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April.2003

 

 

4月2-5日 西表島エコツーリズム体験(Part2)

 


マングローブ(ヒルギ類の森)をゆくMama&Maakun

 

カヌーに乗って滝を巡る 4/3

今回の旅の目的がAzuは「由布島で水牛車に乗ること&ビーチで貝殻拾い」でMamaが「ガサミとリュウキュウイノシシのお刺身を食べること」、そしてMaakunが「泳ぐこと」(笑)だとしたら、Papaの目的は「マングローブの川でカヌーを漕いで自然を堪能すること」だ。(笑)
そんなわけで、今日は船浦湾に注ぐふたつの川、ヒナイ川とニシダ川をカナディアンカヌーで漕ぎ上がり、それぞれの上流にあるピナイサーラの滝とニシダサーラの滝(ニシダ川の滝とかサンガラの滝とか呼称が一定していない..笑)を巡ることにしている。

色々な情報を総合すると、潮の干満さえ見誤らなければ我が家のようなへナチョコカヌーイストでも単独行動が充分に可能に思えたので、カヌ−を2艇レンタルして自分達だけで行くというプランも頭をよぎった。
でも、僕らの遊ぶフィールドとはあまりにも異なった西表の自然環境。ただ行くだけならともかく、宮川や熊野川でカワセミやアユを見つけるような調子で果たしてカンムリワシやキノボリトカゲに出会えるのかどうか?(瞳には映ってるのに見えてなくて、『西表島でカヌーに乗ったけどさぁ〜確かに滝はキレイだったけど、な〜んにも動物も鳥もいなくてさ〜、何も西表まで行かなくても紀伊半島の方がずっと良いや!』...なんてことにならないとは限らない。)
そして、安全面で言えば、ハブはマムシと同じように臆病なヘビなのかどうか?未知の虫に刺された時の対処法は?(マムシが避けてくれてるのに、わざわざ彼らを噛み付くしかない状況に追い込む人も多いけど、無知な自分が西表でそんなマヌケな人にならない保証はない...)
そして、最も重要なこと...西表の自然はどこまで逞しいのか?(フィールドにはそれぞれ“許容範囲”があり、足を踏み入れるだけで壊れてしまう自然もあれば、焚き火をしても何ら問題ない自然もある...と思う。要はそれを判断するに足る知識と経験を持ち合わせているかどうか、がそのフィールドで単独行動を取ることができるかどうかのライセンスのようなものだと僕は思う。)
僕らは余りに西表の自然に無知である。最悪、悪意のないままに取り返しのつかないような“悪い足跡”を残してくることになるかもしれない。それだけは避けたい。

そこで、今回はガイド付きで行動することに迷いはなかった。西表島に行くことが決まってからすぐに雑誌&ネットで多くのガイド会社をリストアップし、片っ端から電話を掛けまくった。そんな中でビジネスライクではなく最も熱心に説明してくれたガイド会社“ロビンソン小屋”に今回のガイドをお願いすることに決めた。HPで見る限りちょっと濃いキャラクター揃いだけど(まるでG-Outfitterのようだ!...笑)、電話で話したりBBSの返答を読むときちんとした知識を持ち、しかも「遊びゴコロ」を忘れてない感じがとても嬉しかった。さらにここは西表で初めてカヌーを使ったエコツアーを始めた老舗で、使用するカヌーは全てカナディアンカヌー。カナディアンなら普段通りの感覚で普段とは違う自然を堪能することに集中できそうだ。

