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Photo Essay Vol.7


私は四駆が嫌いだ!

私はクロカン四駆が大嫌いだ。数年前、カヌーツーリングの途中、風を避けて河原の窪地で昼寝をしていた私と息子は危うく轢かれそうになったことがある。寝返りで避けた私たちの顔に四駆のはねた砂利が降り注いだ程の至近距離。静かな河原を我が物顔で疾走し、用もないのに水しぶきをあげて川を渡ったりするクロカン四駆の姿...。
そんなこともあって、これまで四駆に批判的な私であった。しかし、そんな私が何故か四駆を買ってしまった。ランドローバー・ディスカバリー。これまでさんざん四駆批判を聞かされてきた友人たちへの言い訳の意味も込めて、こ
の新しい愛車についてレポートしたい。

元々ラテンの小型車フリークである私は、普段は10年目のフイアット・ウーノ・ターボと妻のルノー5バカラ(コレも9年目)を愛用している。信じられないことにほとんど故障知らずのこの2台で日常は必要十分なのだが、カヌーを始めてからはトランスポーターとして740GL〜850GLと2台の最廉価版ボルポを乗り繕いできた。河原へは乗り入れないものの、悪路を走る機会も多いので850AWDの噂を聞いた時は心が騒いだ「安いAWDがあったら買うぞ!」と国内発売を心待ちにしていたのだが現実は厳しかった。580万円!ダメだこりや.車高の高い別バージョンが出るとの噂・・・.610万円!
アハハハ...。

カヌー仲間のディスカバリーに乗る機会を得たのはそんな時だった。

少し時代遅れの総プラスティック張りの内装.騒々しいエンジン。そして、とどめはカーブのたぴ横転を予感させる深く急激なロール。「これってどこか壊れてません?」思わずそう訊ねたくなるドライブフィールだった。しかし、そんな印象もリアシートに座ると一変する。前席よりずっと高い座面と凸凹の全くない足元、そして広いグラスエリアとダブルサンルーフがもたらす解放感。本当はそんなに広くないのにハイデッカーの観光バスのような感覚にすっかり心を奪われてしまったのだった。そして極め付きは悪路走破性。四駆を知らない私には魔法にしか見えない足の動きを目の当たりにして、私はディーラーに走るしかなかったのである。「ディスカバリーください!いえ、買わせて下さい.」

そんなわけでオリーブグリーンのディスカバリーV8iESはわが家にやって来た。本当は299万円のTdiSが良かったのだけれど、「走るサンルーム」仕様のダブルサンルーフ&リアエアコンつきは、4リッターガソリンV8で古めかしいOHVなんていう恐ろしいエンジンを積んだESにしか設定がなかったのと、「旧レンジローバーと同じエンジン」なんて言葉が隠れクルマおたくの私の心をくすぐったのであった。

まずはスタイリング、とにかく四角い。アルミボディなので早速友人に「アルマイトの弁当箱」なる称号を頂いたが、まさにその通り。ただ、オーバーフェンダーやグリルガードといった突起部分が全く無いので、全長や全幅がそのまま室内の広さにつながっているし、(馬鹿に大きな最小回転半径を除けば)スクェアな形状ゆえ見切りは良く、狭い道や林道での取り回しは比較的楽である。また、戦闘的な「顔つき」の多い四駆の中では、独特のトボけた優しい顔は心和ませるものがある。

つぎに室内。前にも述べた通り、広大(な感じがする)。ただ、タンスが運べたボルポにに比べカーゴルームはサードシートとリアエアコンにスペースを大きくスポイルされミニマム。

オートキャンプはちょっと辛いかもしれない。そして、ドライブフィールだが、車重が結構あるので体感パワーはボルポの2・5リッター10Vと同等レベル。しかし、さすがV8。ボルポの五気筒に比べとても静かに感じる。フイアットでも感じるのだが、計器で測ると実際は結構騒々しいはずが、音の逃がし方(?)がうまいのかリアシートとの位置関係の具合なのか、車内での会話がスムーズなのは特筆に値すると思う。ただ問題は足回り。慣れないうちは盛大なロールとステアリングのふらつきに驚き、とってもキンチョーする。ただ、四駆ヴァージン&ドライブテクニック皆無の私ですら三日で慣れたから、すべては時間が解決する(...と思う)。

最後に。デイスカバリーを数カ月ドライブして感じるのは、とても愚鈍だけれど、まじめで愛すべきクルマであるということだ。

フィアットやルノーのように10年乗りたいなと感じる魅力に溢れている.国内で使用する限り道具としての利便性や信頼性は国産四駆に一歩も二歩も遅れを取っているけれど、モノとしての価値は数段優っていると思う。

先日、五歳の息子がディスカバリーに“ランディ”と云うニックネームをつけた。彼が生き物以外に名前をつけるのは、これが初めてである。

[driver] 1998 akihikom

 

 

 

 


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