとダメだよ、そんなんじゃ父親失格!」なんてスゴイ剣幕で叱り飛ばすおっさんまで(笑)。好き勝手なことを言って去って行くのは大抵は左腕に腕章を巻いたツアーリーダーらしき男性だけど、中には夫婦で“山岳パトロール”なんて腕章を巻いてる老人もいて、訳がわからない。 最初はその腕章を信じて、いちいち対応してたんだけど、5分に一人現れる「山岳パトロール」腕章おじさんに、子供たちまで疑念を抱き始める。極めつけは、アレコレ御託を並べた上で、堂々と「ボクはいつもは関東の山に登ってて、ここは初めてなんだけどね。」と発言した紫色の“山岳パトロール”腕章爺さん。しかも刺繍のレベルが低く「パトロール」が「バトロール」になってるのには、ヘロヘロに萎れてるMaakunまでが、口をあんぐり(笑)。も、もしかしてわざわざ腕章自作して悦に入ってるワケ?確かにカヌーの世界にも“自称”達人は大勢いるけど、ヤマの世界は良くワカリマセン。しかしながら「放っといてくれよ!」とは言えないのがビギナーの辛いところ、「へぇ〜、そうなんですかぁ〜」「ナルホドなぁ、試してみますね。」一応お返事はちゃんとね(笑)。
やっと頂上が見えた!あのガレ場からが標高3000mだ! 高山病よりも辛い老人たちの言葉の暴力をかわしながら、蚕玉岳の鞍部を通り、いよいよ剣ヶ峰山腹を登り始める。右手には火口跡に豊かな白い雪を残した権現池、左手には霞のなかに浮かんでいるように見える御嶽山の頂上、そして振り返ると白いガスの塊に覆われ、今まさにその姿を消さんとしている槍ヶ岳が僕らの目を楽しませてくれる。砂礫道が完全なガレ場に変わったあたりでCASIOプロトレックの高度計が3000mを表示し、頂上の人の性別を見分けられる程度の場所に来た時、いよいよMaakunの歩みが止まってしまう。頂上まで数十m、数分の場所だ。「パパ...Azu...連れて...先...に行って...て。」Maakunは登山道から外れ、脇の岩を抱くようにうつ伏せで休みながら、最後の力を振り絞って僕らに先に行くように告げる。「バカ!俺がおんぶしてやるから一緒に行こう!」体重がMaakunと同じぐらいの頃、自分の体重を超えるキスリングを担いで山行していた僕は、重さの感覚が普通の人の半分(今も仕事で重いもの担いでるし...笑)。35kgの彼どころか4●kgのMamaもふたりまとめて頂上に担ぎ上げてみせるぞ!なんて意気込んだものの... 視線を地面に落としたまま顔を横に振ってイヤイヤのポーズのMaakun。
剣ケ峰3026m登頂!(但しヘロヘロ) 10:00a.m.PapaとAzu登頂成功!『剣ヶ峰 3026米』の標識に遠慮がちにタッチしてすぐに登山道側の岩場にへばりついて心配そうにMaakunとMamaの様子を覗うAzu。「Maakun大丈夫かなぁ...あっ、立ち上がった!あっ、歩き始めた!」岩場に寝転がったまま振り返って満面の笑みを浮かべるAzu。我が子ながら、彼女の優しさにちょっと感動するPapaであった。後方から押し寄せるツアー客の大集団に追われるかのように15分遅れでMaakunが到着。大集団に飲まれてかなりヘロヘロのMamaが最後に登頂。 通路に大きなザックを放り出して万歳三唱を繰り返す中高年のツアー客を横目に見ながら「ちっとは静かにしろよな。」Maakunがチクリとイヤミ(笑)。あぁ、こいつ大丈夫だわ、そんな確信を胸に閉鎖中の山頂小屋へ。小屋の前のベンチで横になるMaakunに持参した酸素ボンベを与えるとてきめんに元気を取り戻し、みんなでチョコレートやスナック菓子を食べる。低い気圧のせいで今にも破裂しそうなほどパンパンに膨らんだ“かっぱえびせん”に爆笑しつつ、往路とは全く違う和やかな雰囲気でゆるゆると下り、15分ほどで肩ノ小屋に到着だ。