船浦湾からピナイサーラの滝へ

Mama&MaakunはHUNTER 14ft(奥にピナイサーラの滝)
Papa&AzuはKATAHDIN 16ft

8:00a.m.
滝壷で泳ぐことに備えて全員がウェットに着替えて南ぬ風のロビーで待っていると、ピックアップトラックに乗ってアースカラーを身にまとったガイド・高市さんが僕らを迎えに来てくれる。人懐っこい笑顔の彼と会話を楽しみながら彼のトラックに乗せてもらってロビンソン小屋へ。小屋隣のスーパーで行動食の準備を済ませ、ヒナイ湾に架かる船浦橋までトラックで移動。船浦湾を塞ぐ形で一直線に伸びる別名・海中道路の脇で待っていると、高市さんが3艇のカヌーをライニングして僕らの元に運んでくれる。
「奥さんとMaakunはこの小さいカヌーでいいかな?」僕らの前に浮かんでいるのは、なんと!Old Town HUNTER 14ft(Red)!「うぁ〜、マイ・カヌ−とおんなじっ!」Mamaは遥々西表までやってきて、まさか慣れ親しんだHUNTERを漕げることになるとは思ってもみなかったので、すごく感激している様子だ。我が家の使用頻度の低い“箱入り娘”のHUNTERと違って、過酷な使用に耐えてハル(船体)に刻まれた無数のキズが迫力満点!PapaとAzuには同じくOld Townの静水用FRP艇・KATAHDIN 16ft(wine red)。こちらもかなり使い込んだ感じで、ヤレた感じがグッドルッキング!


広い船浦湾をヒナイ川河口に向け進む


ヒナイ川に入ると静寂の世界

我が家の2艇のOld Townと高市さんともうひとりのゲストHさんを乗せたColemanはヒナイ川の河口を目指して広い湖のような船浦湾を縦断する。
少しブラウンがかった青の水面にはポツリポツリと生えるヤエヤマヒルギ、その向こうには生い茂るメヒルギやオヒルギのジャングル、そして屏風のような岩山にひときわ目立つ一本の白い線...“老人の白いあご髭のような”という意味のピナイサーラの滝だ!
「ねぇ、パパ、ここは川なの?海なの?」
Azuは初めて見る光景にとても不思議そうな表情をしながら尋ねる。
「水に指を浸けて舐めてごらん。」
「うぁ、しょっぱい!海だぁ!」
汽水域だというのに間違いなく伊勢湾よりも塩っぱい感じがするのは、ここが東シナ海に浮かぶ島だからだろうか?

間もなく正面にマングローブの切れ目が見え、そこからさらに水路がふたつに分かれる。右はマーレ川、そして左が僕らの進むヒナイ川の河口だ。河口から川に入った瞬間、風が止み、静寂とまったりとした空気が僕らを包む。「まだ水はしょっぱいけど、ここはもう川だよね!」Azuにも判る劇的な変化...確かにここは海じゃないまぎれもなく川なのだ。「あっ、何か流れてくる!」水面に浮かぶ縦長の釣りの浮きのような物体...それはオヒルギの種だ。(=胎生種子。種と言うよりも苗木と言う感じだろうか?)
「えっ!マングローブの種っ?植えたら生えるの?」高市さんから、過酷な環境で命をつなぐヒルギ類は簡単に育てることができると教えてもらうと、子供達はパドルを放り出し、カヌーから身を乗り出して水面にプカプカピョコピョコとユーモラスに浮かぶオヒルギの胎生種子を拾い上げるのに夢中だ。


両岸の自然を観察しながらゆったり進む

漕上限界ポイントからはトレッキングで

しばらく行くと、正面にピナイサーラの滝が見えてくる。船浦湾からの白い糸のような姿ではなく、水飛沫が飛び散る様子までがハッキリと見て取れる。このあたりから両岸の木々の背が高くなり、川幅が徐々に狭まってくることと相まって、“ジャングル探検隊”的なワクワク感が湧き上がる。

カヌーを漕ぎ始めて約一時間、ヒナイ川は突然行き止まりになる。正面には岩の間を縫うように流れる渓流然とした流れ。カヌーはここまでだ。
サキシマスオウのたもとにカヌーを係留して、ここからは徒歩で滝を目指すことになる。KATAHDINのボトムに転がしていたPatagoniaのストームパック(完全防水ディパック)を背負い、僕らはジャングルの細いトレイルを登る。「この辺でイリオモテヤマネコに遭遇したこともあるんですよ。」そんな高市さんの言葉に僕らはワクワクする。夜行性で用心深いイリオモテヤマネコに出会える可能性は99.9%ないのは充分に承知している。でも!100%出会えないわけではない!

