後に彼女は、「その頃さんふらわあはあなたそのものだった」と言った。この彼女が、いい想い出を残して別れた女性だったらもっと感傷的になっただろうけど、残念ながらというか幸いにしてというか今の妻である。「なんだか寂しいね。」僕らはそう言って、あの頃のアルバムを開いてあれこれ語り合った。
僕のファイロファックスにはいつもさんふらわあの絵葉書が綴じ込んであったし、人生に迷ったり、挫折感を感じたりすると僕は決まってクルマを飛ばし大阪南港へさんふらわあに会いに行った。
12000tフェリーの乗組員から0.5tのカヌーという小さなフネの船長になった僕と妻は、今やお互いロマンティックな気持ちになることはほとんどないけど、「さんふらわあ」が姿を消すというニュースはそんな僕らをすこしだけ恋人時代の気分にさせた。
さよなら、さんふらわあ。アリガトウ。
1998 akihikom
|