往路では閉まっていた小屋の土産物売り場もすっかり開店しており、当然のように子供たちはここでトラップされてしまう(涙)。 「アレいいなぁ...」Maakunが真っ先に欲しがったのは「乗鞍」と大書きされた提灯!(笑)、爆笑する僕にバツの悪そうな顔をしながら、次に欲しがったのは「日本百名山」のれん!(笑)「どんな趣味しとるんじゃぁ〜」僕がヒィヒィ言いながら笑っていると、怒りの表情を浮かべて「百名山スカーフ」を手に取るMaakunだった(大々爆笑!)。 結局、Maakunは雷鳥の3D透かしが入ったクリスタル風キーホルダー、Azuは雷鳥の絵入り熊避けベル、Mamaは雷鳥ハンドタオル、僕は乗鞍登頂記念ピンバッチを買って肩ノ小屋を後にする。ショッピングしてる間にMaakunの高山病の症状も消え、富士見岳入り口あたりでは鶴ヶ池を回る通常の下山コースではなく不消ケ雪渓のそばを通りお花畑へ通じる「トレッキングコース」に行こうと言い出すほど。ところが彼の希望通り、トレッキングコースに進んで大正解。コース脇には鶴ヶ池コースには見られなかった高山植物が咲き誇り、少し疲れた僕らを勇気付けてくれるのだ。 誰が名付けたのか、お花畑...この名に恥じない美しい草原には数え切れないほどの高山植物が群生し、あまりに可憐で美しい花たちに大袈裟ではなく10歩ごとに立ち止まってしまうほど。(今度は疲労のせいじゃなく...笑)僕やMaakunには花の名前なんて何ひとつ判らないけど、山野草に詳しい(...というか好きなんですね)Mamaの解説にへぇ〜、ほほぉ〜の連続。子供達は歩きながら夏休みの自由研究のテーマを高山植物にしようっ!なんて言い出すほどに感激した様子だ。 バスは朴ノ木平BTを経由して平湯BTへ。BTで少し遅い昼食を食べて少しでも早くキャンプサイトへ!と言いたいところだけど、疲れを知らない子供達&MamaはBTに隣接する“飛騨・北アルプス自然文文化センター”のトラップに捕捉され、元気一杯で館内を精力的に歩き回る。 Papaはと言えば館内のベンチで横になってZZZZ... 風が止み、少しだけ寝汗をかいて夕方のけだるい雰囲気に目を覚ますと、Mamaと子供達がアウトドアリビングでガイドブックを参考にしながら温泉の選定を始めている。「昨日と同じじゃつまんないよなぁ。」「でも今日は日曜だから白骨温泉は渋滞しそうだし...」で、決定したのが、BT近くに合掌造りの建物を展示している平湯民俗館併設の露天風呂“平湯の湯”。 寝ぼけ眼で徒歩は辛いので、野営場に着いてから初めてDiscoを動かして温泉セットを持参して“平湯の湯”に向う。入り口で民俗館込の入湯料¥500也を払い、ライトアップされた合掌造を眺めながら、風情のある更衣棟へ...。
平湯民俗館の露天風呂は貸切状態!但し覗き放題(笑) 「やったぁ〜貸切だぁ〜!」露天風呂は昨夜の“ひらゆの森”の大混雑がウソの様に全く人の姿はなく、僕らの貸切。しかも本物の森に抱かれた感じの岩風呂とやや鉄分を含んだ感じのやや黄色の湯が醸し出す雰囲気は、まさに秘湯という言葉がぴったりだ。シャワーもサウナもなく、民俗館との境目に立つ戸板も節穴だらけで覗き放題だけど(笑)、やや温めのお湯に浸かって眺める森と合掌造りの風景は、今が21世紀であることを忘れさせてくれるタイムトリップな気分だ。またしても女性陣を待たせるほどに
“ほっこり&まったり”と温泉を堪能し、チロチロと流れる渓流に浮かぶ青く涼やかな瓶ラムネで喉を潤し、僕らは昨晩に続いて温泉街のそぞろ歩きを楽しむ。高山病で“決死のアタック”だった昼間がウソのように穏やかな夕暮れ。僕らは温泉街のCAFEで軽いサパーを取り、明日に備えて森の中のベースキャンプへと戻るのだった。
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