普段歩き慣れた森とは全く違う光景に、ただでさえ興奮を抑え切れないというのに...。
でも、森に入り少し歩くと一見ジャングルに見えていた西表の森には実は僕らの見慣れた木々=樫など温帯のブナ科の木々が多いことに気付く。(但し、つる植物が巻き付いてるのでそうは見えないけど...)
サキシマスオウやアコウなど特徴的な樹に目を惹かれ、まさにジャングル!な印象だったけど、ここは熱帯ではなく亜熱帯なのだということを実感する。

トレッキングを始めて20分ほどで、前方の森から滝が激しく岩を打つ水音が響いてくる。いよいよピナイサーラの滝に到着だ。
滝直下の広場で沖縄県で一番の高さ・54mを誇る秀麗な姿の滝を見上げると滝壷から湧き上がる細かいミストが頬を撫で心地よい。滝の流れ出しから水の落ちる様を目で追う。滝を構成する水の一滴一滴が生き物のように揺らぎ、直下の大岩に打ちつける。大岩の下には濃い緑色の滝壷の淵、淵には元気に泳ぐ一匹の河童...ん?か、河童ァ?
それは河童ではなく、“気が付けば、そこにMaakun”満面の笑みを浮かべて泳ぐ自分の息子Maakunなのでありました(涙)
「うちのお客さんで泳いだのはMaakunが今年初めてですよ。写真撮っておこっと!」高市さんは、まるで珍獣を見つけたかのように写真を撮っている。


マイナスイオン200%!

「初泳ぎだなぁ。寒くないか、Maakun?」「ぜ〜んぜん!温泉温泉!」「いや、実はコイツ、先週の日曜日に三重県の宮川でも泳いでたので...」「えっ!」
絶句のあと、ヘラヘラ笑うしかない高市さんであった。


滝の脇にひっそりと咲くヤエヤマヒメウツギ

十分に滝で遊んだ後、僕らは滝に別れを告げカヌーに向け歩き始める。
山道の脇には美しい白い花。沖縄県にしか咲かないヤエヤマヒメウツギだ。
大きな岩をまるで廃品回収の新聞を縛るように(笑)十字に締め付けるアコウ(別名・絞め殺しの木)、木の幹から直接花が咲くギランイヌビワ...
とても的確で分りやすい高市さんのガイドを受けながら15分ほど歩くと、一面の緑のなかに浮かぶ3艇の赤いカヌーが見えてくる。

ここからは再びカヌーに乗ってヒナイ川をダウンリバー。一時間ほど前の往路に比べ、干潮を迎えかなり水位が下がっているヒナイ川。往路は「何となく違うのかなぁ?」程度しか感じなかった両岸のマングローブだが、引き潮で根を露出した今は種類の違いを明確に見分けることができる。

(渓流と汽水の境目には巨大な板根を持つサキシマスオウ、干潮時には完全に干上がる場所には千仏のような膝状根(=呼吸根)を持つオヒルギ、ヒタヒタと水に浸る場所には樹皮が剥けたような茶色のピラピラ足(=板根)が目立つメヒルギ、そして河口付近にはタコちゃん足(=支柱根)のヤエヤマヒルギという順に群生している。塩分濃度に対する耐性の違いによる住み分けらしい。)ひとたび空に目を移せば、見慣れたカワセミやシギ、コサギなどに加えて、本土のよりも少し地味なリュウキュウメジロや翼幅80cmにもなるヤエヤマオオコオモリを容易に見つけることができる。川面には海上自爆の花火のような形状のフトモモの花弁やヒルギの種が浮かび、水中を名も知らぬ多くの小魚が群れ泳ぐ...流れはほとんどないものの、マングローブの川でのダウンリバーは生き物観察に大忙しなのだ。

ヒナイ川の河口を抜け船浦湾に戻った僕らは、進路を右に取り今度はニシダ川を目指す。ところがスタート時には浅くてもパドリングに支障がなかった船浦湾も、昼ごろになると潮が引き河口から海に向かって伸びる細い水路(カヌーの上に立ち上がると海底の水路だけが青く見える)以外はパドルを立てて漕ぐことが困難になっている。水路伝いにニシダ川に入るとかなり遠回りになるので、ペインターロープで繋いだ3艇のカヌーを降りた高市さんライニングしてくれる。


アコウ(別名:絞め殺しの木)

ただ高市さんに身を任せて乗っていればいいのだけど、そんな“大名カヌー”の経験がない僕や、Papaが浅瀬をライニングダウンしてるときは特別な指示がない限りカヌーから降りないと「おまえらはパッセンジャーかっ!パドラーかっ!どっちなんだっ!」とカミナリを落とされる我が家の子供たちは、いそいそとカヌーを降りてカヌーの後を歩き始める。(Mamaはどっかり座って大名カヌー...笑)200mほど進むとニシダ川の水路に着いてパドリングを再開。

サキシマスオウ
干潮のためニシダ川に向けライニング

ニシダ川を遡ってニシダサーラの滝へ

ニシダ川に入ると、ヒナイ川と似てるけどなんだか雰囲気の違うニシダ川に気付く。よく見ると両岸の植生が違う。最初からオヒルギの“千体地蔵”が岸辺を埋め尽くし、ヒナイ川ではあまり見られなかった筍根がツクシのように立ち並んでいるのも見える。
「腹減った〜!」突然子供たちが叫ぶ。周囲の自然観察に夢中ですっかり忘れていたけど、すでに時刻は正午を越えている。「じゃ、そこで昼ごはんにしましょうか?」高市さんが指示した干潟にカヌーを寄せて、カヌーに乗ったままでランチタイム。あくまで行動食なので、パドルの上でアーミーナイフを使って切り分けた紅芋ブレッドを頬張る僕ら。


ニシダ川に入ると植生が違うのに気付く

森に上陸し、生き物ウォッチング

「わ、トントンミーだ!かっわいぃぃ〜!」干潟には由布島で追い掛け回した(笑)ミナミトビハゼ(トントンミー)が数匹。何度見ても愛嬌のある姿をしている。
「一度上陸してマングローブの森の中を観察してみましょう。」高市さんに誘われて、オヒルギの森に入る。「さあ、シジミを探してみましょうか?」最初は上手く見つけられなかった僕らも次第に目が慣れてくると次々にずっしりと重い巨大シジミを見つけられる。シレナシジミだ。「こんなのでシジミ汁作ったらお椀からハミ出しちゃうな。」(笑)あまりの大きさにみんな口をあんぐり。

シレナシジミ
トントンミー
ツメナガヨコバサミ(ヤドカリ)

さらに森の奥に進むと見慣れない泥の塔がいくつも林立している。オーストラリアで見た蟻塚のようだ。僕の腰ほどもある塔の中心には火山の火口のような穴。これはオキナワアナジャコというシャコの仲間がトンネルを掘った残土が積みあがったもので、実はこの小さな営みがマングローブの陸化を促進する重要な役目を負っているのだそうだ。

森の生き物をひとつひとつ観察してたら日が暮れてしまいそうなので、適当に切り上げて、僕らはまたカヌーで上流を目指す。
5分ほど漕ぐと、ひときわ広い干潟が現れ、川はそこで渓流に変わる。カヌーはここまでだ。干潟には無数の白い点がヒョウコヒョコと蠢いている。目を凝らすと、それは全て蟹のハサミ!リュウキュウシオマネキの大集団!僕らがカヌーを干潟に乗り上げると、見事に...ものの見事にサッと穴に隠れ、姿が見えなくなる。みんな一斉にってところが某国のマスゲームみたいで笑ってしまう。
干潟にカヌーを上げて、僕らは滝に向けトレッキング。ピナイサーラの山道に比べ少し急峻で険しい道だけど、山を歩きなれている我が家のチビッコたちは余裕の表情(お腹もいっぱいだし)。30分ほど渓流沿いを歩くと、またしても滝の音。おおっ!ニシダサーラの滝だっ!


ミナミトビハゼ(トントンミー)にチュッ!


ニシダサーラの滝

 

比較的有名でよく雑誌なんかにも写真が載ってるピナイサーラに比べ、行程が険しく観光コースに組み込みにくいこの滝の姿はあまり知られていないこともあって、感動もさらに大きい。「いやぁ、いいっすねぇ〜!う〜ん、スバラシイ!」巨大な一枚岩の縁を低く幅広く流れ落ちる白い水飛沫。「ピナイサーラよりも遊べるよね!」Maakunのコメントが笑える。


やっぱりここでも泳ぐ河童

全身ずぶ濡れ

無言でオーバーパンツを脱ぎ去り“河童スタイル”(ウェットスーツ姿のことね)に変身したMaakunがまたしても淵に飛び込んで行く。泳ぎながら時折首に下げたCanonAutboy D-5を構えて写真撮影をしつつ滝の直下に向かう彼を追う僕ら。「ウァッホォ〜!」滝の流れをくぐり、滝の裏側へ。騒々しいとばかり思っていた滝の裏側が意外にも静かで驚きだ。「滝の上にも行ってみましょう。」うひひうひひと変な笑い声をたてながら立ち泳ぎしてるMaakunを呼び寄せてみんなで滝の上へ。


滝の裏側に入る

ガイドの高市さんと

滝の上でまず目を引かれたのが、拳大のものから大人がすっぽり入れるような大きなものまで大小さまざま無数にあるポットホールだ。そして初めて見る美しい花。舞い踊る蝶...目の前にある光景をフレームで切り取れば、どこを取っても“亜熱帯の楽園”ってタイトルが付きそうな感じ(...解ります?)。そんな一枚岩に腰を下ろし、みんなで持参したお菓子をつまみながら、高市さんやHさん、そして我が家のプライベートを語り合う。オヒルギの胎生種子のように西表に流れ着いた本土出身の高市さんが語る、西表話は抱腹絶倒。肉屋も魚屋も電器屋もない西表島は、前にもどこかで書いたけど“何にもないけど何でもある島”なんだなぁって今更ながらに納得なのだ。

ポットフォール
小人の提灯のような“ギイマ”

一時間以上をニシダサーラの滝で過ごした僕らは、再び元来た道を引き返す。途中、高市さんがサキシマキノボリトカゲを捕らえて見せてくれる。僕ら大人もだけど、子供達にとって“優しくて厳しくて何でも知ってる”高市さんは尊敬と信頼の対象なのだろう。すっかり打ち解けて疑問質問をどんどん尋ねてどんどん賢くなってくれている。う〜ん、イイ感じだ。それにしても、朝の9時からほとんど休まずにカヌーとトレッキングを続けているというのに、どうしてこんなに疲れを感じないのだろう。Maakunによれば『激しいスポーツの後に酸素吸うじゃん?あれと同じで、西表島のジャングルは植物がいっぱいあるから酸素が濃いんだよ、きっと。』な、ナルホド!それってホントかもしれないなぁ...。

サキシマキノボリトカゲ
ミナミコメツキカニ
キバウミニナ

カヌーに戻って再びニシダ川を下りはじめる頃には、さらに水位が下がってパドルが川底を突く場面が多くなる。河口付近では、ついにライニングダウンを余儀無くされる。
「じゃあ、ここからは干潟を歩いてスタートポイントに戻ってもらえますか?私は水路沿いにカヌーを運びますので。」僕らは高市さんと離れ、さっきまで海の底だった豊かな、いや豊かすぎて目がチカチカするほど生物に満ちあふれた広大な干潟を足元のミナミコメツキカニ(コイツは横歩きしない。前に向かって歩くのだ!)やキバウミニナ、ヘナタリなどを観察しながら歩く。相変わらずシオマネキは用心深くて正面からその姿をじっくり見ることはできないけれど、ノロマなコメツキガニはAzuにも簡単に捕まえられて彼女のお気に入りだ。いじめっ子Maakunは、カニの大群目がけて全速力で走りよって彼らを驚かせる遊びに夢中。(でもカニさんたちは、そのうちMaakunの動きを読んで直前まで逃げなくなった。“伊達に野生のカニやってないよっ!”である)


完全に干上がった船浦湾にて

「も、申し訳ないです!」遠くに見える3艇のカヌーを曵いて歩く高市さんの姿を見て心の中でそう呟きながら、僕らはスタートポイントの海中道路に戻るのだった。


スタート時の写真と比較すると別世界

ジャングルに分け入って鍾乳洞を目指す

鍾乳洞を目指しジャングルの中へ

「どうも、お疲れさまでした!」高市さんが、カヌーの後片付けを終えて僕らの元に戻ってくる。
「疲れた?疲れてなさそうだね。じゃ、鍾乳洞探検に行ってみよぉ〜!」(笑)
トラックに乗って県道を進み、何もなさそうな場所に停まる。「さ、降りて降りて!」ん?鍾乳洞はどこ?「道ないから、時々迷うんですよ。」いきなりジャングルの中に分け入る高市さん。続いてMaakun...そこでMaakunが尋ねる。「ねぇ、高市さん、ここはハブいるのかなぁ?」「うん、いるよ(キッパリ!)」「じゃぁ、オレは2番目はいやだ。」「なんで?」「だってマムシは2番目の人が噛まれるんだもん。」「マムシとハブは違うだろ?」と僕。


真っ暗な洞内

「いやいや、良く知ってるなぁ、Maakun。そうなんだよ。ハブもマムシと同じですごく臆病だから、ギリギリまでじっとしてて、こりゃダメだ!って絶体絶命になってから噛むんだよ。だからホントに2番目とか3番目の人が噛まれることが多いんですよ、お父さん。でもどうして知ってるの?」
Maakunの場合は知識じゃなくって知恵。なんたって彼は「サル注意報」や「マムシ注意報」が発令される学校に通っているんだから...(笑)
道なき道を10分ほど進むとガジュマルの樹の向こうに鍾乳洞がポッカリと口を開けているのが見えてくる。ジャングルの中にある秘密の地底王国に降りるようなドキドキ感を胸に、照明も通路もない鍾乳洞に入る。最初は真っ暗で何も見えなかったのだが、目が慣れてくると長く伸びた鍾乳石が林立し、素晴らしい規模と質を誇ることが判ってくる。「すごいですね!ところでこの鍾乳洞はの名前は何ていうんですか?」「い、いや、名前無いんです。あえて呼ぶならロビンソン鍾乳洞かな?」「へっ?」聞けば、ロビンソン小屋オーナー・ロビンソンさんとワンちゃんが発見し、通り抜けケイビングも敢行したのだそうだ。本土なら周遊道を整備し、赤や青の照明で照らして“観音様石”だの“鯨石”だの名前を付けて、「入場料はい、いくら!」の世界だけど、さすが西表!名前もない鍾乳洞が他にも無数にあるのだそうだ。

鍾乳洞を楽しんで、いよいよ今日のツアーも終わりを迎える。高市さんのトラックに乗ってロビンソン小屋に立ち寄り、ロビンソンさんに挨拶をして南ぬ風に送ってもらう...はずだったのだが...
「今夜の夕食は何時からですか?」「確か7時からですけど...」「みんな疲れてないみたいだし、どこか寄っていきましょうか?行きたいところありますか?」「いいんですか?」「いいですよ、どうぞどうぞ!」
そんなワケで、高市さんの案内でガイドブックに載ってない“秘密の”ビーチへ連れていってもらう。ここも先ほどの鍾乳洞同様、『どこがビーチなわけ?』ってな入口からジャングルを抜けていかなくてはならない。


鍾乳洞の入口から見たジャングル

降り出したスコールのような雨に打たれながら顔に当たるツル植物を手で払い進む。薄暗いジャングルを抜けた場所はベージュ色の砂と淡い青のラグーンが広がる手付かずの美しいビーチ!!
「あ〜!」言葉にならないまま茫然とする僕らを尻目に、「あったぁ!タカラ貝よっ!」Azuは早くもビーチコ−ミング(笑)

“秘密の”ビーチの後は、「まだ時間ありますね。」(by 高市さん)ということでMaakunの希望で月が浜へ向かう。月が浜は今、大規模なリゾートホテルの建設が進んでいる海岸である。まーちゃんがHPなどで問題提起をしているこのプロジェクト。まーちゃんファンのMaakunとしては絶対見ておきたかったのだそうだ。

リゾート開発...賛成反対イロイロと諸事情はあるとは思うし、これが実現しないと損をする地元の方が存在する以上口をはさむ立場にないけど、部外者でヨソモノの僕の素直な感想は、やっぱりここには大規模リゾートホテルは似合わない!と思う。もし僕が雇用創出を考えずにここに宿を建てるなら...客室2室、電気ガスは一切引かず、廃棄物は完全自家処理の宿を建てます。外観はもちろん内装、調度品に至るまで西表の伝統的な様式を踏襲します。西表のあらゆることを知っていて、しかも西表が大好きな人物をコンシェルジュに置き、夜は村のオジィ、オバァが語り部となって古い民話を語ってくれたり、民謡酒場よりも早い時間から民謡を奏でてくれる...その代わり、宿泊一泊2食¥50000以上戴きますけどね(笑)
ニッポン全国が“ミニト−キョ−”を目指し、実際にその目論みが成功したために国内旅行がつまらなくなったように、南の島が挙って万座ビーチホテルになっちゃったら、きっとそれはツマラナイと思う。みんな同じ雰囲気なら、人は近くて安い場所を選ぶ。西表は遠い!本島と同じ西表なんて誰も来ないゼ...そうなると自然は残るけど人々の営みは消えてしまう。自然と同じか、それ以上に人々の暮らしが魅力的な島・西表。“胸を張ってリゾート出来まっせ!いいでっせ!でも高いでっせ!”...そんなaki計画が一番だと思うんですが、ね、ユ●マットさん!(ちなみに僕は今後紙コップのコーヒー自販機は一切使いません!)

月が浜を見学した後は、ホントに本当に南ぬ風に戻ることにする。それにしても朝8:00から夜7:00まで、フルサポート、フルガイドの高市さんには頭が下がる。だって、カヌーを終えた時点で『はい、どうもお疲れさまでした!』ってゲストを宿に送って行ったって、み〜んな大満足なのに(笑)。
南ぬ風の玄関で高市さんと別れを告げ、すぐに夕食を戴くことにする。昨夜と同じくORION生ビールのジョッキが半分になった頃、絶妙のタイミングで現れた特別メニューのカマイ(リュウキュウイノシシ)のお刺身!柔らかい赤身とコリコリ感がタマラナイ脂身!うひひひ......あ〜満足満足、さぁ、帰ろっ!そんな気分になるほどの旨いお刺身でありました。
イノシシ年のAzuはちょっと複雑な表情を浮かべてたけどね(笑)


今夜のメインディッシュはカマイのお刺身!!

 


 

 


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